ウワサ2 超高温瞬間殺菌で乳脂肪は酸化する

牛乳の気になるウワサをスッキリ解決!

ウワサ2 超高温瞬間殺菌で乳脂肪は酸化する

超高温瞬間殺菌で、乳脂肪は酸化されません。

● 外気と触れないから酸化の可能性がない
牛乳の殺菌は外気と直接触れない密閉装置の中で行われているため、酸化に必要な酸素が牛乳に溶け込むことは極めて少なく、乳脂肪が酸化される可能性はほとんどありません。

● 乳脂肪は脂肪球膜に包まれ、酸素と接触しない
実際に、原料である生乳の脂肪と、製品になったパック入り牛乳の脂肪の酸化の程度を測定しましたが、どちらもまったく差がありませんでした(財団法人日本食品分析センター 2006年分析結果)。

「酸化」のメカニズムについては、ウワサ1もご参照ください。

参考資料
・ 林弘通, 福島正義, “乳業工学”, 幸書房, 1998, 23. 

そもそも…「超高温瞬間殺菌」とは?

牛乳は「なま」の飲み物なので、牛からしぼった乳(生乳;せいにゅう)を工場で殺菌してから「牛乳」として売られるようになります。殺菌方法にはいろいろな種類がありますが、日本で最もメジャーな殺菌方法は「超高温瞬間殺菌」(「UHT殺菌」ともいう)です。

これは、その名のとおり、120~130℃の超高温で1~3秒、瞬間的に加熱して殺菌する方法です。人体に有害とされる一般的な細菌だけでなく、近年発見された耐熱性の菌(Q熱リケッチア)も死滅させることができ、日本の牛乳の9割以上がこの方法で殺菌されています。

もっと知りたい! 牛乳の殺菌方法

生乳は殺菌して初めて「牛乳」になる

牛乳は、食品衛生法の「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」に「保持式により摂氏63℃で30分間加熱殺菌するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌すること」と定められています。

殺菌方法には、大きく分けて次の5つの方法があります。
① 低温保持殺菌(LTLT):63~65℃、30分加熱殺菌
② 連続式低温殺菌(LTLT):65~68℃、30分以上加熱殺菌
③ 高温保持殺菌(HTLT):75℃以上、15分以上加熱殺菌
④ 高温短時間殺菌(HTST):72℃以上、15秒以上加熱殺菌
⑤ 超高温瞬間殺菌(UHT):120~130℃、1~3秒加熱殺菌 

殺菌方法によって殺菌効果は異なる

①~④の方法では、すべての細菌などを死滅させることはできませんが、人間に有害な細菌などは死滅するため、殺菌後の牛乳を冷蔵保管することにより一定期間は安心して飲むことができます。

⑤の方法は、耐熱性胞子形成菌も死滅させることができます。⑤の殺菌能力は①に比べ約1万倍で、日本の牛乳はその9割以上が⑤の方法によって殺菌されています。

近年では、耐熱性の菌や抗生物質が効かない菌など新しい細菌が次々と発見されています。このため、乳業メーカー、酪農家、販売業者、行政など牛乳の生産と販売にかかわるすべての人たちは一体となって、安全のための研究や品質チェックを行い、牛乳の安全性を高める努力を日々続けています。