乳和食のすすめ Part1 これからは、おいしい減塩を!

1.和食の長所と欠点

和食は私たちの食生活の基本

和食とは、「主食」(ごはん)と「副食」(おかず)の組み合わせを基本とした、日本人の基本的な食事スタイルのこと。副食をさらに「主菜」と「副菜」に分け、これに汁物を加えて、主菜1 品・副菜2 品の”一汁三菜”が理想とされています。
素材をだし・しょうゆ・みそなどで調理・味付けする和食は、概して油脂類が少なめで摂取エネルギー量を抑えることができる上、多彩な副菜からビタミン、ミネラル、食物繊維なども多く摂れるのが特徴です。色とりどりの食材で栄養バランスにも優れ、健康食として世界中から注目されています。 

ただし、和食にも欠点があります

しかし、そんな和食にも欠点がないわけで はありません。和食の定番メニューであるみそ 汁や、お新香、梅干し、佃煮、塩ざけ、たらこ、干物—など、白いごはんに合うのは、食塩の多いおかずがいっぱい。また、冷奴やお刺身にもしょうゆをかけ、和食のごちそう「お寿司」のすし飯も意外と食塩の量が多くなります。
また、日本の土壌には、もともとカルシウムなどのミネラルが少ないともいわれており、意識して摂らないと、どうしてもカルシウムが不 足しがちになってしまいます。


2.食塩の過剰摂取が招く、高血圧

食塩を摂りすぎると、血液量が増え、血管壁に高い圧力が

ナトリウム※1は、人間の生命維持に不可欠なミネラルのひとつです。しかし、過剰に摂取すると、体にさまざまな弊害を及ぼします。その代表が高血圧です。
食塩を過剰に摂取し、血液中のナトリウム量が増えると、血液の浸透圧を一定に保とうとして血液中の水分量が増えます。塩辛いものを食べるとのどが渇くのは、このためです。その結果、血液の量が増えて血管壁にかかる抵抗が高くなり、血圧が上がります。
主な血圧測定として診察室血圧(医療機関での測定値)と家庭血圧があり、それぞれで分類が異なります(図①参照)※2。

※1ナトリウムは食塩に含まれる成分で、ナトリウム量=塩分量(食塩相当量)ではありません。次の換算式
「ナトリウム量(mg)×2.54÷1000=塩分量(g)」で求められます。
※2 高血圧の診断では家庭血圧が優先されます。



日本人の約4,300万人が高血圧です

高血圧は生活習慣病の中でも最も多い疾患で、推計では、我が国の約4,300万人、人口の約3分の1が高血圧といわれています。下の図②でも分かるように、50歳代に入ると急激に増え、50歳以上の2人に1人以上が高血圧です。
また、高血圧は世界的にも大きな問題で、WHOによる「世界保健統計」の報告でも、世界中の成人男性の約3.4人に1人、成人女性の約4.0人に1人が高血圧です。
ところが、約50年前の研究論文では、当時のアラスカ・エスキモーの食塩摂取量は2-3gくらいで、高血圧はほとんどないと記されています。
これからも分かるように、高血圧と食塩摂取量には密接な関係があり、高血圧を予防・改善するには、食塩の制限が不可欠です。
しかも、食塩を大量に摂取すると正常血圧の人でも血圧が上がりますが、高血圧の人はより上がりやすいので注意が必要です。


 

高血圧は動脈硬化との悪循環の始まり

高血圧とは、心臓から送り出された血液がすごいスピードで全身の血管を流れながら、常に血管壁に高い圧力をかけ続けているということです。
この状態が続いていれば、ホースの中を高圧で水が流れ続け、ホースの内側がやがて傷んでもろくなるように、血管壁もダメージを受けて傷つきやすくなります。すると、その傷から血管の内壁にコレステロールなどが入り込み、動脈硬化が進行します。
こうして気づかないうちに動脈硬化が進行すれば、血管壁は柔軟性を失って厚くかたくなってきます。そのぶん血管の内腔が狭くなるため、血液が流れるためにますます高い圧力がかかり、高血圧が悪化するという悪循環に陥ります。
そして、高い圧力がかかり続けて傷ついた血管壁の一部がやがてはがれ、その破片が血液に乗って流れて行き、心臓の血管で詰まれば心筋梗塞を、脳の血管で詰まれば脳梗塞を起こす原因になります。  

            

高血圧こそ、恐ろしいサイレントキラー

高血圧が恐ろしいのは、“サイレントキラー(物言わぬ殺人者)といわれるように、静かに進行し悪化していくためです。ほとんど自覚症状がないため、「やや高めの血圧は年のせい」などと思っている人がいますが、そうしてタカをくくっているうちに静かに進行し、怖い病気を合併するのが高血圧なのです。
高血圧が引き起こす3大疾病は、「脳卒中」「心臓病」「腎臓病」ですが、他にも大動脈瘤や足の末梢血管の血管障害による壊疽など、さまざまな恐ろしい病気につながります。
また、高血圧と糖尿病は実は深いつながりがあり、どちらも動脈硬化を促進する大きな要因で、表裏一体で悪化しやすい病気です。日本には、サイレントキラーの高血圧と糖尿病を併発している中高年がたくさんいますが、動脈硬化の進行がますます早まり、最終的に、脳卒中や心筋梗塞・心不全・腎不全といった命に関わる病気が発症してからでは、取り返しがつきません。

循環器病で死亡するリスクが上がる

実際に、高血圧から脳卒中や心筋梗塞、くも膜下出血、狭心症、心不全といった循環器病を起こし、死に至る相対リスクは血圧が高いほど跳ね上がります。下に挙げた図⑤は、30-64歳の男性という、まさに働き盛りの人々の血圧と循環器疾患による死亡相対リスクです。収縮期血圧が140を超え、高血圧と診断されるようになるだけで、死亡相対リスクは4倍になり、160を超えれば10倍に、180を超えてしまうと18倍になってしまいます。
このように、高血圧は循環器病の最大の危険因子です。高血圧が悪化する前に、減塩して血圧管理をする重要性が再認識されます。
また、最近の研究では、食塩が血圧とは別に心臓や血管に悪影響を及ぼすことも判明。食塩の摂り過ぎ自体が脳卒中や心不全の危険を高めることが分かってきたのです。つまり、同じ血圧でも、食塩摂取が多い人の方がこれらの病気になりやすいというわけです。


CKD (慢性腎臓病)から人工透析にならないためにも

さらに、食塩を摂り過ぎると、余分なナトリウムを体外に排せつする腎臓にも大きな負担がかかります。また、高血圧や糖尿病が毛細血管を障害し、腎機能の低下を促進します。その結果生じるのが、慢性的に尿タンパクが出たり、老廃物が排出されなくなったりする「CKD(慢性腎臓病)」です。CKDになると、血圧がさらに上がりやすくなり、腎臓病も高血圧も同時に悪化していく悪循環になります。
「CKDは新しい国民病」といわれ、成人人口の約13%、1,330万人は該当すると推計されています。悪化すれば、「ESKD(末期腎不全)」に至り、透析や移植が必要になります。2013年時点で日本の維持透析患者数は約30万人。腎臓は一度機能が低下すると回復しにくい臓器です。透析にならないためにも、減塩が重要課題となっています。

CKDの定綾
1 原異常、画像診断、血連、病理で腎障害の存在が明らかであること。特に0.15g/gCr以上のタンパク尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)の存在が重要
2 GFR<60ml/分/l.73㎡
1 2 のいずれか、または両方が3ヵ月以上持続する場合
日本腎臓学会編「CKD診療ガイド2012」より 


 

3.今、日本人にとって減塩は急務の課題

高血圧の予防にも改善にも減塩が必須

私たち日本人にとって、食塩の摂り過ぎは、高血圧の最も大きな要因のひとつ。平成25年の日本人の1日あたり平均食塩摂取量は、男性が11.1g、女性が9.4g。男女の平均は10.2gで、多くの人が1 日に10g以上の食塩を摂っています(図⑦)。年々徐々に減ってきてはいても、まだまだ食塩の摂取量が多過ぎます。
減塩は、高血圧の予防になるだけでなく、改善にもつながります。個人差はありますが、食塩を1g減らすごとに、収縮期血圧が平均1mmHg下がる効果が期待できます。毎食のわずかな食塩量の違いにもっと敏感になりましょう。
血圧の薬を飲んでいる人にとっても、減塩は非常に重要です。血圧の薬にもさまざまな種類がありますが、食塩が多いと効果が弱くなり、食塩を制限するとよく効くようになる薬がたくさんあります。



滅塩の効果が証明されました

減塩すると実際に血圧が下がることが、すでに多くの研究で証明されています。下の図⑧は、中等度の減塩の降圧効果を調べた介入試験のメタ解析の結果です。ここでは、高血圧患者が1日の食塩摂取量の中央値9.5gから、5.1gに減塩すると、血圧が平均5.0/2.7mmHg下がっています。また、正常血圧者の場合は、食塩摂取量を1日に4.4g減らすと、血圧が2.0/1.0mmHg下がっています。
もちろん、食塩摂取量の変化に対する血圧の反応には個人差がありますが、臨床的には高齢者、肥満者、メタボリックシンドローム患者、糖尿病患者、腎機能障害合併高血圧者などにおいて、減塩の降圧効果が大きいといわれています。




達成しよう! 食塩摂取の目標量

食事摂取基準が示す食塩摂取の目標量は、成人男性が8.0g未満、女性が7.0g未満。男性は約3g、女性は約2gは減らさなければ、現在の食事摂取基準に示された目標値までも届きません。また、日本高血圧学会では1日6g未満を推奨。食塩摂取が非常に少ない地域では高血圧が見られず、加齢の血圧上昇もほとんどないことが分かっています。



循環器病の予防のために、おいしい減塩食をおすすめします

日本高血圧学会減塩委員会委員長
帝京大学福岡医療技術学部 教授前・国立循環器病研究センター 生活習慣病部門長
河野 雄平
 
減塩が大事だということは誰もが知っています。しかし、なかなか実行できないのは、「減塩食は味気ない」という理由からでしょう。“おいしい”と食べられる減塩食の開発がとても大事になっています。国立循環器病研究センターでは、天然だしをしっかり使った「かるしおレシピ」を開発し、多くの方においしいといっていただいています。
そして、今回の「乳和食」は、牛乳をうまく使っておいしさを生み出した料理。おいしさに、簡単さが加わり、家庭でも毎日続けられるアイデア減塩料理です。牛乳を使っていますから、減塩だけでなく、カルシウムやたんぱく質の摂取も期待できます。また、牛乳自体が血圧を下げることや、牛乳の摂取量が多い方がメタボリックシンドロームのリスクが少ない、という調査研究結果も出ています。これらを総合的に捉えても、牛乳を上手に取り入れた乳和食はおすすめできる食事です。
食塩を減らせれば、循環器病はかなり予防できると考えられます。例えば米国による試算では、全国民の1日の食塩摂取量が3g減れば、1年間の心筋梗塞が5-10万人、脳卒中は3-6万人減り、医療費は100-200億ドル少なくなるとされています。食塩摂取が多い日本でも、同様の効果が期待できるでしょう。
 

4.カルシウムの不足と現代人の健康不安

骨粗しょう症・歯周病だけでなく生活習慣病にも影響

カルシウムは、体重の1-2% を占め、体内に最も多く含まれるミネラルです。そのうちの99%は歯と骨に蓄えられ、残り1%が血液や筋肉、神経などに存在して、とても重要な働きをしています。神経の伝達を助けて精神を安定させ、筋肉を収縮させて心臓の鼓動を保ち、細胞分裂や血液凝固のために働いています。
通常、血液中のカルシウム濃度は、常に9-10mg/dlとなるように調整されていますが、不足すると、骨からカルシウムを取り出して、不足分を補います。慢性的に不足が続くと、骨粗しょう症になるだけでなく、歯槽骨まで弱くなって歯周病になり、その歯周病菌が全身に回って、糖尿病を進行させることも指摘されています。また、骨から溶け出したカルシウムが血管壁などに付着して、動脈硬化の原因になったり、細胞内のカルシウム濃度が上がって高血圧を招く原因になったりと、多くの生活習慣病の発生にカルシウム不足が関与しています。


 

骨の健康は健康長寿にも直結

骨は、骨からカルシウムが溶け出すことと、骨へカルシウムを沈着させることを繰り返して、古くなった骨の細胞を壊し、新しい骨の細胞を育てています。
成長期は、溶け出して古い骨を壊すより、カルシウムで新しい骨を作る働きのほうが活発なので、骨の量が増え、体が大きくなりますが、高齢になるほど、この関係が逆転しやすく骨がもろくなります。その加齢現象を遅らせて、丈夫な骨でいつまでも転倒骨折のリスクの少ない、健康長寿を実現するためにも、牛乳の豊富なカルシウムを上手に摂ることが大切です。



5.和食の欠点をみごとに補う乳和食

おいしくて、カンタンだから続けられます

乳和食の最大のメリットは、無理なく、おいしく減塩ができ、カルシウムがしっかり摂れることです。特に牛乳のカルシウムは、他の食品と比べて吸収率が高く(牛乳:約40%、小魚:約33%、野菜:約19%)、牛乳は、「吸収率の低い栄養素」といわれるカルシウムを効率よく摂る最良の食品です。
牛乳のコクと旨味だけをかしこく活用し、牛乳の味やにおいは気にならない乳和食のレシピなら、牛乳が苦手な人でも毎日続けられます。
やっぱり和食がおいしいと感じる日本人にとって、その和食の欠点を補うまったく新しい発想の「和食」が「乳和食」です。まさに「New Washoku」と呼ぶにふさわしい、健康づくりの食習慣です。 




現代型栄養失調「貧食」にも、乳和食を

現代の食生活には、2つの栄養失調になる落とし穴があると指摘されています。
ひとつは、「飽食時代の栄養失調」といわれている食生活です。低炭水化物、高たんぱく、高脂肪で、エネルギーは足りていても、ビタミンやミネラルが不足して、摂取した栄養を体が利用できずに、栄養失調になっています。
食事から摂取した三大栄養素(エネルギー産生栄養素)を体の中で分解、吸収し、それを燃やしてエネルギーに変えるには、副栄養素といわれるビタミンやミネラルが不可欠です。しかもミネラルはお互いがバランスを取って働くため、どれかひとつだけを多く摂っても他のミネラルとのバランスが悪ければ、うまく機能しません。
この意味で、三大栄養素の他に12種類のビタミンと8種類のミネラルが摂取できる牛乳を使った乳和食こそ、栄養バランスを整え、エネルギーの利用効率を高める食習慣なのです。
また、もうひとつの栄養失調が、脂質を怖がるあまりの偏ったヘルシー志向や、行き過ぎのメタボ対策で、動物性脂質や動物性たんぱく質が不足する「貧食」です。脳は大半が動物性脂質で作られている臓器で、不足すると認知症やうつなどにつながる可能性も考えられます。
また、動物性たんぱく質が不足すると、赤血球がうまく作られず、貧血の危険が高まります。若い人から高齢者まで、あらゆる世代でこの「貧食」が広がっている傾向が見られます。牛乳を使った乳和食なら、こんな栄養失調に陥ることもありません
2015年03月30日