ウワサ3 牛乳を殺菌すると酵素が死ぬから体に良くない

牛乳の気になるウワサをスッキリ解決!

ウワサ3 牛乳を殺菌すると酵素が死ぬから体に良くない

「酵素を摂る」ことに栄養学的意味はありません。

● 人に必要な酵素はすべて体内で作り出される
人の体にとって必要な酵素は、体内でたんぱく質から合成されます。したがって、食物などから摂取する必要はありません。食べ物に含まれる酵素は、体内で分泌される「たんぱく質分解酵素」によって分解されて消化され、酵素活性を失います。酵素はたんぱく質ですから、牛乳の加熱殺菌によっても活性が失われます。しかし上記の理由から、そのことに大きな栄養学的意味はありません。

● 牛乳に含まれる酵素は、私たちの健康には関係しない
牛乳には、加水分解酵素や酸化還元酵素など、数十種類の酵素が含まれています。しかし、これらの酵素は微量ですから、私たちの健康に関係することはまずありません。

参考資料: “ミルク総合事典”, 山内邦男, 横山健吉編、朝倉書店, 1992, 55. 

そもそも・・・酵素とは?

酵素はたんぱく質を主体とする物質で、生物の細胞内で合成されます。消化、吸収など、生体内で行われる化学反応の触媒として働きます。

酵素は、生物の体内の細胞の中や、消化液(胃液・すい液・腸液・だ液など)、酵母の中などに存在し、熱や金属イオンなどによってその活性を失います。

1種類の酵素は、特定の分子の特定の反応にしか関わることができません。酵素が作用する相手の物質を「基質」といいます。

酵素は大きく分けて6種類に分類されます。
1. 酸化還元酵素:酸化と還元を行う(例:アルコール脱水素酵素、乳酸脱水素酵素) 
2. 転移酵素:基質の一部を他の基質に移す(例:アミノトランスフェラーゼ) 
3. 加水分解酵素:水を加えて基質を分解する(例:アミラーゼ、ペプチターゼ) 
4. 除去酵素:水などを必要とせずに基質を分解する(例:カタラーゼ、カルボキシラーゼ) 
5. 異性化酵素:分子中の原子の配列状態を変える(例:グルコースリン酸イソメラーゼ) 
6. 合成酵素:2つの基質を結合させる(例:グルタミン合成酵素)

もっと知りたい! 加熱殺菌すると牛乳の栄養素はどうなる?

日本の牛乳は、その9割以上が「超高温瞬間殺菌(UHT)」されています。120.130℃で1.3秒、加熱し殺菌する方法です。この殺菌は牛乳の栄養素の中では、たんぱく質に少し影響を与えます。

牛乳を120℃以上で加熱すると、たんぱく質は加熱変性を起こします。「変性」とは、たんぱく質の立体構造が変化すること。生卵を加熱してゆで卵や目玉焼きにする、生の肉や魚を焼いたり煮たりする、そのときに起こる変化と同じです。黒こげになるような激しい変化の場合は別ですが、通常の加熱では、たんぱく質のアミノ酸組成が変わるわけではなく、栄養価に変化はありません。むしろ加熱してたんぱく質が変性すると、消化が良くなりますから、生のものより栄養価は相対的に高まります。

カルシウムやビタミンはどうでしょうか。

カルシウムは、超高温瞬間殺菌により乳中の一部のリン酸塩が「不溶化」(吸収されにくい形になること)しますが、冷えると元に戻ります。牛乳に多く含まれるビタミンA、B1、B2は加熱による影響はありません。
加熱殺菌は、牛乳の栄養価にほとんど影響しない。これが結論です。