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管理栄養士 吉野綾美

ミルクの国の食だより

第53回 フランスのバター事情2017 その3

コラム、「ミルクの国の食だより」の第53回をお送りします。
前回に続き、2017年秋のフランスのバター不足についての話題です。スーパーの棚からバターが消えた理由は?

世界中で消費量が増えたことにより国際価格が高騰したバター。
フランスが価格上昇により他国よりも影響をうけるのは、バターに関して輸入国でもあり、世界最大の消費国だから、ということはわかりました。

2017年夏、フランスのバターの卸売価格は年初に比べて2倍近くになりました。
ペストリーやベーカリーの製造業者にとっては、フランス国内外での需要が急激に増えたことにより、バター確保の必要性がますます高まっています。

そのしわよせが、スーパーで家庭用バターが不足する、という自体を引き起こしているのでしょうか。

スーパーのバターの価格は上がらず。その理由は?

よくみると、バターがあるところとないところ、その差はスーパーによりけり。
そして、パン屋のクロワッサンが10サンチーム値上がった今でも、スーパーのバターは値上がっていません。 消費者の心理としては、多少の値上げで買えるのなら、バターが手に入らなくなるよりずっとよいのでは?と思うのですが。

スーパーで販売されるバターの価格は年1回、毎年2月に納入業者と流通業者(大手スーパー)の間で取り決められます。価格は年間固定されるので、国際価格 が上がって卸値が高騰しても、販売価格は同じままなのです。

そのため、バター製造業者は国内のスーパーよりも、より高い価格を提示する海外の購入者へ販売 を優先するようになり、フランス国内のスーパーの棚からバターが消える、という事態が起こったのです。
国内でもパン屋やレストランは高い価格でも購入するので、スーパーだけバターがない、という訳です。

これほど国内外で需要が高まっているのならいっそのこと、クリームやチーズに使う分の生乳をバターにまわして生産量を増やせばよいのでは?と単純に思ったりします。


バターを製造するには多くの生乳が必要

しかし、1kgのバターを作るには22リットルの生乳が必要なのに対し、エメンタールチーズ1kgなら生乳12リットル、乳脂肪30%クリーム1kgなら 生乳7リットルで作れます。
バターより、他の乳製品の方がはるかに生産効率が良いのです。さらに付加価値のあるチーズなら、より高く売ることができます。

そのため通常でも、バター向けの生乳は全生乳生産量の20%ほど。
生乳生産量が減少した2016年春から2017年夏にかけては、なおのこと、乳製品メーカーはバターを犠牲にしてチーズの生産に転じるようになりました。

とはいえ、バターがない食生活は考えられないフランス。
11月頃から、契約の再交渉に応じたスーパーでは、通常入荷しているブランドとは違ったりしますが、バターが一部、入荷するようになりました。

そして1年で最も国内需要が増えるクリスマスを境に、スーパーの棚にはほぼ、通常と変わらない量のバターが戻ってきました。

かくしてひとまず終焉を迎えた2017年秋のフランスバターショック。
世界の酪農情勢を見渡すと、今後も様々な変化がありそうです。

参考資料:Note sur le marché du beurre en 2017(フランス農業・食料・漁業・農村省)
 
「原材料の不足により、当社の納入業者は当面はバターの注文をすべて提供することができません」と書かれた張り紙。代用品のファットスプレッド、マーガリンが並び、有塩バターは少しあるが、無塩バターは見当たらない (2017年11月)
<統計資料>
■バターの価格について
Note de conjoncture (Lait de vache)
(PDF)

■生乳生産量の年次統計:「l'economie laitiere en chiffre 2017」118ページ。
https://fr.calameo.com/read/002230051fa492499bf0f

2018年2月26日

管理栄養士 吉野綾美
1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。

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