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日本における「乳と米」の関係 「ミルク粥」が身近になる可能性

日本における「乳と米」の関係 「ミルク粥」が身近になる可能性

代表研究者 酪農学園大学農食環境学群教授:石井智美

「小麦と肉」の食文化を持つユーラシア大陸の西側と、「米と魚」がメインの東側の緩衝地帯にあるカザフスタンとブータンでは、「乳と米」を積極的に利用した「ミルク粥」が食べられています。

「ミルク粥」は、学校給食で米飯と牛乳の組合せに馴染んだ世代が増えつつある日本でも、栄養価に優れ、簡単に作れる「乳と米」の新しい料理として今後、身近になる可能性があります。

「ミルク粥」が時代に受入れられる可能性

 北海道の酪農家はその昔、朝食に温かいご飯の上にバターをのせ、牛乳をかけて食べていました。このような食習慣を考えると、牛乳と米飯を融合させた新しい食べ方を積極的に提案することは、時代のニーズに対応させた普及につながる可能性を感じました。

 さらに食文化の研究者の間では、日本の食事スタイルは40年ひとサイクルと言われています。その転換期には変化を察知する仕掛人が必ずいて、時代のブームを上手に創り出しています。

そこで、乳と米を上手に利用している中央アジアの「ミルク粥」の利用実態を明らかにすることで、このようなムーブメントを創出できるではないかと考えました。なぜなら、「ミルク粥」は乳が本来持っている味を利用し誰でも手軽に作れることや、栄養価にも優れている利点があるからです。そこで、ユーラシア大陸の東西の緩衝地帯にあり、乳と米を利用しているにも関わらず、その食に関する報告が少ないカザフスタン(以下カザフ)とブータンを調査対象とし、現地で聞き取りと情報収集を行い、カザフは2週間、ブータンは5日間それぞれ一般家庭に滞在しました。

両国で滞在した家庭では、ともに伝統を継承しながら家畜を飼い乳加工を行っており、「ミルク粥」を調理する現場を直接見ながら調査を進めました。
 

朝食でカーシャ(ミルク粥)を食べる習慣

 カザフは世界 9 位という広い国土を持ち、気候が多様で様々な農作物が生産されています。中でも稲作はインディカ米、ジャポニカ米など豊富な種類が栽培され、身近な食品のひとつとして国民の食生活を支えています。ただ、日本と違うところは米を主食としてではなく、おかずである温野菜と同類に考えられていました。
 カザフで米を使った料理として真っ先に上げられるのが、日本のピラフに似た「プロフ」という民族料理です。大量に米を使い、「人が集まるところにプロフあり」と言われるくらい、米料理としては最も親しまれています。
 「カーシャ」と呼ばれる「ミルク粥」は、朝食で食べることが多く、1週間の内1~2回は朝食に出されました。カザフの「カーシャ」は、ほとんどが柔らかく炊いたジャポニカ米に温かい牛乳を加えて加熱していました。最初から乳のみで加熱すると焦げやすいので、水と牛乳を合わせて炊いたり、大量の水分で米を炊き、「湯取り法」といって途中で米のねばりを取った後、牛乳を加えてさらっとした食感に仕上げるなど、家庭によって作り方が違っていました。
 食べ方としては、黄色いツブツブが浮かぶ液状の自家製バターをのせることが多く、好みで砂糖をかけて食べていました。食べてみたところ、砂糖なしでも十分においしく、日本人には砂糖なしが好まれると感じました。さらに調査世帯のひとつでは、砂糖や塩も加えない味付けもあり、シンプルな味付けが逆に飽きないのか、毎朝食べている家庭もありました。
 このようにカザフでは、作り方も食べ方も厳密な決まりがある訳ではなく、各家庭のやり方でおいしさを工夫していました。
 

少量の米の「ミルク粥」は特別の日のごちそう

 一方、ブータンは国土の標高が高く、平地も少ないという特色があります。そのため野菜の種類も少なく食材が限られるため棚田を広げて稲作を行い、気候に適した牛や標高の高い地域に生息するヤクを飼ってきました。このような環境の中、ある時期から米がエネルギー源の中心となり、食生活を支えるようになりました。調査世帯でも1回の食事でどんぶり2杯分(200g)、1日平均600gという大量の米を食べていました。ブータンは多くの家庭で食べられている米が白米ではなく赤米で、フワフワとした食感をしていました。この赤米を主食に、乳製品と唐辛子を副菜として食べています。
 ブータンの稲作農家では、自家消費用の乳を得るため数頭の牛を飼い、より標高の高い地域ではヤクがその役割を担っていました。家畜の世話や搾乳は、すべて女性の仕事です。搾った乳は、「乳茶」として飲用するほか、乳を数日貯めて低発酵乳させ、まずは撹拌して「マー」(バター)を取り出し、残った脱脂乳からは「ダツイ」(カッテージチーズ)を作っていました。「ダツイ」は、大量の唐辛子とともに味の濃い副菜となり、大量の米を食べるためのおかずになります。このように大量の米を少量のおかずと一緒に食べるのが、ブータンの食生活の基本スタイルです。
 また、「ダツイ」は重要なタンパク源で、「ダツイ」に含まれるアミノ酸のうま味が塩分摂取量をおさえる役割も果たしていました。乳製品のアミノ酸を上手に活用するブータンの食生活の知恵は、塩分摂取が多くなりがちな和食に見習いたいところです。
 大量に赤米を食べてエネルギー源とするブータンでは、少量のお米をミルクで増やす「ミルク粥」が、特別の日に食べられるごちそうでした。特に見た目はお汁粉のようにドロドロしているヤク乳のダツイとヤク肉が両方は入った「ミルク粥」は、最高のごちそうとして、もてなされていました。

調査を終えて感じたこと

 カザフとブータンの調査から、「乳」は様々な加工方法があり、家畜を失うことなく継続して得られる食品であり、「米」は多くの人を養えるエネルギー源である実態がより明確になりました。
「乳と米」という2つの優れた食品に和食のうま味を加えることで、日本の食文化に新たな可能性の広がりを感じました。
 

- 「わかりやすい最新ミルクの研究」2016 年度 -

一般社団法人Jミルクと「乳の学術連合」(牛乳乳製品健康科学会議/乳の社会文化ネットワーク/牛乳食育研究会の三つの研究会で構成される学術組織)は、「乳の学術連合」で毎年度実施している乳に関する学術研究の中から、特に優れていると評価されたものを、「わかりやすい 最新ミルクの研究リポート」として作成しています。

本研究リポートは、対象となる学術研究を領域の異なる研究者や専門家含め、牛乳乳製品や酪農乳業に関心のある全ての皆様に、わかりやすく要約したものになります。
なお、研究リポートに掲載されている研究内容詳細を確認する場合は、乳の学術連合公式webサイト内「学術連合の研究データベース」より研究報告書のPDFをダウンロードして閲覧可能です。あわせてご利用ください。
 

2017年1月25日

日本における「乳と米」の関係 「ミルク粥」が身近になる可能性

代表研究者 酪農学園大学農食環境学群教授:石井智美

- 「わかりやすい最新ミルクの研究」2016 年度 -

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研究報告書は乳の学術連合のサイトに掲載しています

研究の詳細は、こちらをご覧ください。

和食と乳の融合 -中央アジアにおける乳と米の組み合わせから- 

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我が国における牛乳乳製品の消費の維持・拡大及び酪農乳業と生活者との信頼関係の強化を図っていく観点から、牛乳乳製品の価値向上に繋がる多種多様な情報を「伝わり易く解かり易い表現」として開発し、業界関係者及び生活者に提供することを目的とした健康科学分野・社会文化分野・食育分野の専門家で構成する組織の連合体です。

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