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地域内の異世代間交流で、高校生に牛乳乳製品のイメージ変化

代表研究者 松本大学大学院健康科学研究科:廣田直子

 シニア世代と高校生が、地域内で受け継がれてきた伝統的な食生活を伝承できる仕組みづくりにつなげるため、近年高齢者で問題となっている低栄養や骨粗鬆症を取り上げ、それらの予防につながる食として注目される牛乳乳製品のイメージや利用意欲などの変化を検証しました。その結果、シニア世代と高校生がともに活動することで異世代の特性について理解を深め、高校生の牛乳乳製品に対する栄養的な特徴へのイメージが変化しました。

地域内での異世代間交流は不可欠

 「食改」の略称で呼ばれる食生活改善推進員は、食を通して健康づくりを行うボランティア団体で、シニア世代を中心に17万人の会員が、全国1,411市町村(平成23年4月調べ)で活動しています。中でも長野県の食改は、他県から認められるほど活動が活発で、伝統的な食事を踏まえた上で適切な食生活のあり方を伝える取り組みにより、地域のネットワークづくりとしての功績も大きく評価されています。しかし、これまで男女ともに日本一と言われる長野県の健康長寿を支えてきた食改も、若い人に活動を知ってもらう機会が少なく、会員の減少とともに次世代への継承が懸念されています。

 一方、食改と併せて、祖母から孫へという家庭内で伝承されていた食生活も懸念されています。3世代同居の少なくなった現代では、家庭内でも世代間のネットワークが弱体化し、長野県の健康長寿の要因のひとつである「高齢者世代の野菜を中心とした伝統的な食生活」が途絶えてしまう可能性も高まってきまし
た。それを裏付けるように、長野県内の中学生に生活習慣病の調査を進めたところ、生活習慣病と密接に関連する食品摂取や食行動に問題があるという結果も得られており、若年者の健康課題が深刻化しています。

 そこで、食改の活動を次世代につなぎ、家庭内で伝承されていた食生活を継承していくため、家庭の枠を外し、地域内で異世代間交流をすることが不可欠と考え、食改のシニア世代と高校生をつなぐ食生活講座を実施しました。なお、若い世代を高校生にしたのは、小・中学校と比較して高等学校では学校給食がなくなり、食に関する教育の体系化が難しくなっていると考えたからです。
 

牛乳・乳製品で、健康課題を改善

 食生活講座のプログラムは、高齢者の食生活課題にアプローチし、2つの側面を主に組み立てることにしました。ひとつは「食塩摂取量」で、長野県では、高齢者になると野菜と食塩摂取量が相関して多くなる傾向にあります。そこで、乳製品を和食に取り入れ、「適塩」とされる適性な食塩摂取量に効果的な「乳和食」を紹介し、食塩摂取量を減らす対策としました。

 もうひとつは、低栄養や骨粗鬆症など高齢者の健康課題が直近であるがゆえに切実なシニア世代と将来的な課題であるがゆえに実感することが難しい高校生が一緒に調理実習やグループワークを行い、異世代間の交流を通して理解を深めることにしました。なお、高校生の課題としては、中学校で学校給食が終了するとともに牛乳・乳製品の摂取が低下し、結果、カルシウム不足を招いてしまう可能性が考えられます。そこで、シニア世代と交流することにより将来的な健康課題を理解し、年齢を重ねても健康に過ごせるように、食生活のあり方を見直すきっかけになることを期待しました。

 なお、適塩を目指した「乳和食」が食塩摂取量を減らす対策として適切かどうか、あるいは高齢者の健康課題改善ための食生活において牛乳・乳製品が適切かどうか、それらの効果を図るため、牛乳・乳製品のイメージや利用意欲について食生活講座の事前と事後の変化を指標として調査を進めました。
 

「牛乳・乳製品のイメージ」が 高校生で変化

  研究は、長野県M市とO市の食改(いずれも女性)と同市の高校生(男・女)で、約半年間にわたり実施し、食生活講座をM市では3回、O市では1回実施しました。
 1回のみ実施したO市では、食改が準備した長野県の伝統的な献立を高校生と一緒に調理実習しました。M市ではこれに加え、「高校生が高齢者の栄養特性を学習して考えた乳和食を食改と調理実習」と「グループワークによる異世代間交流」など、計3回の食生活講座を実施しました。

 調査方法は、食生活講座を実施する事前と事後の食生活意識について選択式の回答と「牛乳・乳製品について思い浮かんだこと」「普段の牛乳・乳製品の利用・料理の仕方」「個人ワークシート」などを自由記述で答えてもらいました。

 これらの調査をもとに、食生活講座の事前と事後で「牛乳・乳製品のイメージの変化」について分析したところ、食生活講座を3回実施したM市の高校生は、「牛乳・乳製品はカルシウム源として優れている」の1項目でイメージが良い方向に変化しました。

 一方、食生活講座を1回しか実施していないO市の高校生では、「牛乳・乳製品は健康によい」「料理のときに牛乳は利用しやすい」「チーズが好き」「牛乳・乳製品はカルシウム源として優れている」の4項目でイメージが良い方向に変化しました。食生活講座を3回実施しているM市の高校生よりも、1回しか実施していないO市の高校生の方がなぜ、多数の項目で変化があったのか検討したところ、M市の高校生は食に関する教育が日常的に行われており、すでにある程度の知識を習得していたことで、新たな「気づき」という点では、変化が少なかったのではないかと推測しています。
 

約65%の高校生で、牛乳利用についての意識が変化

 次に「個人ワークシートの自由記述」を見ると、食生活講座を3回実施したM市の食改と高校生で成果が見られました。M市の食改では、「普段の牛乳・乳製品の利用、料理の仕方」において記述件数の平均が事前の3.15(件/人)から事後で3.95(件/人)に増加しました。また、料理の仕方についても、より具体的でオリジナルな発想が見てとれる内容になっていました。

 M市の高校生では、選択式の回答で「牛乳・乳製品利用についての意識の変化」を事前と事後で質問したところ、「はい」が17人、「いいえ」が5人であり、約65%に意識の変化が見られました。この理由として、食生活講座で高齢者の栄養特性を学習し、それをもとに高校生から食改に「乳和食」を提案し、一緒に調理実習を行ったことで学びが深まったことが考えます。ワークシートの記述においても、「いろんなものに牛乳を加えて食べてみたい」「牛乳を取り入れることにより味も変わっていくので使いたい」「絶対に合わないと思っていたのが、逆に食べやすくなったので驚いた」など、利用意欲の向上が伺える内容が多く見られました。

※本研究では、比較対象として食生活講座を実施せず、アンケート調査のみの食改と高校生を、M市とO市それぞれに設定して実施しております。
 

- 「わかりやすい最新ミルクの研究」2016 年度 -

一般社団法人Jミルクと「乳の学術連合」(牛乳乳製品健康科学会議/乳の社会文化ネットワーク/牛乳食育研究会の三つの研究会で構成される学術組織)は、「乳の学術連合」で毎年度実施している乳に関する学術研究の中から、特に優れていると評価されたものを、「わかりやすい 最新ミルクの研究リポート」として作成しています。

本研究リポートは、対象となる学術研究を領域の異なる研究者や専門家含め、牛乳乳製品や酪農乳業に関心のある全ての皆様に、わかりやすく要約したものになります。
なお、研究リポートに掲載されている研究内容詳細を確認する場合は、乳の学術連合公式webサイト内「学術連合の研究データベース」より研究報告書のPDFをダウンロードして閲覧可能です。あわせてご利用ください。
 

2017年7月25日

地域内の異世代間交流で、高校生に牛乳乳製品のイメージ変化

代表研究者 松本大学大学院健康科学研究科:廣田直子

- 「わかりやすい最新ミルクの研究」2016 年度 -

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研究報告書は乳の学術連合のサイトに掲載しています

研究の詳細は、こちらをご覧ください。

食を伝える新しい異世代間地域ネットワークづくりのための参加型アクションリサーチ - 食事の形と低栄養予防対策の視点を組み入れて - 

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我が国における牛乳乳製品の消費の維持・拡大及び酪農乳業と生活者との信頼関係の強化を図っていく観点から、牛乳乳製品の価値向上に繋がる多種多様な情報を「伝わり易く解かり易い表現」として開発し、業界関係者及び生活者に提供することを目的とした健康科学分野・社会文化分野・食育分野の専門家で構成する組織の連合体です。

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