コラム、「ミルクの国の食だより」の第2回をお送りします。
今回から2回にわたって、「酪農国」フランスでは牛乳、乳製品がどのように売られているのかをご紹介します。

牛乳・乳製品売り場の大きさ

我が家では1週間に一度、郊外の大型スーパーマーケットで買い物をします。
日本とは違った品揃えでフランスの食文化を反映したたくさんの商品を見るのは楽しくもあり、同時にその中からほしいものを探すのは一苦労でもあります。
スーパーマーケットでは、その牛乳・乳製品売り場の規模の大きさに驚かされます。
1列15mほどあるレーンの端から端までヨーグルトが並び、その向かい側のレーンはクリームとバターがぎっしり。
チーズにいたっては1レーンでは足りず2レーン以上を占拠していて、さすが酪農国という印象です。
■左のレーンはクリーム、バター。右はヨーグルトがぎっしり。
■1レーン全部がLL牛乳の棚。
■要冷蔵牛乳の棚。

キャップの色に注目! 乳脂肪の割合が一目でわかります

牛乳は常温保存のものが1レーンを占め、冷蔵保存の牛乳は、その1/4ほどのスペースしかありません。
容器はどちらもプラスティック製が主流。日本の紙容器に比べると色合いや絵柄はシンプルなのですが、キャップの色が赤、青、緑とカラフル。
これは含まれる乳脂肪の割合が一目でわかるように色分けされているのです。
 Lait entiers(レ・アンティエ 全脂乳)-乳脂肪3.5%以上
 Lait demi-écrémés(レ・ドゥミエクレメ 半脱脂乳)-乳脂肪1.5~1.8%
 Lait écrémés(レ・エクレメ 脱脂乳)-乳脂肪0.3%以下
また、各種ビタミンやミネラル等を強化した牛乳でも、キャップの色の区別は乳脂肪の含有量に基づいています。
フランスで飲まれている牛乳の81%*が Lait demi-écrémés(半脱脂乳)です。
■パッケージの色合いもキャップの色にあわせてあります。

殺菌方法は4種類

Lait pasteurisé(レ・パストゥリゼ)
・72~85℃で20秒間加熱殺菌。
・消費期限は冷蔵保存(4℃)で約7日間。
Lait micro filtré(レ・ミクロフィルトレ)
・初めに乳脂肪を分離し、乳脂肪のみ72~85℃、20秒間加熱殺菌。乳脂肪を取り除いた脱脂乳をマイクロフィルターで濾過し細菌を除去した後、乳脂肪と脱脂乳を、製造する牛乳の種類に応じて適切な割合で混ぜ合わせる。
・消費期限は冷蔵保存(4℃)で約15日間。
Lait stérilisé UHT(レ・ステリリゼ・ユ・アッシュ・テ)
・140℃~150℃で2~4秒間加熱滅菌。
・消費期限は常温保存で約90日間。フランスで製造される牛乳の93%*がこの方法をとっています。
Lait stérilisé classique (レ・ステリリゼ・クラシック)
・115℃で15~20分間加熱滅菌。
・消費期限は常温保存で150日間。

選ぶ基準は?

牛乳本来の味にこだわる人は要冷蔵品を、そうでなければ買い置きができて使い勝手のよい常温保存品を購入する人が多いようです。
また、扱っている店は限られていますが殺菌処理をしていないLait cru(レ・クリュ 生乳)も販売されています。生乳で作られるチーズがたくさんあるフランスならではの製品といえます。
■ヤギ乳も並んでいます。
(次回 牛乳の選び方-2に続く)
管理栄養士 吉野綾美
1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。