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ミルク解体新書

第6回 脂肪酸学

「脂質=太るもの」という認識でしかとらえていない人も多いようですが、脂質は炭水化物、たんぱく質と並んで生体にとって不可欠な成分。
脂肪酸は、その栄養学的な性質を決める役割を担っています。
では、牛乳・乳製品に含まれる脂肪酸にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
乳脂肪の特徴にもご注目ください。

脂肪の大部分は脂肪酸

脂質は、おもに炭素、酸素、水素からなる、水に溶けない有機化合物で、その脂質の中でも「単純脂質」と呼ばれるものが「脂肪」です。
この脂肪の性状や栄養学的な性質を決めているのが、その成分の約90%を占める脂肪酸です。



脂肪酸とは、カルボン酸という酸の一種で、酢の成分である酢酸に、複数の炭素が鎖状につながったかたちをしています(図1参照)。

脂肪酸にはいろいろな構造のものがあります。

■「脂肪酸」と「脂肪」

脂肪酸の種類によって決まる脂肪の性質

炭素の鎖の長さと炭素同士の結合方法によって、いろいろな種類の脂肪酸に分類されます。

天然に存在する油脂は、単独の脂肪酸で構成されるのではなく、いくつかの脂肪酸が一定の割合で混ざり合って構成されています。そして油脂の種類によって脂肪酸組成は大きく異なり、性質も大きく変わるのです (表1参照) 。

短鎖・中鎖脂肪酸が多い牛乳・乳製品

脂肪酸を炭素の鎖の長さで分類した場合は、短鎖、中鎖、長鎖脂肪酸に分類されます。
一般的な油脂の多くは長鎖脂肪酸を多く含んでいますが、バターや牛乳には短鎖や中鎖の脂肪酸も含まれています。

さらに脂肪酸は、炭素同士の結合の違いによって、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に大別することができます。
バターに多く含まれるパルミチン酸などの飽和脂肪酸は、炭素の結合の手が全部水素で満たされている(これを飽和という)もので、化学的には安定した構造で酸化されにくいのが特徴です。

不飽和脂肪酸の構造による役割の違い

分子内に二重結合をもっている脂肪酸を、不飽和脂肪酸といいます。

不飽和脂肪酸の分子中に、二重結合を1つだけ持つものを一価不飽和脂肪酸、2つ以上持つものを多価不飽和脂肪酸と呼び、鎖のどの位置に二重結合があるかによって、n-3系、n-6系などに分かれます。

二重結合が多いほど、融点が低くなります。

n-3系の「α-リノレン酸」、「EPA(エイコサペンタエン酸)」、「DHA(ドコサヘキサエン酸)」、n-6系の「リノール酸」、「アラキドン酸」は、体内で合成されず(もしくは、合成されにくく)、食物から摂取しなければなりません。
これらの脂肪酸を、必須脂肪酸と呼んでいます。

必須脂肪酸が不足すると、こどもの成長障害や皮膚炎が起こるといわれています。

系列によって働きが違う、多価不飽和脂肪酸

多価不飽和脂肪酸は、系列・種類によって、体内での働きが異なります。

乳製品にも含まれる必須脂肪酸「リノール酸」は、n-6系の代表的な多価不飽和脂肪酸で、コレステロールや血圧を下げるといわれ、生活習慣病予防のため積極的に摂取されてきました。

これに対して、おもにシソやエゴマなどに含まれ、乳製品にも含まれる必須脂肪酸「α-リノレン酸」は、n-3系の多価不飽和脂肪酸で、心疾患やアレルギーを予防する効果があるといわれています。
α-リノレン酸を含む油は、非常に酸化されやすいのが特徴です。

同じくn-3系の不飽和脂肪酸のEPAやDHAは、冷たい海の中を泳ぐ魚に多く含まれています。
DHAは脳の発達に効果があるといわれ、これを添加している育児用粉ミルクもあります。

脂肪酸との上手なつき合い方

動物性の脂肪は悪者と思われがちですが、大切なのは脂肪酸のバランスです。

食品には、各種の脂肪酸が異なった割合で含まれていますから、食品成分表に記載されている脂肪酸組成を参考に、カラダにとってより有用な働きをしてくれる脂肪酸を多く含む、良質の脂肪を中心に、バランスよく摂取するように心がけましょう。

ちなみに、現在、望ましい脂肪酸摂取の比率は、飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸=3:4:3、そして、n-6系不飽和脂肪酸:n-3系不飽和脂肪酸=4:1といわれています(図2参照)。

なお脂肪エネルギー比率(摂取総エネルギーに占める脂質由来のエネルギーの百分率)は、25パーセント未満に抑えるのが理想的です。
 

燃焼されやすい脂肪酸を含む牛乳・乳製品

 牛乳の脂肪は、牛乳に溶けているのではなく、乳脂肪膜という薄い膜に包まれた小さな粒(脂肪球)として牛乳中に分散しています。

バターは、牛乳中の脂肪を集めて、かたまりにしたもので、乳脂肪の中に、脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)、カロテンなどが含まれています。
脂溶性ビタミンは、脂肪といっしょに摂ると、吸収率がぐんとアップするといわれており、牛乳中に含まれる脂溶性のビタミンAは、乳脂肪に溶けるかたちで存在しているため、とても効率よくカラダに吸収されます。

牛乳は、乳脂肪を含むため、太るという誤解を受けやすいのですが、牛乳に含まれる乳脂肪は4%未満と決して多い量ではありません。

乳脂肪に多く含まれるのは飽和脂肪酸です。けれど含まれる脂肪酸の種類は幅広く、不飽和脂肪酸までも含みますから、他の食品に比べてまんべんなく摂ることができます(みんなのMILK DATA参照)。

また、含まれる短鎖・中鎖脂肪酸は、他の脂肪酸に比べてカラダの中で燃焼されやすいので、カラダに脂肪がつきにくいともいわれています。

カラダにとって欠かせない脂質。その脂肪酸の組成と特徴に注目して、バランスよく脂質を摂るように心がけましょう。

知っトク!コーナー

‘油’と‘脂’って、どう違うの?

おもに植物性の油脂など常温で液体のものを「油」、動物性の油脂など常温で固体のものを「脂」といいます。
「油」「脂」が、常温で液体になったり、固体になったりするのは、脂肪酸の性質の違いによるものです。

「油」のほとんどは、多くの不飽和脂肪酸を含んでいます。
バターなど、常温で固体、加熱すると融けて液体になる「脂」には、飽和脂肪酸が多く含まれています。
油脂の融点の違いは、バターやチョコレートの製造など、多くの食品に利用されています。

ちなみに、植物性でも飽和脂肪酸の多いヤシ油やパーム油は常温でも固体です。


みんなのMILK DATA

一番短い脂肪酸の酪酸は牛乳に特有の脂肪酸です

酪酸はその名の通り、酪農品に関係する脂肪酸。牛乳やチーズ、バターなどに含まれ、粘膜の傷を修復し、小腸の活動を助けるといわれています。

この短鎖脂肪酸である酪酸をはじめ、脂肪酸の種類によって、それぞれがカラダに有益な働きを持っています。

ただ、その働きを享受するためには、かたよってしまってはダメ。バランスよく摂ることが大切です。

牛乳・乳製品は脂肪酸の摂取バランスをサポート

食品に含まれる脂肪酸を見比べてみると、それぞれに特徴があるのがわかります。

植物性食品にはオレイン酸やリノール酸が、肉には長鎖脂肪酸が多く含まれ、魚類であるサンマにはEPA、DHAが含まれています。

乳製品に含まれる脂肪酸を見てみると、飽和脂肪酸を中心に、その種類が多いことに驚きます。
素材の組み合わせを考えながら摂る必要のある脂肪酸ですが、牛乳・乳製品はこのバランス調整にも一役買ってくれそうですね。


2014年1月17日

j-milk magazine ほわいと2006秋「ミルク解体新書 第6回 脂肪酸学」より

下のリンク先より「第1回 カルシウム学」「第2回 たんぱく質学」「第3回 ビタミン学」「第4回 コレステロール学」「第5回 食物アレルギー学」「第7回 チーズ学」「第8回 ヨーグルト学」をご覧頂けます。

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