生産者と消費者を繋ぐ古くて新しい流通システム - 1

連載コラム ミルクの国の食だより

コラム、「ミルクの国の食だより」の第77回をお送りします。新型コロナウイルスの影響で、食品の流通経路に変化の兆しが現れているようです。

コロナウィルス感染対策のため、3月中旬から外出制限令が敷かれていたフランスですが、5月11日より段階的に制限が緩和されることになり、しばらくぶりに開放された公園を訪れると、2ヶ月前とは様変わり。

大気汚染が消え、空気が澄み、このところ続いていた恵みの雨のおかげもあり、手入れされずに伸びた草木が生い茂るがままに生い茂った姿は美しく、気づかないうちに深緑の季節になったことを感じさせてくれました。
  • 通常ならピクニックで賑わう時期に、外出禁止令で2ヶ月間人が立ち入らなかったため、草花でぎっしりと埋め尽くされた広場(2020.5.11撮影)

「コロナ危機の間にリヨンで地元食品を食べる」

外出制限中、困ったことといえば新鮮な野菜や果物が入手しづらくなったことです。

旬のアスパラガスやイチゴを子供たちに食べさせたくても、マルシェ(野外市場)は閉鎖。日常の行動範囲が半径1 km以内を保たなければならなかったこともあり、近所のスーパーでの買い物を余儀なくされました。
しかし、スーパーに並んでいるイチゴは輸入品、大粒で安価ですが大味のうえ香りがしないので買う気にはなれません。

仕方なく日々を過ごしていた頃、自宅近辺で地元産の農産物が購入できる場所、配送方法などを示したオープンストリートマップがボランティアベースで構築されたり、リヨン市でも閉鎖しているマルシェに代わり地元で生産された果物、野菜、肉、卵を調達するためプラットフォームが作られたことを知り、春の旬を求めてわが家でもこれを機に利用してみることにしました。
  • 「コロナ危機の間にリヨンで地元食品を食べる」と題し、調達方法別に色分けされて消費者に共有された地図。3月末には約80の生産者と約70の食料品店が掲載された(画像は5月中旬のため、再開されたマルシェも掲載されている)

再び注目される「短絡流通」

フランスではかなり以前から地元の農家と消費者をオンラインでつなぐ取り組みが活発に行われています。
その源泉となっているのが、“Circuit court” の概念。直訳すれば「短い経路」という意味の言葉で、「農産物の作り手と買い手の距離が短い」という時に使われます。

第二次世界大戦以降、鉄道、道路輸送の出現、冷蔵輸送の驚異的な成長や、食品市場の国際化にともなって変化した産業全体の供給構造。そのために農産物の「短絡流通」は衰退しつつありました。
しかし、1980年代から生産コストを下げるために起きた、度重なる食品スキャンダルや食品公害をきっかけに、生産者から消費者に届くまでに多くの事業者が存在する構造が問題視されるようになり、「短絡流通」は再び注目されるようになりました。

Circuit courts(短絡流通)の定義

「短絡流通」には、マルシェ、直売所、産直バスケットなどで生産者が消費者に直接販売する元来の経路のほかに、地元の農産物を販売している店舗、レストラン、プラットフォーム運営会社などを介して消費者に販売される経路が現代の概念として含まれます。

2009年以降、”Circuit court ” をフランス農業政策の一環として、持続可能な農業のために振興すべき流通として位置付けられてからは、「生産者から消費者への直接販売、または、生産者と消費者の間の仲介者は1つだけで農産物を販売する方法」とフランス農務省によって定義されています。

また、インターネット上で販売する生産者を排除しないために、地理的距離は考慮されていませんが、実質的には地域的な範囲(150km未満)での消費になっているようです。
  • 註:「150km未満」は、フランス環境エネルギー管理庁(ADEME)の見解
※このテーマは次号に続きます。
管理栄養士 吉野綾美

1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。