• 牛乳ができるまで
  • 乳製品の種類
  • おいしい活用法
  • 学校給食
  • 乳製品の歴史
  • 牛乳の栄養
  • ナレッジ
  • 気になる情報

Dairy Stockman-ship 酪農・牛の扱い心得と技

j-milkリポートvol-26より

ベテランの酪農家であれば牛との接し方・扱い方の勘所を自然と身につけておられると思いますが、これから新たに酪農を始める方や牛と接する仕事にたずさわる方にとって牛の習性を知り、いかに早く牛の扱いに慣れて牛が持っている生産能力をフルに発揮できるかが酪農にとって大切なポイントとなります。
特に、繋ぎ(個体毎)飼いからフリーストール/フリーバーンといった多頭群飼いへの移行。また搾乳場所も繋ぎ牛舎内からミルキング・パーラーへ、さらに最近は搾乳ロボット登場などで酪農の形態や手法が変わり、多様化とともに自動化も進む中、牛と直接触れ合う必要性や機会も以前に比べ減ってきており、牛との距離も変わってきているように考えます。
そのような中、少なくとも牛群替えや種付け、削蹄、疾病・怪我の治療等といった際に、いかに牛にストレス等の負担をかけずに効率良く牛を誘導・移動させ対処するかが大切になってきているのではないでしょう。
また家族経営酪農に加え企業型酪農経営において雇用従業員に牧場運営を任せるケースが増えている中で、上手な牛の扱い方を習得してもらうことは牧場経営そのものに大きく影響してくるものと考えます。
そのような中で今回は海外における例といたしまして米国 “FARM Program”の中で「牛が本来持っている性質・特徴を動物生態学・行動習性をもとに作成された牛の扱い方マニュアル」をご紹介いたします。
動画は英語/スペイン語対応のみで恐縮ですが、海外の方を雇用されておられる場合にはわかりやすくて便利かも知れません。ご参照ください。
 

 動画内の音声説明内容 聞き取り以下の通りです。

<最初に>

牛を扱う者が備えておくべき才能・性格とは
- 動物(牛)と一緒に仕事することが好きで、牛から教わるという姿勢で接すること。
- 忍耐強く冷静であること。
- 牛の習性本能による行動をしっかり観察できる人間であること。

牛にとって恐怖は強い「闘争または逃避反応」への引き金となり得る。牛は良いこと悪いこと両方よく覚えていて「自分を大事にしてくれる人」をすぐ記憶する。
 

<牛の生まれ持った本能・行動習性とは>

牛はその祖先が肉食動物の獲物であったことから、天敵から身を守るために群れ集まる習性(群本能)があることを理解する。
牛群内で優性順位が形成され、リーダーの後を順に列を成して移動する習性がある。
パドックやミルキング・パーラーへの移動、トラックに載せるときにはこのことを応用するとよい。
ウシは他の牛が視界内にある(見える)ことで安心し、おとなしく前を行く牛の後をついて移動する。
群で行動することを好み単独での行動を嫌がる。
無理やり個体をある方向に誘導しようとするとすぐ体を反転させ、元のところへ戻ろうとする本能がある。
大きな群から数頭を分けて新たなパドックへ移動する際には一端は群全体を移動させてから、他の牛が見ている中で分ける。群に戻す時も負担をかけないようにする。
牛は動作が人間よりゆっくりで、急かされることを嫌う。
その分牛は驚かせたり怖がらせたりすると、すぐ飛び跳ね、走り回る。
 

<牛は周りの状況をどのように把握知覚するか>

牛はあらゆる五感を使って周りの状況を把握しますがその方法は人間とは異なる。
[視覚]
牛の目は顔の横についているので視界は広く、真後ろと鼻先以外はすべて見える。
人間より広い視野を持ち、四方八方から来る天敵を察知できるようになっている。
視野が広いこともあり視覚情報を認識判断するのに人間よりも時間を要する。
牛は地面に向けての視覚(鮮明度・コントラスト・焦点)は人間より低く、影が本当に影なのか地面に空いた穴なのか判別できず、下り坂を降りたり、牛舎に入ったり影を通りすぎる際に躊躇する。
焦点を合わせるのに時間を要することや可視限界があることから牛は継続して歩かなかったり怖がったりする。
[聴覚]
牛は聴覚の高低領域が人間よりも広く、細かい音に対しても繊細に聞こえ敏感で我々の気に止まらない音も聞こえている。
したがって大きな声や音だけでなく、例えば口笛の音や鎖が擦れる音などによっても驚いて、怖がる。
耳はアンテナのようなもので、牛がこちらに向けて耳を立てているときはこちらを認知していて、注意深く聞き入っている証拠。
牛にこちらの存在を示すには、短くて、わかりやすい言葉を語りかけるだけで牛の注意を惹くのに十分であり、怒鳴ったり柵やその他の物をたたいて音を出したり、勢いよく口笛を吹くことは不必要なばかりか、かえって逆効果となる。
[臭覚と味覚]
牛はとても敏感な臭覚を持ち合わせていて、嗅いだ匂いを情報として状況を思い描き、香りや味を感じることができる。かなり長い距離遠くから検知できる。
牛は恐怖やストレスの下でフェロモンや香りを出し、周囲の他の個体に何か怖い不安な出来事や状況が発生していることを伝え警告している。
その結果、他の牛も牧場設備に入ることに神経質に抵抗することも。
牛にとって匂いはキーとなるコミュニケーションを図る方法。
[牛に触れる]
* 五感の一つ触覚は、牛同士、牛と人間の間での物理的なコミュニケーションを図るためのものであり、優しく牛に触れることで落ち着かせる、牛が慣れて扱いやすくなるというポジティブ目的で行う。
 

<牛の五感を活用する>

牛に近づく際には牛を驚かせないよう十分注意が必要であり、ゆっくりした動作で大きな音は立てないようにする。
牛に自分が近づいていることを知らせることが大切。特に牛から自分が見えない場合には穏やかな声をかけながら近づく。牛が耳をこちらに向ければ牛が認識しているしるし。
牛の乳房の状態を確認するなどすぐそばへ接近しなければならない場合、安全な方法は牛体のすぐ横から体重を預け寄りかかることである。それに対して牛はもたれかかれられた側の足に体重を移動してくるので、その脚で蹴ることができない。(牛からの脚蹴り防止)
 

<正しい動物の取り扱い実際>

最も効果的に牛の取り扱いを行うには、穏やかで制御がきいた落ち着いた環境のもとで行われることが求められ、牛を扱う者はフライ・ゾーン(逃避地帯)とポイント・オフ・バランス(平衡点)の理論に基づき逃避行動を起こさせたりストレスを与えたりすることなく安全に目的の場所まで牛を移動することが求められます。
新たに雇用されたものは実際に行動できるようになるまで、熟練者(経験者)より訓練を受けなければならない。
動物の世話にあたる者はすべて乳牛取り扱い規定と倫理規定同意書に署名が必要であり、酪農における適切な思いやりある世話と扱いをすること約束する。
 

<フライト・ゾーンとは?>

フライト・ゾーン(FZ)は動物にとっての安全地帯を指し、動物の周りの仮想な空間・区域を指します。
FZの広さは人間が動物の近くにいても平気かどうかによって大きく異なり、もし牛が人間に慣れていなければFZ広く大きくなり、人間の扱いに慣れている場合は狭く小さくなり、牛が人間に良い印象を継続して受ければさらに慣れてFZは小さくなる。
個体毎にFZあることに加え、牛群にもFZ有り、FZの大きさは個体に比べ広め。
興奮した個体は大きなFZを持ち、落ち着いたものはFZ小さい。
 

<フライト・ゾーン(FZ)を活用する>

牛を扱う者がFZに入ろうとすると牛は逃げようとし、FZから離れると牛は静止する。
扱う者がFZにいきなり入らずにゆっくり入れば牛はゆっくり動き、FZが確保できれば止まる。一方、突然速い動きで強引にFZに入ろうとすると牛は飛び逃げる。
どこからがFZかを見極め、FZに出たり入ったりすることで牛を望む方向に効果的に誘導できる。
 

<圧のかけ方でスピードを調整する>

個体またはグループの牛を正しい場所に誘導するのにはFZで正しい方向に軽く圧することで十分。
牛の正面からFZに近づくと牛は総じて反転して反対側に移動しFZ確保しようとする。

<ポイント・オフ・バランスとは?>

ポイント・オフ・バランス(POB)の体の肩あたり(き甲部)にある仮想上の点または線で旋回軸である。
牛を扱う者がPOBを前に移動すると牛も前に移動し、POBを超えると牛は止まる。このようにPOBを活用して牛の移動させるスピードと方向を調整することができる。
 

<牛への圧かけ(歩行を促す) と解放(緩め)>

扱い人がFZ奥深くに入って圧力をかけることで牛の移動スピードは速くなる。
解放して緩めると止まる。この圧かけと解放をうまく使いこなす。
圧かけは牛を手っ取り早く動かすのに役立つ方法であり、牛への説得方法の一つ。
牛のFZの端に出入りを継続的に行い、圧かけと解放の両方を使用することで最も効果的に牛を移動することができ、牛に対し明確で安定した意思表示を示すことにもなる。
圧力は必要最小限にとどめ牛を落ち着かせた状態に保つように安全に扱い、過度なストレスを与えないようにする。過度な圧力は牛にパニックを起こさせ、牛または人の怪我にもつながる危険性ある。
 

<道具を使って牛を動かす>

施設内移動途中の通路で自らの手が届かないところを延長する意味合いでマジックハンド的な目的であればオール棒や旗付き棒などを使っても構わない。
道具は使い方次第で牛の移動を促進しないで制御してしまう場合あるので注意が必要。
電気ショック棒は使用してはならない。
強制的に尻尾をつかんで牛の移動を強制してはならない。
 

<通路、待機エリア、ミルキングパーラーでの牛の取り扱い>

牛を扱う者は牛の生まれもった本能習性に基づくFZやPOBを活用した誘導方法をうまく駆使して牛が快適にうまくペンから通路の流れに出れるようにする。
牛はゆっくりしたスピードで動くのが好きなので、施設内での移動はゆっくりした形で行う。
牛群を通路移動させるときはまず牛の列の後方に回り牛全体の注意を惹く。
牛が圧を受けると群における順位編成を形成し通路を移動し始める。そうなれば、扱い者は牛にさらに圧力をかけて決まった方向にまとまった形で牛を進めるためにジグザグに後方から牛を追う。
ジグザグ歩きの場合、牛の後方の盲点を出たり入ったりすることで徐々に牛群に圧力をかけていき、牛は自然に列を成してお互いの後を続いて進んでいく。
FZ端を継続的にギザギザに出入りするようにすると牛はFZを確保するため前へ移動する。前進と後退 誘導に活用。
穏やかにストレスの少ない方法で行うことにより牛も人もケガすることなく牛を移動させることができ、必然的に高い生産性を得ることができる。 
一人で牛群から牛を分けたいときは、まず牛群から小さなグループを分けて新しいエリアに連れて行き、その中から個体を選んで元の群に戻す。
待機エリア内のクラウド・ゲート(牛群ゲート)は一見すると牛にとってフライト・ゾーンを侵食しながら迫ってくるように見え、それに対処するため牛は逃げたいと感じ移動を試みる。
これがうまく作用すれば待機エリア内で牛は穏やかに先へと移動する。そのようにするためには待機エリア1を過密状態にしないことが必要である。
過密状態を見極める印は (1)牛が横側に移動する (2)頭をもたげ上げる、(3)後方に移動しようとする、(4)ゲートに近い牛がゲート側を向こうとする。など。
牛が自らミルキング・パーラーに入りたがらない場合は明らかに何か他に理由があるはず。早急に原因を調べる必要ある。

<ミルキング・パーラー にて> 

ミルキング・パーラーは牛と搾乳者両方にとって静かで、穏やかでストレスのない環境であるべき。
通常牛にとって搾乳の時間は快適な時間で大きな声を出したり、口笛を吹いたり物理的な刺激を与えなくても自らミルキング・パーラーに入り、終わったら出ていく。
牛は自分が搾乳されることを理解しており、その手順もしっていて。叫び声や口笛大きな音を出されると良い乳生産の妨げになる。
 

FARMについて

FARM Program (米国酪農家責任保証管理プログラム)はDMI (Dairy management Inc.) の支援を受けて、米国生乳生産者連合であるNational Milk Producers Federation (NMPF)によって米国すべての酪農家が責任をもって保証果たすべき基準を設定することで酪農乳業の継続的な向上を図るべく2009年に制定されました。FARMプログラムは、米国酪農家、協同組合、および乳処理業者(乳業者)により構成実施されております。実際の取り組むテーマとしては (1)環境保全  (2)家畜管理 (3)抗生剤の取り扱い の三つです。 
上記 動画は(2)家畜管理について酪農家の心得・技として紹介されているものです。
 

2017年10月30日

ページトップへ