第35回 牛乳の自動販売機 -牧場から食卓へ - 2

連載コラム ミルクの国の食だより

コラム、「ミルクの国の食だより」の第35回をお送りします。
フランスの牛乳の自動販売機、実は「生乳」を買えるんです。

ではさっそく、「ミルクの泉」を初体験!

まずは容器を購入します。
向かって左側の扉内に、牛乳1リットルを注げるガラスびんが入っています。
ガラスびんは1本70サンチーム(約80円)。
殺菌済みで、しかもよく冷えています。
このガラスびんを買わずに、よく洗浄してあれば自分で用意した他の容器でもOKです。
牛乳は1リットルあたり1ユーロ(約113円  2016.6現在)。
フランスのスーパーで販売されている牛乳と比べて安価です。
500mlから購入できます。

利用方法はこちら

購入したい量(1リットルまたは500ml)を選び、1ユーロもしくは50サンチームのコインを投入。
扉を開いてガラスびんを置きます。
 → コインを投入しなければ扉は開かない仕組みです。
再び扉を閉めて、スタートボタンを押します。 
 → ここも扉がきちんと閉まっていないとスタートボタンを押せません。
注ぎ終わるまで待ちます。 
 → 注いでる間は扉が施錠されていて開けることはできません。
注ぎ終わるのを見届け、扉を開けて牛乳の入ったびんをすばやく回収。
びんを回収後、扉が閉じられると自動的に洗浄システムが起動。中は常にクリーンな状態が保たれます。
■殺菌済みのガラスびんを購入して注ぐ。自分で持参した容器でもよい
■500mlか1リットルを選び、コインを投入
■扉を開けて容器を注ぎ口の下にセット
■扉を閉めたらスタートボタンを押す
■ミルクが注がれるさまは、まさに泉のよう
■注ぎたての真っ白な牛乳、うっすらとクリーム層が見える
霧の衣をまとったガラスびんに注がれた牛乳は涼しげで、なんとも美味しそうです。
少し黄みがかったようにも見え、かつ、ほのかに透明感があり、上部にはうっすらとクリーム層らしきものも見えます。
すぐに飲みたい衝動に駆られましたが、マイコップを持参してなくて、さすがに1リットルの牛乳を一気に飲み干すことはできないので、家に帰るまでをしばし我慢。。。

「ミルクの泉」から出てきたのは生乳

実はこの牛乳、フランス語でレ・クリュ(Lait cru)といって、加熱殺菌や成分の調整などをしていない生乳なのです。
生乳は衛生管理が厳しく、自動販売機での販売にあたっては連邦フードチェーン安全庁(AFSCA※)による厳密な規定が設けられています。
厳格に衛生面をコントロールされた農場でのみ生産され、細菌検査はもちろん、輸送方法、温度や清浄などの管理、自動販売機の不具合(扉が開けっ放し、温度が一定ではない、タンクが空等)が生じた際には、直ちに責任者が駆けつけられようアラームも設置されています。
また、生乳はいたみやすいので、搾乳後すぐに冷却、自動販売機内でも4℃に保存され、72時間以内の消費が義務付けられています。
※AFSCA:Agence fédérale pour la sécurité de la chaîne alimentaire
農業及び食品産業が提供するサービスの検査・管理を担当する。食品とその生産・製造工程で使用・添加されるすべての原材料、並びに生産・製造工程それ自体、保管・輸送・取引状況、輸出入、これらすべての活動そのもの、またその活動が行われる場所、等が連邦フードチェーン安全庁の検査及び管理の対象となる。
乳の衛生管理に関する欧州経済共同体指令 http://admi.net/eur/loi/leg_euro/fr_392L0046.html
※このテーマは次回に続きます。お楽しみに。
管理栄養士 吉野綾美
1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。