乳和食について

乳和食は 味噌や醤油などの伝統的調味料に、 「コク味」や「旨味」を有している牛乳(成分無調整牛乳)を組み合わせることで、利用されている食材本来の風味や特徴を損なわずに食塩やだしを減らし、美味しく和食を食べてもらう調理法のことを指します。ここでは乳和食の具体的なメリットや調理法をご紹介します。

そもそも牛乳にはこんな特徴が

牛乳は、筋肉を作り活発な内臓を保つためのタンパク質、骨や歯をつくるカルシウムやビタミンも豊富に含まれる優れた食品です。最近の調査によると、こんな効果もあることがわかっています。

高血圧を予防

牛乳に豊富なカルシウムやカリウムには、血圧を上昇させる血中ナトリウムの作用を妨げる働きがあることが分かっています。

メタボのリスク低減

男女ともに牛乳・乳製品の摂取量の多い方が、メタボリックシンドロームのリスクが低いことが分かっています。

健康寿命が
長くなる

牛乳を摂取している人は血清アルブミン値が下がりにくく、牛乳を毎日飲むグループの方が生存率が高いことが判明しています。

骨や歯、筋肉の
健康を保つ

丈夫な骨でいつまでも転倒骨折のリスクの少ない健康長寿を実現するためにも、牛乳の豊富なカルシウムを上手に摂ることが大切です。

血糖値の上昇
がゆるやかに

糖尿病を防ぐには、食後血糖値を上げない食事法が重要ですが、牛乳は食後の血糖値の上昇が穏やかな低GI食品です。

和食の弱点を牛乳がカバー

和食の弱点を牛乳がカバー

日本人が好んで食べる伝統的な食事である和食は、米飯を主食に、主菜や副菜に魚介類や野菜類を多く使い、
脂肪分も少ないことから、健康的な食事と考えられていますが、実は食塩の摂取量が増えてしまうという弱点があります。
また、カルシウムも不足しがちになってしまいます。
その弱点を埋めるのが牛乳の持つ「カルシウム」と「旨味」や「コク」なのです。

乳和食とは、新しいスタイルの和食です

POINT1 おいしさ

見た目も、味も
「和食」の美味しさをそのまま

牛乳を使っても料理が白くならず、においや味を感じないので、和食として、違和感なく毎日の食事に取り入れられます。減塩料理は味気ないイメージがありますが、乳和食は牛乳の持つコクや旨味のおかげで物足りなさを感じません。
牛乳をそのまま飲むことが苦手な方にもおすすめです。

POINT2 あたらしさ

⽜乳を和⾷の「だし」として使う、
画期的で簡単な調理法

⽜乳や⽜乳から作るホエイ(乳清)を、和⾷の基本である「だし」や「⽔」の代わりに使ったり、みそや塩麹などの調味料と合わせることで、料理が深みのある味に。⽜乳をあえて煮⽴てて分離させるなど乳和⾷ならではの調理法は⼿間なく短時間ででき上がります。

POINT3 やさしさ

すぐれた減塩効果と
⽜乳に含まれる豊富な栄養を摂取

⽇本⼈の⾷⽣活の課題として「塩分過多」や「カルシウム不⾜」があげられますが、乳和⾷なら塩分の⾼い調味料を減らして⽜乳をプラスすることでしっかりとした味わいに仕上がります。
すべての年代に必要な⽜乳に含まれる様々な栄養素を⼿軽に摂取することができ、栄養バランスを整えます。

乳和食での牛乳の使い方

乳和食での牛乳の使い方

乳和食のレシピはこちら

「乳和食」の意義

日本人が好んで食べる伝統的な食事である和食は、米飯を主食に、主菜や副菜に魚介類や野菜類を多く使い、脂肪分も少ないことから、健康的な食事と考えられています。また、和食は、醤油や味噌などの保存性の高い発酵調味料が多く使われており、その結果、現代日本人にとっては食塩が多いことも特徴です。
一方、日本人の健康にとって、極めて深刻な問題である「高血圧」の大きな原因として食塩の過剰摂取があり、このため、高血圧予防、高血圧症の治療の点から、減塩食が奨励されています。
しかし、外食や弁当・惣菜などの調理済み食品への依存がますます強まっている状況の中で、食塩の利用と摂取はなかなか減少していません。
そこで、味噌や醤油などの伝統的調味料に「コク味」や「旨味」を有している牛乳(「コク味」や「旨味」を確保するためには、乳脂肪の役割が重要であることから、「成分無調整牛乳」を利用することが必要)を組み合わせることで、食材本来の風味や特徴を損なわずに食塩や出汁を減らし、美味しく和食を食べてもらう調理法として、永年、乳を利用した料理の研究を行ってきた料理家の小山浩子先生により提案されたのが「乳和食」です。
「乳和食」は、日本人のカルシウム不足の改善や、特に高齢者で不足しがちな動物性蛋白質を補うことができるなどのメリットもあります。
以上のような「乳和食」の意義が評価され、Jミルクは日本栄養士会や日本高血圧協会、日本高血圧学会減塩委員会と連携し、2013年から5年間乳和食指導者育成を推進してきました。
活動開始から10年経過した2023年現在、医療・栄養関係者、自治体、学校、酪農乳業関係者など様々な業種の「乳和食パートナー」の取り組みにより「乳和食」が全国に広がっています。

乳和食の定義

味噌や醤油などの伝統的調味料に、「コク味」や「旨味」を有している牛乳(成分無調整牛乳)を組み合わせることで、利用されている食材本来の風味や特徴を損なわずに食塩やだしを減らし、美味しく和食を食べてもらう調理法です。

「乳和食」の栄養的効能

最も重要な栄養的効能は、食塩過剰摂取の防止です。またこれに加え、日本人のカルシウム不足の改善や、特に高齢者で不足しがちな動物性蛋白質を補うこともできます。

進化しつづける乳和食

乳和食の開発者である小山浩子さんは、長年牛乳に向きあう中で、和食に牛乳をどのように使えば多くの人の生活に受け入れられるのか研究しつづけています。
乳和食の活動が始まった2013年当初から現在まで、乳和食は味にも見た目にも作りやすさにもこだわり、和食を好む日本人の生活に寄り添う形でバージョンアップしています。
乳和食のレシピ開発の詳しいストーリーは乳和食レシピができるまでをご覧ください。

  豚汁(2013年)
牛乳を使うことで通常よりみその量を減らしたレシピ。だしと牛乳で具材を煮込み、最後にみそを溶き入れます。
  豚汁(2018年)
みその量を減らし同量の牛乳と合わせた「ミルクみそ」を最後に加えたレシピ。ミルク感のない仕上がりになります。

新しい減塩指導法として

(公社)日本栄養士会名嘗会長 神奈川県立保健福祉大学学長 中村丁次
 
高血圧、動脈硬化、虚血性心疾患、脳梗塞、さらに胃がん等の予防に減塩が有効であることは多くの研究で明らかにされています。WHO は、食塩を5g 未満/日の減塩運動を世界中で展開しようと呼びかけ、日本動脈硬化学会も動脈硬化予防に食塩を6g 未満/日にすることをすすめています。また、2015 年度「日本人の食事摂取基準」では、食塩摂取目標量が成人男性は1.0g、女性は0.5gさらに引き下げられ、食塩の平均摂取量と比較すると、男性は約3g、女性は約2gの減塩が必要です。日本型の食事(和食)は、食塩の摂取量を減少させれば、世界で最も栄養のバランスがとれた健康食であり、生活習慣病の予防に有効であることが分かっています。ところが、減塩生活を確実に、しかも長期にわたって実践することは簡単なことではありません。つまり、中断する場合が多いのです。
 
我が国は、今日まで減塩運動を積極的に展開し、脳卒中や胃がんの死亡率の減少に寄与してきました。ところが、この減塩運動も近年ではやや停滞傾向にあり、思ったほど食塩の摂取量が減少していません。理由として、減塩食にするとおいしくなくなることや外食や加工食品の摂取頻度が高くなったことが挙げられています。現在の日本人の食習慣では、これ以上の減塩は無理だという意見もあります。そこで、このような状況を打破するには、おいしい減塩食を開発し、普及させることが必要になります。
 
一方、近年、牛乳・乳製品に血圧の上昇抑制効果や食後血糖の上昇抑制効果があることが明らかになってきました。以前から、牛乳・乳製品にはたんぱく質やビタミン、ミネラルが総合的に含まれ、栄養補給には優れた食品として認められています。近年の研究成果により生活習慣病の予防にも有効な食品であることが分かったのです。そこで、和食が持つ問題点を解決する方法として牛乳・乳製品との組み合わせが考えられます。しかも、調理の工夫により、意外にも、おいしい料理ができあがり、おいしい減塩の和食が可能になったのです。管理栄養士、栄養士が、牛乳・乳製品を活用した、おいしい乳和食をさらに開発、指導していくことが大切になります。
 

おいしい減塩 乳和食のすすめ

 「人生100年」の時代となりました。この長い人生を健康で過ごすために日々の食生活を見直すなど、できる範囲で継続可能な工夫や努力が必要になってきています。しかし、健康に気をつけて料理を作っているのに血圧や血糖値、コレステロール値などの異常に悩まされている人は多いと思います。また、骨粗鬆症や筋肉量が減って筋力が低下するサルコペニア、たんぱく質などの不足から心身の機能低下を招く新型栄養失調などを心配されている人も少なくないでしょう。さらに、食塩の摂りすぎは高血圧をはじめ、生活習慣病を促進し、脳卒中や心筋梗塞などを招く誘因にもなります。たんぱく質やカルシウムの慢性的な摂取不足は筋力低下、免疫機能低下、骨折などの要因となり将来介護が必要となるリスクを高めるのです。
 忙しい現代では、コンビニ弁当や即席麺などで食事を済ませる人が多くなってきています。老若男女問わず単身者が増えているなかで、料理の手間を省こうとするのは自然な選択なのかもしれません。しかしこのような食事の簡素化により、栄養の偏りや生活習慣病に悩まされる人が増えてきているのも事実です。多くの人はヘルシーでおいしい和食を家庭で食べたいと願っていたり、外食であっても和食を選んだり、みそ汁を飲むとどこかホッとするなど、体が栄養バランスの整った、やさしい和食を欲しているのではないかと思います。
 最近では高齢になっても医療・介護に頼らず自立して生活できる"健康寿命"が重視されています。その健康寿命の延伸に、大きな役割を持つとして注目されているのが「牛乳」です。65歳以上の人口が21%を占める超高齢化社会の日本。これからさらに、正しい栄養教育と食事指導が重要になることでしょう。
 家族や自分自身の食生活、健康を見直すため。生活習慣病の予防や病気の改善、健康維持のため。和食の良さを再確認するため。いろいろなかたちがあると思いますが、おおげさにいうと、食事はその人の生きる姿勢につながっていると思います。食事を見直す、栄養を意識する、そのひとつの手段として、ぜひ乳和食を食卓に取り入れてみてください。

小山浩子(料理家、管理栄養士)

 大手食品メーカー勤務を経て2003年フリーに。料理教室の講師やコーディネート、メニュー開発、栄養コラム執筆、NHKをはじめ健康番組への出演等幅広く活動。料理家としてのキャリアは25年以上。これまで指導した生徒は5万人以上に及ぶ。著作も多数あり乳和食料理本で2014年グルマン世界料理本大賞「イノベイティブ部門世界第2位」、2019年同大賞「チーズ&ミルク部門世界第2位」を受賞。健康と作りやすさに配慮したオリジナルレシピにファンも多い。2015年1月、日本高血圧協会理事に就任。メディアで話題の乳和食の開発者でもある。

オフィシャルホームページ
http://koyama165.com/別ウィンドウ表示