酪農乳業の現状

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酪農乳業は ミルクを通して、
日本の食卓を支えています。

乳牛から搾ったままの乳である生乳は、加熱・分離・発酵などの処理・加工によって、牛乳や乳飲料、生クリーム、チーズ、バターなど幅広い製品へと姿を変えます。
かつては飲用牛乳向けが主流でしたが、食の洋風化やライフスタイルの変化を背景に、現在は生クリームやチーズなど乳製品向けの需要が着実に増加しています。
牛乳・乳製品はカルシウムやたんぱく質、脂質、ビタミン類など、健康に欠かせない栄養素を効率よく摂取できる食品です。家庭での飲用にとどまらず、外食産業や加工食品、菓子など多彩な場面で利用され、私たちの食生活の豊かさを支えています。

食生活を支える主な牛乳乳製品の図
国内需要に占める国産比率(※2024年度)と日本における生乳の用途別処理量(※2024年度)の図 資料:(独)農畜産業振興機構「交付対象事業者別の販売生乳数量等」/農林水産省「食料需給表」
カルシウムを多く含む食品と、1食分中の含有量の比較 資料:文部科学省 「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より算出

酪農家や乳業工場の数が減少しています。

さまざまな牛乳・乳製品の需要が広がる一方で、日本全体の酪農家戸数と乳業工場数は年々減少しており、「数は減るが規模は大きくなる」規模拡大が時代とともに進んでいます。 特に北海道の酪農では、設備投資の進展や作業の機械化・省力化を進めた大規模経営が増え、生産量を維持・拡大しています。
一方、都府県では酪農家の減少や飼料コストの高騰などにより生産量が縮小。地域や酪農家によって、生産量や飼養頭数の差が拡大しています。 乳業工場も再編が進み、飲用牛乳向け工場では統廃合が加速。少数の大型工場で広域の処理を担うことが増えています。
また、チーズやバターなど乳製品工場は北海道を中心に集約化が進み、役割分担が進行しています。 こうした大規模化・少数精鋭化は、生産効率の向上やコスト低減、安定した出荷体制の構築といったメリットをもたらしています。
一方で、個体ごとの飼養管理や環境の維持が難しく、また大規模な自然災害や家畜伝染病の発生、設備トラブルが発生した場合の影響範囲が広くなるリスクを抱えています。

乳用牛飼養頭数 1985年2111万頭 2024年1380万頭 -34%減 資料:農林水産省「畜産統計」
1戸あたり飼養頭数 1985年25.6頭 2024年110頭 +329%増 資料:農林水産省「畜産統計」
1頭当たりの乳量 1985年5640kg 2024年8957kg +162%増 資料:農林水産省「畜産統計」「牛乳乳製品統計」より推計
1日当たり生乳処理量規模別工場処理場数(全国) 飲用牛乳等を主とする工場数 総数331(※2024年)で減少(1985年は897) 乳製品工場数 総数152(※2024年)で増加(1985年は88) 資料:農林水産省「牛乳乳製品統計」

その背景は、ミルクを取り巻く環境の変化です。

酪農家の高齢化・後継者不足、設備投資負担の高さ、労働時間の長さなど、省力化・効率化を進めざるを得ない多くの課題があります。事業者の規模拡大が進む一方、小規模農家の離農が加速し、地域によっては継続が困難な状況も生まれています。

新規就農・経営離脱状況の図 資料:農林水産省「畜産・酪農をめぐる情勢」
新規就農・経営離脱の差の図 資料:農林水産省「畜産・酪農をめぐる情勢」
近年の飼料自給率の推移(1985~2023)の図 資料:農林水産省「食料需給表」

生産コストの増大も、現場を悩ませる大きな課題です。飼料には、牧草などを原料とする繊維質の多い「粗飼料」と、穀物などを原料とする炭水化物・たんぱく質の多い「濃厚飼料」があり、双方をバランスよく与える必要があります。日本の粗飼料自給率が8割ほどであるのに対して、濃厚飼料自給率は1割強であり、ほとんどを輸入に依存しています。そのため、近年の世界的な穀物価格上昇や物流混乱、円安などを背景に飼料価格が高騰し、牛の飼養コスト=生乳生産コストの上昇につながっています。エネルギー価格の上昇は、飼育だけでなく輸送や加工のコストにも影響しています。

上昇する生乳の生産コストの図 2020年度全算入生産費9,468円 2024年度全算入生産費11,157円(円/実搾乳量100kg)資料:農林水産省「畜産物生産費統計」

ミルクを届け続けるために、
耳を傾けるべき声があります。

生産基盤の縮小傾向が続いている中で、消費者に安心して牛乳・乳製品を届けつづけるためには、サプライチェーン全体の協力が不可欠です。生産者、乳業メーカー、流通、行政、そして消費者を含むあらゆる関係者が課題を共有し、持続可能な仕組みをつくり上げていく必要があります。 また、食の価値観が多様化する今、業界として「なぜ牛乳・乳製品が必要なのか」「どのように安全性を確保しているか」「どのように社会的課題に対応しているか」といった情報を丁寧に発信し、社会の声に耳を傾けながら信頼を積み重ねていく姿勢が求められています。

消費者のイメージ図
酪農家のイメージ図
小売業のイメージ図
乳業メーカーのイメージ図

日本の酪農乳業を次世代につないでいくために。考えることから始めよう。

日本の酪農乳業を担っていく将来世代に、「成長し、強固で、社会の要求に応えられる持続可能な日本の酪農乳業」を受け渡す。そのために J ミルクは、酪農乳業関係者が目指すべき方向性を示す「戦略ビジョン」を策定し、特に重点的に取り組むべき課題(マテリアリティ)を定めました。