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牛乳の低価格脱却に向けたPB牛乳の可能性

牛乳の低価格脱却に向けたPB牛乳の可能性

代表研究者
 亜細亜大学経営学部経営学科 :西原彰宏
共同研究者
 千葉商科大学政策情報学部 :赤松直樹
 麗澤大学経済学部経営学科 :圓丸哲麻
 専修大学商学部 :大崎恒次
 学習院大学経済経営研究所 :中見真也
 学習院大学経済経営研究所 :福田怜生

集客のための「目玉商品」として位置づけられ、低価格販売が常態化していた牛乳が、近年低価格を脱却し、集客に新たな動きが見られるようになりました。

その火付け役のひとつが、価格帯や消費者の認識に急激な変化が見られるプライベートブランド(以下PB)*1 牛乳です。

そこで本研究では、PB 牛乳に着目し調査をしたところ、牛乳を「他の飲み物と混ぜて飲む」消費者が、PB 牛乳を選択したいという傾向にあることなどがわかりました。

*1 プライベートブランド:小売店などが企画し、独自のブランドで販売する商品
 

差別化を図るのが難しい牛乳類

 牛乳は、西洋文化が日本に浸透するに従い飲用されはじめ、戦後、学校給食を中心に多くの日本人に親しまれるようになりました。その特徴について、製品面、流通面から整理しました。

 製品面の特徴としては、牛乳は生乳を殺菌加工し製造されることにあります。酪農家により毎日生産される生乳は、腐敗しやすく貯蔵性がありません。鮮度が大事な生乳は、短時間のうちに乳業メーカーが引き取り加工する必要があります。生乳を引き受けた乳業メーカーは、殺菌処理したり、成分を調整することで製品化します。殺菌には、温度と時間の違いでいくつか方法があります。120~130度で2秒間殺菌する超高温殺菌、75度で15秒間殺菌する高温殺菌、62~65度で30分間殺菌する低温殺菌などです。日本で売られている多くの牛乳は、超高温殺菌で殺菌されています。牛乳の種類には、生乳を殺菌した「牛乳(成分無調整牛乳)」をはじめ、乳脂肪分など成分の一部を除去して作られる「成分調整牛乳」や「低脂肪牛乳」、「無脂肪牛乳」、この他に加工乳や乳飲料などがあります。このように牛乳(前述の牛乳各種を総称して以下牛乳と表記)は、製造工程が殺菌と成分調整などに限られるため、乳業メーカー各社は他社と差別化を図ることが容易ではありません。

 加えて、牛乳はパッケージにも景品表示法や食品衛生法、JIS 規格、自主規約と制約条件があります。自主規約とは、虚偽や誇大な表示の発生を未然に防止するため乳事業者が設定した規約です。そのためパッケージでも、他社との差別化を打ち出しにくい状況です。
 

低価格路線を脱却する動き

 一方、流通面の大きな特徴としては、牛乳は集客の「目玉商品」として低価格販売が常態化していることにあります。牛乳の主な売場は、食品スーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアなどいわゆる量販店です。その中でも1970年代以降、食品スーパーは主要な売場とされてきました。食品スーパーは当時からすでに、集客の「目玉商品」として牛乳を低価格で販売していました。低価格販売の理由は、牛乳類を購入する際に鮮度を重視する傾向にある消費者とその日のうちに牛乳類を売り切りたい食品スーパー双方の思惑が一致したからです。この傾向は食品スーパーだけでなくドラッグストアなどの小売業でも同様で、いつしか牛乳は「目玉商品」「低価格」が当たり前になってきました。

 ところが近年、小売業では、今までの低価格を前面に打ち出した集客から脱却を図る動きが見られるようになりました。例えば、コンビニエンスストアを中心に「安かろう悪かろう」のイメージが強いPB牛乳が、一般的な価格を超える価格帯で販売されるようになりました。ちなみにPBと対義語のナショナルブランド(以下NB)*2についても、高級食品スーパーでは価格の高い牛乳やヨーグルトが人気を得ています。また、消費者の牛乳の飲み方もこの30年で大きく変化してきました。コーヒーや紅茶など「他の飲み物と混ぜて飲む」回数は、30年前と比べおよそ1.5倍に伸びました。それとは対照的に「牛乳をそのまま飲む」回数は、ピーク時の半数以下に減ってきています(グラフ1)。

 以上のような消費者動向から、近年、牛乳に対して消費者の気持ちや考え方が変化している可能性が推測できます。そこで本研究では、価格帯や消費者の認識が急激に変化しているPBに着目し2つの側面から消費者に調査を行い、牛乳を取り巻く現状と今後の可能性を探りました。

*2 ナショナルブランド:メーカーが商品につけたブランド
 

「混ぜて飲む」消費者がPB 牛乳を選択

 牛乳をコーヒーや紅茶など「他の飲み物と混ぜて飲む」消費者が増えています。そのため、1つ目の調査では、牛乳を「そのまま飲む」場合と「他の飲み物と混ぜて飲む」場合を比較。PB牛乳を選択したいと考える消費者は、どちらが多いか調査しました。その結果、「他の飲み物と混ぜて飲む」場合の方が、PB牛乳を選択したいと考える消費者が増えていることがわかりました(グラフ2)。
 
  さらに牛乳を「他の飲み物と混ぜて飲む」場合、牛乳の品質、栄養、カロリー、価格などどの特徴を重視する消費者がPB 牛乳を選択したいと考えているかについても分析しました。その結果、牛乳の栄養成分や価格を重視する消費者ほど、PB牛乳を選択したいと考えていることがわかりました。

 これまで牛乳を「他の飲み物と混ぜて飲む」ことについては、広告でもあまり強調されず、商品開発でも注目されませんでした。ところが調査の結果からは、消費者がPB牛乳を選択する可能性は、「他の飲み物と混ぜて飲む」場合に高まることが示されました。今後は、「混ぜて飲む」ことを意識した広告宣伝や商品開発が、牛乳消費量向上につながることが考えられます。

「今後、販売するPB牛乳」に高い期待

 2つ目の調査では、食品スーパーなど小売業で販売されているPBが、牛乳だけでなく様々な乳製品にも付与されていることに着目。「現在、販売されているPB商品に対する評価」と「今後、販売されるPB新商品の期待」との関係について調査しました。その結果、「現在、販売されているPB商品」を高く評価している消費者は、「今後、販売されるPB新商品」に高い期待を寄せていることがわかりました。ただし、この関係が成立するのは、「現在、販売されているPB 商品」を購入する頻度が高い消費者に限られました。

 牛乳は消費者の日常生活にある商品のため、購入人数も多く、購入頻度も高いという特徴があります。この特徴と2つ目の調査結果を併せると、小売業にとっては「現在、販売されているPB 牛乳」は「今後、販売されるPB新商品」を高く評価してもらうために重要な商品であることがわかります。そのため小売業は、PB牛乳を低価格だけの「目玉商品」にするのではなく、品質や安全性などを重視した商品開発を行い、PB牛乳の長所を明確に消費者に伝えていく必要があります。

 以上、消費者視点を踏まえながら行った2つの調査から、PB牛乳の新たな役割や価値をより高めるPB牛乳のあり方ついて、方向性を示すことができたのではないかと考えています。

 

-「あたらしいミルクの研究」2017 年度 -

一般社団法人Jミルクと「乳の学術連合」(牛乳乳製品健康科学会議/乳の社会文化ネットワーク/牛乳食育研究会の三つの研究会で構成される学術組織)は、「乳の学術連合」で毎年度実施している乳に関する学術研究の中から、特に優れていると評価されたものを、「あたらしいミルクの研究リポート」として作成しています。

本研究リポートは、対象となる学術研究を領域の異なる研究者や専門家含め、牛乳乳製品や酪農乳業に関心のある全ての皆様に、わかりやすく要約したものになります。
なお、研究リポートに掲載されている研究内容詳細を確認する場合は、乳の学術連合公式webサイト内「学術連合の研究データベース」より研究報告書のPDFをダウンロードして閲覧可能です。あわせてご利用ください。
 

2018年5月22日

牛乳の低価格脱却に向けたPB牛乳の可能性

代表研究者
 亜細亜大学経営学部経営学科 :西原彰宏
共同研究者
 千葉商科大学政策情報学部 :赤松直樹
 麗澤大学経済学部経営学科 :圓丸哲麻
 専修大学商学部 :大崎恒次
 学習院大学経済経営研究所 :中見真也
 学習院大学経済経営研究所 :福田怜生

- 「あたらしいミルクの研究」2017 年度 -

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研究報告書は乳の学術連合のサイトに掲載しています

研究の詳細は、こちらをご覧ください。

小売業における牛乳PB展開を通した売場活性化に向けて 

乳の学術連合のサイトはこちら

我が国における牛乳乳製品の消費の維持・拡大及び酪農乳業と生活者との信頼関係の強化を図っていく観点から、牛乳乳製品の価値向上に繋がる多種多様な情報を「伝わり易く解かり易い表現」として開発し、業界関係者及び生活者に提供することを目的とした健康科学分野・社会文化分野・食育分野の専門家で構成する組織の連合体です。

乳の学術連合 

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