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さまざまなナチュラルチーズ

「国境を越えればチーズが変わる」といわれるように、ナチュラルチーズは種類が多く、日本国内でも80カ所以上で国産ナチュラルチーズがつくられています。ナチュラルチーズの分類方法はいろいろありますが、フランスの熟成方法により7種類に分類されています[表3-1]。

カビを利用したチーズ

カビには有害なものだけでなく、役に立つものもあります。カマンベール、ブルーチーズはカビを利用した食品の代表です。
これらのチーズに利用されるカビは、ペニシリウム属のロックフォルティなどが純粋培養したものです。食べても害がないばかりでなく、チーズの中のたんぱく質や脂肪をよく分解し、独特の風味や組織をつくり出すのになくてはならないものです。

白カビタイプ

チーズの表面に白カビを植えつけて熟成させます。カマンベール、ブリー、馬蹄形のバラカなどのチーズがその代表です[図3-2]。
いずれもたんぱく質を分解する力の強い白カビが、表面から中心に向かって熟成させていき、表面は白いカビで覆われ、内部は黄色がかったクリーム状のチーズ組織になります。
カビの種類は、ペニシリウム属のカマンベルティやカゼイコラムなどが使われています。

青カビタイプ

青カビは内部に青緑色の大理石状の縞模様をつくり、ピリッとした鋭い刺激性のある風味が特徴です。他のチーズと違い、中心から外側へ熟成が進みます。ペニシリウム・ロックフォルティを利用したフランスのロックフォールや、イタリアのゴルゴンゾーラ、イギリスのスティルトンは三大ブルーチーズとして有名です[図3-3]。
これらの有用なカビとは別に、家庭の冷蔵庫で保存中に表面に生えてしまう黒やオレンジ色のカビがあります。
このカビはチーズ本来の品質や風味を低下させます。目に見えないカビの胞子が中まで入っていることもあるので、これらの新たなカビの生えたチーズは食べないでください。

フレッシュチーズ

ナチュラルチーズの一種で、熟成していないものを一般にフレッシュチーズと呼びます。
チーズをつくる工程は、まず乳を乳酸菌で発酵させレンネット(凝乳酵素)で固めます。そして固まった凝乳をカットしてカードをつくります。
カードを徐々に加温しながらホエイ(乳清)を除きます。その後、他のチーズは熟成させますが、フレッシュチーズは熟成を行いません。水分が多くやわらかく、味や匂いにクセがないので、そのまま食べることが多いのが特徴です。代表的なものを次に紹介します。

カッテージチーズ

牛乳(脱脂乳)を乳酸菌で発酵させて固めます。粒状タイプと裏ごしタイプがあります。脂肪が少ないのであっさりしています[図3-4]。

クリームチーズ

生乳を乳酸菌発酵とレンネット凝固させ、クリームを加えてつくります。口あたりは滑らかで、ほのかな酸味があります。比較的脂肪が多いチーズです。
パンに塗ったり、チーズケーキに使われます[図3-5]。

モッツァレラ

本来は水牛の乳からつくりますが、現在は牛乳が主流になっています。見た目は豆腐によく似ていて、モチッとした食感があります。酸化を防ぐため水に漬かった状態で売られているものが多く、オードブルやサラダに、加熱するとよく伸びるのでイタリアンピザなどに使われています[図3-6]。

マスカルポーネ

クリームを加熱しながら酸で凝固させてつくります。クリーミーなおいしさで、菓子類によく使われます。ティラミスの原料に使われるチーズとして知られています[図3-7]。

クワルク

ヨーグルトに似たクセのないおだやかな味わいが特徴です。ドイツではポピュラーなチーズで、脂肪が少なく、そのまま食べたり、デザート、ケーキ、ドレッシングなど、さまざまな料理にも使われています[図3-8]。

フロマージュ・ブラン

フランスではポピュラーなチーズで、「真っ白なチーズ」という意味です。牛乳に凝乳酵素を加えて固め、水分を切っただけのチーズです。パンに塗ったり、甘味を加えてデザートとして使われます。形態や食感はヨーグルトによく似ています[図3-9]。

フェタ

本来は羊の乳でつくりますが、今は牛乳が多くなっています。保存性を保つために塩水や香辛料入りのオイルに漬けてあり、塩味が強いのが特徴です。ギリシャの代表的なチーズで2000年以上の歴史があり、サラダなどに使います[図3-10]。

バノン

本来は山羊乳でつくりますが、現在は牛乳が主流です。栗の葉で包んであり、独特の風味があります[図3-11]。

ホエイたんぱく質チーズ

乳のホエイ成分から抽出されたたんぱく質を含むチーズです。

リコッタ

チーズをつくるときに出るホエイ(乳清)を、再度加熱凝固させてつくります。見た目も感触も豆腐によく似ていて、乳の持つほのかな甘味が感じられます(日本では2005年10月から法令上の種類別名称が「乳または乳製品を主要原料とする食品」に変更されました)[図3-12]。
表3-1 | チーズの種類と特徴
  タイプ 熟成方法 特徴 代表例
ナチュラルチーズ フレッシュ 非熟成 乳に酸や酵素を加えて凝固させ水分を抜いたもので、熟成させないチーズ。ソフトで軽い酸味があり、さわやかな風味 カッテージ、モッツァレラ、クワルク、クリーム
白カビ カビ熟成 白カビを表面に繁殖させ熟成。たんぱく質を分解する力の強い白カビが、表面から中心部に向かって熟成させる カマンベール、ブリー、バラカ、ブリヤ・サヴァラン
ウォッシュ 表面洗浄細菌熟成 表皮を塩水や土地の酒(ワインやビール)で洗いながら、チーズの表皮についている特殊な菌で熟成。匂いが強烈なものが多い ポン・レヴェック、マンスティール、リヴァロ、エポワス[図3-13]
シェーブル(山羊乳) カビ熟成細菌熟成 山羊乳でつくるチーズの総称。山羊乳特有の風味がある。フレッシュからハードタイプまであり、熟成が進むと香りも味も濃くなる ピラミッド、バノン、ヴァランセ、サント・モール
青カビ カビ熟成 青カビをカードに混ぜ、中から熟成させる。独特の青カビの風味がある。よく熟成したものは強烈な風味があり、味も濃厚 ロックフォール、ゴルゴンゾーラ、スティルトン
セミハード 細菌熟成 凝乳切断後のカードを45℃以内で穏やかに加熱してカードをつくり、型詰後の圧搾によって水分値をおおむね38~45%にしたチーズ。比較的硬く、チーズの中でも保存がきく。熟成期間や大きさ、脂肪の量などもさまざまで最も種類が多い。味はマイルド ゴーダ[図3-14]、マリボー、サムソー・コンテ、ラクレット、カンタル
ハード 細菌熟成 凝乳切断後のカードを45℃以上に加熱して水分の低いカードをつくり、型詰・圧搾することにより水分値をおおむね38%以下にしたチーズ。熟成期間も長く長期保存ができる。深い味わいとコクがあり、そのまま食べるほか、料理にも幅広く利用される。1年から2年以上じっくり熟成させてつくるチーズもある。長く熟成させたものほど風味が豊かになる エメンタール[図3-15]、グリュイエール、エダム、チェダー、パルミジャーノ・レッジャーノ[図3-16]、ロマノ
プロセスチーズ 1種類または数種類のナチュラルチーズを粉砕、溶融塩ともに加熱溶解して乳化し、成型包装したもの。加熱してあるため熟成が進まず、風味が一定している。スライス、ポーション(6P、ベビー)、キャンディータイプ、ブロックタイプなどさまざまな形状があり、多彩な用途に対応している

『チーズを科学する』NPO法人チーズプロフェッショナル協会(2016)および一般社団法人日本乳業協会ホームページより作成
図3-2 | 白カビタイプ(カマンベール)
白カビタイプ(カマンベール)
出典:NPO法人チーズプロフェッショナル協会
図3-3 | 青カビタイプ(ロックフォール)
青カビタイプ(ロックフォール)
出典:NPO法人チーズプロフェッショナル協会
図3-4 | カッテージチーズ
カッテージチーズ
出典:チーズ普及協議会
図3-5 | クリームチーズ
クリームチーズ
出典:チーズ普及協議会
図3-6 | モッツァレラ
モッツァレラ
出典:NPO法人チーズプロフェッショナル協会
図3-7 | マスカルポーネ
マスカルポーネ
出典:NPO法人チーズプロフェッショナル協会
図3-8 | クワルク
クワルク
出典:NPO法人チーズプロフェッショナル協会
図3-9 | フロマージュ・ブラン
フロマージュ・ブラン
出典:NPO法人チーズプロフェッショナル協会
図3-10 | フェタ
フェタ
出典:NPO法人チーズプロフェッショナル協会
図3-11 | バノン
バノン
出典:NPO法人チーズプロフェッショナル協会
図3-12 | リコッタ
リコッタ
出典:NPO法人チーズプロフェッショナル協会
図3-13 | エポワス
エポワス
出典:NPO法人チーズプロフェッショナル協会
図3-14 | ゴーダ
ゴーダ
出典:NPO法人チーズプロフェッショナル協会
図3-15 | エメンタール
エメンタール
出典:NPO法人チーズプロフェッショナル協会
図3-16 | パルミジャーノ・レッジャーノ
パルミジャーノ・レッジャーノ
出典:NPO法人チーズプロフェッショナル協会
column19
モッツァレラチーズの製造方法
ナチュラルチーズの1種類であるモッツァレラチーズの製造方法を見てみましょう。
原料乳を低温条件で加熱殺菌し、チーズバットに入れる
牛乳が冷えたら、発酵を開始させるためのスターターとしての乳酸菌を加える
発酵した牛乳を固めるためのレンネット(凝乳酵素)を加える。この固まった牛乳全体を「凝乳」と呼ぶ
凝乳をピアノ線のカードナイフで切断する。小さく細切りされた固まりを「カード」という
全体を静かに攪拌しながら徐々に温度を上げる。1時間ほど加熱すると、カードからホエイが出て組織がしまり、弾力のあるカード粒となる
カード粒を固めた後、ホエイをよく抜く
カードを反転し、さらにホエイを抜く
カードを高温の熱湯で練る
練り上がった状態のカード全体
カードを型に詰め、圧搾機にかけてさらにホエイを搾り出す
風味を良くし、雑菌の繁殖を抑えて正常に発酵させるため、食塩水に漬ける
乾燥させ、モッツァレラチーズの完成

出典:丹那牛乳