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牛乳百科事典トップ > ●食育アドベンチャー親子教室(静岡) スポーツと食育をつなぐ試み
Issued 2005/04/28

●食育アドベンチャー親子教室(静岡)
スポーツと食育をつなぐ試み

食の大切さを、どうやって子どもたちに伝えるのか――。
この素朴な疑問に対して、古旗照美さん(管理栄養士/健康運動指導士)の出した答えは、シンプルで力強い。
「机上の理論をかざしても届かない。でも、子どもって、体を使って覚えたことや楽しかったことは絶対忘れないんです」
作って食べる、学ぶ、体を動かす――そのすべてがひとつになった古旗さんの「食育アドベンチャー親子教室」。
スポーツと食をつなぐ食育の現場は、笑顔と歓声に満ちあふれていた。

大人になってからでは遅すぎる

 スポーツ栄養の指導者として、これまでプロ野球やJリーグ、競泳など、さまざまなアスリートの栄養サポートに携わってきた古旗さん。フリーで活動する今もそれは変わらないが、ここ数年はとりわけ子どもたちの食育に力を入れてきた。
「大人に食事のことをあれこれ言っても、なかなか変わらないんです。それに、あと何年プロを続けていられるかといった頃になってはじめて、食の大切さに気づく選手も多い。そうなってからではもう遅いんですよね(笑)」
 近年スポーツの世界では、プロアマを問わずアスリートの若年化が進んでいる。十代にして脚光を浴びる選手たちは、一方で、食生活にさまざまな問題を抱えていることが少なくないと古旗さんは言う。
「たとえばインスタント食品ばかり。若いからもっているとしか言いようがないですね。体が資本のスポーツ選手なのに食への意識はまだまだ低い、というより知らなさすぎる。結局そういうことって、子どものうちから意識づけしていかないとダメだと思うんです」
 食事の自己管理能力――その大切さを子どもたちに伝えるために古旗さんが考えだしたのが、食育とスポーツを組み合わせた今回のイベントだ。
「子どもはとにかく体を動かすのが好きです。そうやって覚えたことはどんどん身につく。人の興味や能力を最大限に引き出すうえで、楽しむことに勝るものはないんだなって実感しています」

否定しない食育

 1月23日(日)。静岡駅にほど近い静岡ガスのショールームで開催された「食育アドベンチャー親子教室」。参加者は幼稚園から小学校5年生までの子どもとその親が9組、計20人。少人数の理由は、スペースの問題以上に、古旗さんの体温を参加者全員に行き渡らせるためでもあるようだ。
「旬というのは、その食べ物が一番おいしくて栄養価が高い、おまけに値段も安い時期を言います。じゃあ、イチゴの旬はいつでしょう――イチ・ゴだから1月から5月。みんな、覚えたかなぁ?」「包丁を使うとき、包丁を持ってない方の手は必ず『猫ちゃんの手』。忘れないでね」
 そんなひと言ひと言に、子どもたちが笑顔でうなずく。調理実習中は、テーブルを回りながら参加者1人ひとりに声をかける。必要であれば手を添える。言葉にすると簡単だが、実際、古旗さんと調理スタッフの動きはめまぐるしく休む暇がない。
 調理実習後、親子で片づけを済ませた後は、15分ほどの食育セミナー。古旗さんは、体と栄養素の関係を「プロレッド」「カーボイエロー」「ビタグリーン」という3色のオリジナルキャラクターを用いながら説明する。
「黄色と赤と緑、この3色をバランスよく食べること。色がきれいな食事は、体にもいいんです。それから大きくなりたい人は牛乳も忘れずに。もし牛乳が苦手なら、ヨーグルトでもいいからね」
 古旗さんの食育には否定がない。「あれはダメ、これはダメ」という代わりに、「これが嫌いならこれを」「これを食べるならこれも一緒に」というスタンスだ。
 そして、参加した保護者にこう呼びかけることも忘れない。
「食事の内容は大事。でも一番大切なのは、親子揃って楽しく食べることです。どうしても忙しいなら、せめて最初の10分だけでも一緒にいてあげてください
調理実習の風景。古旗さんの指導は子どものなかに体ごと飛び込むのが信条だ
古旗さんが食育指導で用いるキャラクター「ニュートリオ」。左から「プロレッド」「カーボイエロー」「ビタグリーン」。かわいくて分かりやすいと、子どもたちにも評判だ

子どもの夢中を引き出すしくみ

 あいにくの天候により急きょ、会場3Fの会議室で行われることになった「食育ミニ運動会(スポーツ食育)」。本来であれば隣接する運動場で行われるところだが、屋内でもテニスコート1面ほどのスペースがあれば充分間に合うのが、この運動会のいいところだ。
 まずは、3チームに分かれた参加者(親子)に対し、古旗さんから「ショートケーキには、スティックシュガーでおよそ何本分の砂糖が入っているでしょうか?」といった問題が出される。正解の「6本」を答えるだけならただのクイズだが、スポーツ食育では、そこにボール競技や縄跳び、かけっこを絡めてゲーム性を持たせることにより、誰もが楽しめる構成となっている。
 参加する子どもの年齢層が高いときには、成長期の体づくりに欠かせない「骨とカルシウム」に関する問題も出されるそうだ。 知力と同時に、体力とチームワークを要求されるゲーム形式の運動会。もっとも正解が多かったチームには賞品も出るとあって、子どもはもちろん親たちも必死だ。
 古旗さんは言う。
「スポーツ食育の良い点は、いわゆる『スポ根』のノリにはついていけない、ちょっと運動が苦手という方にも満足してもらえるところです。本来、子どもたちは、体を動かすのが嫌いなわけじゃない。要するに楽しければ参加するものなんですよね」 これまでに古旗さんは、プールを使った『水中食育』という食育指導にも取り組んできた。
「クイズの答え(パウチされたシート)がプールの底に沈んでいるので、子どもたちはそれを潜って取らないといけない。それまで水を怖がっていた子どもが、これですっと潜れてしまうから不思議です。楽しいことには興味を持つし、凄い能力を発揮する――それが子どもなんですね」
「食育ミニ運動会」の模様。体を使ったゲームのなかに、栄養の知識がたくみに盛り込まれている。
当日のメニュー。右手前から、牛乳をふんだんに使った「チンゲン菜のクリームスープ」、緑黄色野菜たっぷりの「3色ハンバーグ」、ご飯、デザートの「フルーツ白玉」。このほかに、地元静岡の名産・桜えびをパンに乗せてこんがりと焼いたおやつも

Profile
今回の食育イベントを主催した、古旗照美さん。現在はフリーの立場でスポーツ選手への栄養サポートや、ジュニア層の食育指導にあたる。ご本人も、高校時代にはバスケットボールで全国準優勝したほどのスポーツウーマン。2003年には地元の大手弁当チェーン企業と国体選手用の「スポーツ弁当」を開発・販売し、静岡県ニュービジネス大賞を受賞。その他、地域に根ざした食育コンクール2003特別賞受賞、静岡県ホームページグランプリ2003中日賞受賞
http://www.geocities.jp/kobataterumi/index.html