第33回 フランスの離乳食事情 その4

ミルクの国の食だより

コラム、「ミルクの国の食だより」の第33回をお送りします。
赤ちゃんの離乳食も、月齢が進むにつれて大人の食事に近づいていきます。フランスでは、一般的な食習慣である「前菜+メイン+デザート」のかたちになっていきます。

離乳食を開始後、最初の1-2ヶ月くらいは、野菜類、果物類を与えるのが一般的です。
その後、月齢がすすむにつれ、肉や魚、卵などのたんぱく質性食品、油脂類など、食べられる食品が増えてくると、どんどん大人が食べているフランスの食事形式に近づいてきます。
■日本と違い、米は8ヶ月以降が推奨される。それ以前は米のほか、小麦やキビ、とうもろこしなどが数種混ざっている粉状の乳児用シリアルをミルクに混ぜて与える

月齢別 離乳食のパターン

母乳や育児用ミルクは1歳までは少なくとも500ml/日は与えます。
デザートにはヨーグルトやフロマージュブランなどの乳製品を与えることが多いです。
1歳以降は牛乳の飲用もOK。
牛乳(ヨーグルトなどの乳製品を含む)は、1日500~800mlの摂取が推奨されます。
■肉や魚が食べられる月齢になったら、ピュレ野菜に混ぜて与える。日本では月齢があがると歯ごたえのあるものを取り入れるが、フランスではかなり遅くまでピュレ状を好む傾向。大人の食事でもピュレは定番の付け合せ。全部食べさせなくてもよいので、味わって食べさせることが何より大切

「前菜+メイン+デザート」のかたちに

一日の中で昼食が重く、前菜+メイン+デザートのかたちは大人の食事も同じ。
また、離乳食はまずは昼食時、次いで16時の“グテ(goûter )“と呼ばれるおやつの時間に食べさせます。
グテはフランスの大人も大好きな時間で日常生活の一部です。
ちなみにフランス語で”グテ(goûter)”は、「おやつ」という意味のほかにも、「味わう」「満喫する」などいろいろな意味をもつ言葉。
栄養を得ることも大事ですが、全部食べられなくても味わうためにあげる、おいしいものを食べて幸せな気持ちになる体験をさせることも、離乳食の大きな役割です。
■デザートにはヨーグルトやフロマージュブランなどの乳製品を与えることが多い。フロマージュブランの一種で固めのテクスチャーが特徴のプチスイスは子どものデザートの定番

お国柄が反映された離乳食

日本とは異なる食文化が反映された離乳食に驚くこともありますが、参考になることも色々あります。
わが子の成長を嬉しく思う一方で時に負担に感じてしまう離乳食。
大人も楽しみながら、子どもに家庭やその土地の文化、健康に生きていくための知恵を伝える場にしていければなと思います。
■離乳食の売り場には、牛乳・乳製品を使った常温保存可能なデザートがたくさん並んでいる
管理栄養士 吉野綾美
1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。