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学校給食フォーラム「今こそ考えよう!子ども達の食と学校給食の役割」 レポート



子どもたちの食生活環境の中で、学校給食の役割や意義はますます大切になってきています。
その使命や位置づけを改めて考えようと、食文化・教育・栄養の専門家が一堂に会するフォーラムが2014年9月13日に新潟県で開催されました。
活発な議論が交わされたその模様をレポートします。

■フォーラム前半の講演


学校給食を考えるときに、最近の話題として記憶に新しいのは『和食』がユネスコ無形文化遺産に登録されたこと。
これを機に、給食に和食を積極的に取り入れようと考える学校も多いのではないでしょうか。

では、『和食』とは何か。生活の中で解釈に迷うことも少なくないこのテーマから、フォーラムはスタートしました。

※このフォーラムのレポートはページ下部からダウンロードできます。

和食は異文化の融合から生まれた

 ■講師 : 西日本食文化研究会主宰 和仁皓明氏


3名の専門家による講演のトップバッターとして登壇した西日本食文化研究会主宰・和仁皓明氏は、和食を理解するには歴史を遡り、その成り立ちを知る必要があると指摘します。


「縄文時代の食材はクリ、フキ、ワラビなど。炭水化物源のイモは、すでに南方から入ってきていました。以来、大陸からの伝来や南蛮貿易、明治の文明開化や戦後の食の欧米化など、海外の食文化を取り入れながら日本独自の形で確立した食文化、それが『和食』なのです」。
つまり、今の和食のあり方もまた時代と共に変わっていくということ。

「食に限らず、文化は社会の変革と共に導入したものを融合または捨て去って変化します。その結果、社会にとって真に有効なものだけが残されていくのです」。

食文化が変化していくものであるなら、そのバトンを、「社会にとって真に有効なもの」を見極める力と共に次の世代につなぐことが大切だといえます。

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未来の大人を育てる食育を

■講師 : 淑徳大学看護栄養学部 客員教授 田中延子氏


続いて登壇した淑徳大学看護栄養学部客員教授・田中延子氏は、「次世代の健全な大人を育てる」ために、学校給食が持つ教育的役割の重要性を指摘します。

「学校給食は明治22年に山形県の私立小学校が初めて実施して以来、貧困や栄養不足から子どもたちを守ってきました。同時に、栄養の知識を与えて偏食を矯正するなど、教育的効果の観点からも重要な役割を担ってきたのです」。
ただ現実には、子どもたちに“食べさせる”ことが優先され、結果として食に関するさまざまな問題が起きていると田中氏は警鐘を鳴らします。

「幼・小の教育の結果である中学生の栄養摂取状況は、エネルギーもカルシウムも不足し、痩身者が多く、栄養バランスの意識も乏しい。中学2年生女子を例にとれば、10年以内に15.4%が母親になります。今のまま母親になれば、低出生体重児が肥満体質を持って生まれる可能性が高く、これらを改善するためにも、学校における食育が重要です」。

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飽食時代の栄養失調を防ぐ

 ■講師 : 女子栄養大学 給食・栄養管理研究室 栄養学部実践栄養学科教授 石田裕美氏


成長期の身体づくりの問題で常にあげられるのが、カルシウムの摂取不足。男女とも20代でピークを迎える骨量をいかに高められるかで、数十年先の老後に至るまでの骨の健康状態が決定づけられます。

つまり、成長期はやり直しが効かない期間だということ。「その重要な時期のカルシウム摂取に有効なのが、学校給食での牛乳の提供です」と語るのは、最後に登壇した女子栄養大学教授・石田裕美氏。

「仮に牛乳が提供されなかったらどうなるか。協力家庭を募り、毎日の食事の栄養を細かく計算した調査を行いました(下記図表参照)。推定平均必要量(EAR)に満たない子どもは、牛乳からのカルシウムを含む場合は25.5%なのに対して、含まない場合は67.0%。この結果だけを見ても、学校給食で牛乳を提供することは非常に重要です」。 

さらに、石田氏があげるのが経済面での有用性です。「100円あたりのカルシウム量は牛乳は558.4㎎と、さまざまな食品の中でも突出して多い。栄養コスト面からみても優れたカルシウム源なのです」。


Nozue M., Ishida H. etal. How Does Fortification Affect the Distribution of Calcium and Vitamin B1 Intake at the School Lunch for Fifth-Grade Children? J. Nutr Sci Vitaminol 59 22-28(2013)

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パネルディスカッション 望ましい学校給食のあり方とは!

 ■パネルディスカッション座長:公益社団法人新潟県栄養士会会長 稲村雪子氏


フォーラム後半では、公益社団法人新潟県栄養士会の会長・稲村雪子氏が座長を務め、和仁皓明氏、田中延子氏、石田裕美氏のパネラー3人によるパネルディスカッションが行われました。
 

家庭との課題の共有が大切

子どもたちの食育は学校給食だけで完結するものではなく、車の両輪の関係ともいえる家庭での食生活のあり方も重要な要素です。

この点について、稲村氏から「家庭とどう連携すれば、よりステージの高い食育が目指せるのか」との問題提起を受けた田中氏は、「個人的な考え」としながらも、「すでに大人になった保護者自身の食育を推進することは難しい」と現実を見据えた見解を提示。
子どもたちの食育に注力し、「次世代の親を育てる」ことの重要性を改めて強調しました。

その観点から、実践の場である家庭と課題を共有することはやはり大切であるとし、
「子どもの課題を学校側から家庭につなげ、保護者からも家庭の状況を学校に伝えてもらうというやり取りを続けることで、副次的に保護者が変わることも期待できる。そうしたことも、社会全体の食育を推進するために必要だと考えます」
と、学校から家庭に根気よく働きかけ、啓発活動を行うことの大切さを示唆しました。

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子どもたちの味覚体験を広げる

家庭での食生活については、石田氏も「経験する食品の数が減っている」と、現在進めているご自身の研究から受ける印象を語りました。

「栄養教諭の方々に聞くと、就学前検診で保護者が『食べられない食べ物はない』と答えたのに、学校給食が始まってみるとそうではない子どもたちがいるとのこと。保護者が準備する食事の幅がすでに狭まっていて、その幅のなかでは『なんでも食べる』ということなのだろうと思います。こうした現状を考えると、結果的に学校給食が子どもたちの味覚体験を広げているとも言えます」(石田氏)。

この発言を受けて、和仁氏も
「食の経験を広げることは、ひとりの人間の将来の食への可能性を広げていくということ。大人が子どもたちの将来の芽を摘むようなことがあってはならない」
との問題意識を述べました。
 

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多様性とバランス感覚がカギ

学校給食の現場では実際に、ひな祭りや七夕などにあわせた行事食を提供する、地域の郷土料理をメニューに取り入れる、地元で生産された食材を使用して地場産物の活用に努めるなど、子どもたちの食体験を広げる取り組みがさまざま形でなされています。

「子どもたちが食を通じて自分たちの地域を知ることができ、地元を愛する気持ちを育むことにつながる活動」と評価したのは田中氏。ただし、「食育は地場産物の活用といったひとつの切り口だけでは完結しない」とし、いろいろな側面からアプローチすることの必要性を示唆しました。

「最近では、和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたことでブームになっていますね。和食文化の継承は大切なことだと思いますが、学校給食が和食だけを重視し過ぎるとすれば、そうした傾向には疑問を感じます。子どもたちはご飯も、パンも、麵も食べたいわけです。大人の理屈で、その楽しみを奪っていいのかということがひとつ。また、これから子どもたちが世界に羽ばたいていくなかで、日本の文化しか知らないというのでは問題です。食生活においてもグローバルな視点を持った大人になってほしいという観点から、子どもたちにはさまざまな食経験を与えてほしいですね」。

つまり、心身共に大きく発達する成長期は、食材や調理法に偏りのない食事が必要だということ。
「学校給食もバランス感覚を持って運営することが大切です」(田中氏)。
 

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楽しく食べれば元気に育つ

これらの取り組みも、子どもたち自身が食べることに意欲を持たなければ効果をあげることはできません。

子どもたちの痩身傾向と栄養失調に警鐘を鳴らした石田氏も、
「食べることが楽しいと答えた子どもの方が、より理想に近い食事をしている傾向にあります。学校給食はそもそも楽しいものではありますが、『より楽しい』と答えた子どもの方が、そうでない子どもよりも給食を残さず、積極的におかわりをしています」
と、楽しさと食事の充実には相関があると言います。

「味覚体験を誰かと共有することも大切ですね。食べたときの味覚を言葉で表わし、周囲と会話をすることで、味覚が確立される。そんな状況を周囲の大人が支援してつくりだしていくことが、食べる楽しさにもつながるのだと思います」(石田氏)。

田中氏によると、学校給食が教育として位置付けられているのは、世界を見ても日本と韓国だけとのこと。その成り立ちや制度を充実させてきた努力の歴史を知ると、学校給食がある国に暮らす幸せを思わずにはいられません。

「学校給食は、身体をつくるうえでも、人間形成のうえでも非常に重要な役割を担うもの。その共通認識を改めて得ることができた」
とは、座長を務めた稲村氏の締めくくりの言葉。

子どもたちの未来に、私たち大人は何を贈ることができるのか。そのことを改めて考えたフォーラムでした。

■フォーラム後半のパネルディスカッション

 

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2014年11月12日

学校給食フォーラム「今こそ考えよう!子ども達の食と学校給食の役割」 レポート

実施日 平成26年9月13日(土)
場所 ANAクラウンプラザホテル新潟
主催 新潟県酪農業協同組合連合会・新潟県飲用牛乳協会・北陸酪農業協同組合連合会
後援 新潟県教育委員会・新潟市教育委員会・公益社団法人新潟県栄養士会
協力 一般社団法人Jミルク

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