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味覚を決める要素とは

人間は食品をさまざまな基準で「おいしい」と判断しますが、中でも重要な判断基準が「味(風味)」です。また、「食感(テクスチャー)」や「温度」も大きな判断基準となります。

味(風味)

食べ物を食べたときのおいしさは、多数の感覚が混じり合って構成されています。味には、味覚神経で感じる「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」「うま味」の5つの基本味があります。味覚神経で感じる味はこの5つの基本味だけで、「辛味」などは痛いと感じる触覚といわれています[図2-22]。
舌や口の中で感じる感覚は、これらの味に香りが密接に結びついて形成されますが、「95%が嗅覚で、5%が味覚。情報の大半は鼻腔から脳に入る」といわれています。風邪を引いて鼻が詰まった状態で食べると、嗅覚を奪われてしまい味がまったくしないという経験からも理解できます。
図2-22 | 味の濃度と快適度
味の濃度と快適度
出典:石間紀男「食品に関する評価の基礎要因」『食のことば』ドメス出版(1983年)

食感(テクスチャー)

食べ物をおいしいと感じるのは、味と香りに加え、コクや食感、温度、色、形状、音などさまざまな要素があります。歯触りや舌触り、噛みごたえなど食べ物を口に入れたときの接触覚である食感は、実は食べ物のおいしさのかなりの部分を印象づけています。

温度

人間の舌は20~40℃の温度が一番敏感で、5つの基本味は温度によって感じ方が変わります。甘味は人間の体温と同程度の35℃くらいが一番甘く感じられ、この温度より高くても低くても感じ方が弱くなります。塩味と苦味は温度が高いとあまり強く感じませんが、低くなると強く感じます。
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牧場で飲む牛乳がおいしく感じられるのは?
牧場で飲む牛乳は、乳牛の品種や製法など普段の生活で飲む牛乳とは異なる点があり、味わいもさまざまです。日本の乳牛は99%以上がホルスタイン種ですが、観光牧場などではジャージー種やブラウンスイス種などを飼育しているところがあります。これらの牛乳には乳脂肪分や無脂乳固形分が多く含まれ、濃厚な味わいになります。
また、市販されている牛乳のほとんどは工場で均質化(ホモジナイズ)されていますが、牧場で飲む牛乳は均質機を通していません。こうした牛乳をノンホモ牛乳といい、大きな脂肪球が浮いて、とろりとしたクリーム層を上部につくります。最初にこのクリーム層が口に入り濃厚に感じますが、その下の層は乳脂肪分が低くなっています。
牛乳は乳等省令により殺菌方法や細菌をはじめとするさまざまな検査が義務づけられているため、牧場でも搾ってすぐに飲むことはできません。

牛乳特有のおいしさの秘密

私たちは「おいしさ」を、味や舌触りだけでなく、見た目や音、香りなども含めた五感全体で感じています。牛乳のおいしさも例外ではなく、牛乳をグラスに注ぐ音、光沢感のある乳白色、滑らかな質感、アセトンなど複数の香気成分がかもし出す芳香などさまざまな要素が関係しています。
牛乳独特のまろやかな口あたりは、たんぱく質と乳脂肪が微細なコロイド粒子となって分散することにより生まれます。牛乳成分の味(風味)の中身を見てみると、含有量の多い乳糖、乳脂肪、たんぱく質は甘味やコクを、他の微量成分はかすかな塩味や酸味、苦味をつくり上げています[表2-9]。
牛乳の味を左右するのは、原料となる生乳の品質や成分です。特に乳脂肪は多いほどコクが増し、乳脂肪からの遊離脂肪酸やカルボニル化合物によって芳香もより強く感じます。
また、加熱殺菌の方法によっても味は大きく変わります。加熱殺菌によって生じる風味成分を加熱臭といい、加熱時間が長いほど、また温度が高いほど強くなる傾向があります。加熱臭はある程度までは好ましい香りや濃厚感を生じますが、強すぎると新鮮味を損ないます。ただ、加熱臭は時間が経つにつれて弱くなります。また、加熱臭は個人の好みによって味の評価が異なるものです。
表2-9 | 牛乳の風味成分とその内容
区分 主な風味成分 含量 風味の内容
香気 アセトン(2-プロパノン) 1(mg/L) 新鮮な牛乳臭またはかすかな乳牛臭
2-ブタノン(エチルメチルケトン) 0.08
2-ヘキサノン 0.01~0.03
2-ペンタノン 0.01~0.03
硫化ジメチル <0.02
アセトアルデヒド 0.01~0.02
エチルアルコール <0.01
酢酸エチル <0.01
デルタラクトン酸 <0.01
短鎖脂肪酸 10~30 風味に一部関係する
呈味 乳糖 42~48(g/L) 温和な風味
塩化物 1 かすかな塩味
クエン酸 2 弱い酸味
リン酸(PO43-として) 1.6
マグネシウム 0.1 わずかな苦味
カルシウム 1.1
口あたり・コク 乳脂肪(トリアシルグリセロール) 30~40(g/L) 温和な口あたりと甘味
リン脂質 0.3 乳化作用によるまろやかな口あたり
乳たんぱく質 28~32 濃度と分散状態がコクに関係

出典:中江利孝「乳質改善資料」(1956年)
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牛乳の新たな活用方法である「乳和食」
日本人の健康にとって深刻な問題である高血圧の原因として食塩の過剰摂取があり、高血圧予防や高血圧症の治療の点から減塩食が奨励されています。しかし、外食や弁当・惣菜などの調理済み食品への依存がますます強まっている状況の中で、食塩の利用と摂取はなかなか減少していません。
そこで、味噌や醤油などの伝統的調味料にコク味やうま味を有している牛乳(成分無調整牛乳)を組み合わせることで、食材本来の風味や特徴を損なわずに食塩や出汁を減らし、おいしく和食を食べてもらう調理法として、料理家、管理栄養士の小山浩子先生により提案されたのが「乳和食」です。「乳和食」は、減塩だけでなく、日本人のカルシウム不足の改善や、特に高齢者で不足しがちな動物性たんぱく質を補うことができるなどのメリットもあります。
和食
乳和食
公式Webサイト乳和食のレシピ

公式Webサイトでは乳和食のレシピを多数掲載しています。

出典:公益財団法人日本栄養士会監修『おいしく減塩 乳和食のすすめ』一般社団法人Jミルク