• 食育教材
  • 貸し出し教材
  • 食育指導サポーター
  • 報道用基礎資料
  • 調査報告
  • 研究論文

牛乳・乳製品摂取が、「読み」「書き」などの知的能力機能に影響

牛乳・乳製品摂取が、 「読み」「書き」などの知的能力機能に影響

代表研究者 九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野 :吉田大悟
共同研究者 久山生活習慣病研究所 :清原 裕

福岡県久山町における65 歳以上の地域高齢者1,009名を対象に、7年間追跡調査をした結果、牛乳・乳製品の摂取量が増加するにつれて、生活機能障害が発生するリスクが低下しました。

特に牛乳・乳製品の摂取量が増加すると、「読み」「書き」などの知的能力を用いる知的能動性の障害が発生するリスクが低下することがわかりました。

高齢人口の増加 生活機能障害など対策を

日本では2007年に高齢化率が21%を超え、「超高齢社会」に突入しました。
高齢者の増加に伴い、「読み」「書き」などの生活機能*1 の障害や「食事」や「入浴」などの日常生活動作(ADL)*2 の障害への対策が大きな課題となりました。
そこでその原因と予防法を明らかにすることで寝たきりや介護を必要とする状態を回避し、元気で長生きする健康寿命を延ばすことにつながることが考えられます。
健康寿命の延伸についてはさまざまな予防法が考えられていますが、改善が可能な日常的な生活習慣として食事習慣に着目しました。

さらに認知症発症リスクが低下したこれまでの研究結果1)を踏まえ、牛乳・乳製品摂取に注目しました。

先行研究を調べたところ、地域高齢者における牛乳・乳製品摂取と生活機能障害やADL障害の関連について検討した報告が極めて少ないこともわかりました。そこで、福岡県久山町の疫学調査(久山町研究)*3 において、1985年から約7年ごとに65歳以上の高齢者を対象に追跡した調査をもとに、牛乳・乳製品摂取が生活機能およびADL障害に及ぼす影響について、2005 - 2012年の7年間の追跡データを用いて調査し検討することにしました。

牛乳・乳製品の摂取量増加に伴い、生活機能障害発生のリスク下がる

まず生活機能評価では、「読み」「書き」など13項目中1項目以上(表1)できない機能がある場合を生活機能障害ありとしました。調査したい因子(要因)以外で結果に影響を与える性別や年齢、総エネルギー摂取量を調整し、その影響を除いて検討した結果、牛乳・乳製品の摂取量が増加するほど生活機能障害の発生率は有意に低下し、牛乳・乳製品摂取レベルが1番高い第4分位の群は1番低い第1分位に比べて、生活機能障害が起こる確率は0.59倍と推定されました。
つまり牛乳・乳製品を最も摂取する群(93.1 - 403.0g/1,000kcal)は、最も摂取しない群(0 - 16.8g/1,000kcal)と比べて40%リスクが低下することになりました。

さらに性別や年齢などに加え、高血圧や糖尿病、喫煙や飲酒、運動習慣など複数の因子を調整し、その影響を除いて検討した結果、生活機能障害が起こる確率は、最も飲まない群(0 - 16.8g/1,000kcal)と比較して最も摂取する群(93.1 - 403.0g/1,000kcal)では0.6倍となり、ほぼ同じ結果になりました。(グラフ1)

次に生活機能の評価を手段的自立(IADL)、知的能動性、社会的役割の3つの下位尺度(種類)で検討したところ、牛乳・乳製品摂取と手段的自立、社会的役割との間には明らかな関連が見られなかったものの、「読む」「書く」など知的能力(知的能動性)との間には有意な関連が見られ、牛乳・乳製品の摂取量が増加すると、知的能動性障害のリスクが低下することがわかりました。(グラフ2)
 

追跡期間延長で、ADL障害との関連が明らかになる可能性

食事や入浴のような日常生活動作(ADL)を10項目で評価(表2)し、95点以下をADL障害ありと定義したところ、牛乳・乳製品摂取量とADL障害発生との間には、明らかな関連は見られませんでした。
これは追跡期間が7年間と短かった可能性があり、今後10年、15年間と延長して検討することで関連が明らかになる可能性が考えられます。

なぜならば、これまで久山町研究では、カルシウムやマグネシウムなどミネラル類を豊富に含む牛乳・乳製品の高摂取が、ADL 障害の主要な原因疾患である認知症発症のリスクを低下させることを研究2)で明らかにしたからです。
さらに他の研究からカルシウムを介して、骨粗鬆症や骨折などADL 障害の原因のひとつである整形外科的疾患のリスクが低下することが報告3)されているからです。
このことから、牛乳・乳製品を高摂取すると認知症や整形外科的疾患のリスクを低下させ、ひいてはその後に起こるADL 障害の予防につながることが考えられます。 
 
 
(注釈)
*1 生活機能:人が日常生活を営むための能力や働き
*2 日常生活動作(ADL):日常生活を営む上で行う基本的な動作や行動
*3 久山町研究:福岡市に隣接した糟屋郡久山町(人口約8,400人)の住民を対象に脳卒中、心血管疾患などの疫学調査を九州大学が1961年から実施しているもので、世界的に高く評価された精度の高い疫学研究。

(文献)
1)2) Ozawa M, Ohara T, Ninomiya T, Hata J, Yoshida D, Mukai N, Nagata M,Uchida K, Shirota T, Kitazono T, Kiyohara Y. Milk and dairy consumption and risk of dementia in an elderly Japanese population: the Hisayama Study. J Am Geriatr Soc 2014; 62: 1224-1230.
3) Hong H, Kim EK, Lee JS. Effects of calcium intake, milk and dairy product intake, and blood vitamin D level on osteoporosis risk in Korean adults: analysis of the 2008 and 2009 Korea National Health and Nutrition Examination Survey. Nutr Res Pract 2013; 7: 409-417.
 

- 「わかりやすい最新ミルクの研究」2016 年度 -

一般社団法人Jミルクと「乳の学術連合」(牛乳乳製品健康科学会議/乳の社会文化ネットワーク/牛乳食育研究会の三つの研究会で構成される学術組織)は、「乳の学術連合」で毎年度実施している乳に関する学術研究の中から、特に優れていると評価されたものを、「わかりやすい 最新ミルクの研究リポート」として作成しています。

本研究リポートは、対象となる学術研究を領域の異なる研究者や専門家含め、牛乳乳製品や酪農乳業に関心のある全ての皆様に、わかりやすく要約したものになります。
なお、研究リポートに掲載されている研究内容詳細を確認する場合は、乳の学術連合公式webサイト内「学術連合の研究データベース」より研究報告書のPDFをダウンロードして閲覧可能です。あわせてご利用ください。
 

2017年1月25日

牛乳・乳製品摂取が、「読み」「書き」などの知的能力機能に影響

代表研究者 九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野 :吉田大悟
共同研究者 久山生活習慣病研究所 :清原 裕

- 「わかりやすい最新ミルクの研究」2016 年度 -

ダウンロード

研究報告書は乳の学術連合のサイトに掲載しています

研究の詳細は、こちらをご覧ください。

地域高齢者における牛乳・乳製品の摂取が日常生活動作(ADL)障害に与える影響に関する疫学研究 

乳の学術連合のサイトはこちら

我が国における牛乳乳製品の消費の維持・拡大及び酪農乳業と生活者との信頼関係の強化を図っていく観点から、牛乳乳製品の価値向上に繋がる多種多様な情報を「伝わり易く解かり易い表現」として開発し、業界関係者及び生活者に提供することを目的とした健康科学分野・社会文化分野・食育分野の専門家で構成する組織の連合体です。

乳の学術連合 

ページトップへ