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震災後の牛乳・乳製品摂取から効果的な食育のあり方を考える

震災後の牛乳・乳製品摂取から効果的な食育のあり方を考える

代表研究者
 東北大学大学院医学系研究科 :佐藤ゆき
共同研究者
 佐賀大学医学部 :鈴木智恵子
 仙台市(管理栄養士) :鴫原美智子

2011年3月東日本大震災(以下 震災)後、東北地方の子ども約6割は1年以上食生活の変化が継続し、そのうち4割は現在もその状態であることが保護者の調査からわかりました。

一方、地理的に震災の影響が少ないと思われる九州地方でも、同じ割合を示しました。

そこで、震災後の食習慣の変化と牛乳・乳製品の摂取状況から、子どもと保護者向けの食育アプローチについて調査したところ、効果的なあり方として、学校と連携した取組みと保護者に学ぶ機会を提供することが見えてきました。
 

震災後の食習慣の変化を調査

 平成27年国民健康・栄養調査の報告によると、20歳以上の成人が食事のなかで占める牛乳・乳製品の割合は4.8%、小学生では15.8%で成人の約3倍となっています。牛乳・乳製品はカルシウムの主要摂取源でもあり、特に成長期である学童にとっては重要な食品のひとつになっています。しかし震災後、被災地を中心に放射性物質含有への懸念から、一時的に保護者が子どもたちから牛乳・乳製品を遠ざけたことが予想されます。さらに、牛乳・乳製品を一定期間摂取しなかったことで不摂取が習慣化し、それが現在も長期的に続いている可能性も考えられます。

 そこで、震災後の食習慣の変化とともに牛乳・乳製品の摂取状況を調査しました。そして最終的には、子どもと保護者に向けての効果的な食育アプローチのあり方を検討しました。
 

長期の休みで朝食抜きが倍増

 東北地方の公立小学校2校の860名、九州地方の公立小学校7校の3,403名の児童と保護者を対象にアンケート調査を実施しました。(有効回答数:東北地方859名、九州地方2,454名)調査対象を九州地方としたのは、地理的に震災による食生活への影響が少ないと考えたからです。

 調査項目としては、「生活環境や生活習慣」「震災後の食への関心や食生活の変化」「朝食、夕食、間食の1日の献立をもとにしたふだんの食事内容」です。併せて、「保護者が抱える子どもの食習慣に関する悩みやこだわり」については、自由記述欄を設け調査しました。なお、「ふだんの食事内容」の調査票の様式は、学校の食育授業の要素を取り入れて親子で記録しながら食育学習ができるように、本研究で開発しました。

 調査の結果「生活環境や生活習慣」については、学校のある日と夏休みなど長期休み(以下長期休み)の時の朝食喫食状況は、「学校のある日・毎日食べる」が92.8%、「学校のある日・欠食することがある」が5.5%でした。一方、「長期休みの日・毎日食べる」が86.5%、「長期休みの日・欠食することがある」が11.6%でした。長期休みは学校のある日と比べ、朝食を欠食することがある子どもが約2倍になっていました。

 また子どもの食事や食生活に関して保護者が参考にする情報源については、「テレビ・ラジオ」「インターネット」「学校」「新聞・雑誌」「その他」の順で、学校からの情報も約30%が参考にしていることがわかりました。保護者にとって学校は、食育情報を提供する重要な発信源であることがわかりました。
 

2 2%が食べ物への関心に変化

 「震災後の食への関心や食生活の変化」については、子どもの食べる物への関心は22%の保護者が高まっていました。地域別で見ると東北地方24%、九州地方20%でした。(グラフ1)

 関心が高まった保護者のうち、食べなくなった食品がある保護者は39%でした。地域別で見ると東北地方52%、九州地方33%でした。(グラフ2)

 さらに震災発生から5年後の調査時(2016年)までの食べなかった期間については、「1年未満34%」「1年以上5年未満20%」「5年以上継続42%」でした。この結果、1年以上食事の内容が変化している保護者は、62%であることがわかりました。なお地域別では、食べなかった期間が5年以上継続している割合は、東北地方40%、九州地方43%で、九州地方がやや高い傾向でした。(グラフ3)

約6割が牛乳・乳製品を1日1回以上摂取

 「ふだんの食事内容」については、牛乳・乳製品を家庭内で1日1回以上摂取する子どもは56.3%で、地域別では東北地方56.3%、九州地方56.3%でした。家庭内で牛乳・乳製品を摂取しているタイミングは、朝食時は43.2%で、主な種類としては東北地方でヨーグルト、九州地方では牛乳を摂取する傾向が多く見られました。夕食時は20.8%で、九州地方が東北地方より牛乳・乳製品を多く摂取する傾向が見られました。間食時は8.5%で、主な種類としては東北、九州地方とも牛乳、ヨーグルト以外を摂取する傾向があり、アイスクリーム(アイスミルク)の回答が多く見られました。
 

5年経過しても産地や成分に不安

 「子どもの食習慣に関する悩みやこだわり」については、保護者の自由記述から牛乳・乳製品に関することが54件ありました。牛乳・乳製品を摂取させている理由としては、「体調管理(便通のため、栄養補給源、インフルエンザや花粉症予防)」と「ジュースやおやつ代わり」となっていました。一方、摂取させていない理由は、「産地や成分への懸念」となっていました。保護者のコメントは大半がポジティブな内容でしたが、震災から5年経過した時点でも産地や成分に不安があることがわかりました。

 これらの調査結果を整理すると、子どもの約4割は朝食時に牛乳・乳製品を摂取する傾向がありました。しかし、学校が長期休みの日は学校がある日に比べ、朝食を食べない子どもの割合が約2倍に増えていました。長期休み中に朝食を抜くとそれが習慣化され、牛乳・乳製品摂取からも離れてしまう可能性が考えられます。それにより、成長期に必要なカルシウム等の栄養素摂取不足につながることも懸念されます。学校が長期休み中の食生活については、食育の視点で家庭と学校が連携し、取組みを行う必要性が浮き彫りになりました。

 また震災後、食べなくなった食品がある保護者は、東北地方が九州地方の約2倍に上りました。さらに震災後、食生活の変化が1年以上継続して変化した子どもが、東北地方、九州地方ともに約6割、その内4割が、現在(2016年時点)も継続した状態にありました。この割合は居住地域に関わらず、震災が子どもの食事内容に長期的に影響を与えていることを示しています。

 以上のことから、保護者への食育アプローチの効果的なあり方として、ひとつは、食事が健康に与える長期的な効果について考える機会を提供することが考えられます。もうひとつは、学校と連携した取り組みを行い、学校から食育情報を発信されることが考えられます。

-「あたらしいミルクの研究」2017 年度 -

一般社団法人Jミルクと「乳の学術連合」(牛乳乳製品健康科学会議/乳の社会文化ネットワーク/牛乳食育研究会の三つの研究会で構成される学術組織)は、「乳の学術連合」で毎年度実施している乳に関する学術研究の中から、特に優れていると評価されたものを、「あたらしいミルクの研究リポート」として作成しています。

本研究リポートは、対象となる学術研究を領域の異なる研究者や専門家含め、牛乳乳製品や酪農乳業に関心のある全ての皆様に、わかりやすく要約したものになります。
なお、研究リポートに掲載されている研究内容詳細を確認する場合は、乳の学術連合公式webサイト内「学術連合の研究データベース」より研究報告書のPDFをダウンロードして閲覧可能です。あわせてご利用ください。
 

2018年5月22日

震災後の牛乳・乳製品摂取から効果的な食育のあり方を考える

代表研究者
 東北大学大学院医学系研究科 :佐藤ゆき
共同研究者
 佐賀大学医学部 :鈴木智恵子
 仙台市(管理栄養士) :鴫原美智子

- 「あたらしいミルクの研究」2017 年度 -

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研究報告書は乳の学術連合のサイトに掲載しています

研究の詳細は、こちらをご覧ください。

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我が国における牛乳乳製品の消費の維持・拡大及び酪農乳業と生活者との信頼関係の強化を図っていく観点から、牛乳乳製品の価値向上に繋がる多種多様な情報を「伝わり易く解かり易い表現」として開発し、業界関係者及び生活者に提供することを目的とした健康科学分野・社会文化分野・食育分野の専門家で構成する組織の連合体です。

乳の学術連合 

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