牛乳を飲むと背が伸びる!

乳の知識

MILK通信II ほわいと(2000年夏号より)

要旨

小児期からの生活習慣病予防における調査の一環として、ある地区の小学4年生が、その3年後の中学1年生になった際に、それまでの牛乳摂取が学童期の健康に与える影響について検討した。その結果、1日摂取量500ml以上群と500ml未満群との比較において、肥満度(%)平均、血清総コレステロールやLDLコレステロール平均値、HDLコレステロールおよび動脈硬化指数の平均値について、いずれも両群間において有意差を認めなかった。
一方、体格に関しては、1日摂取量500ml以上群においては、3年間の追跡後の比較において、体重増加の平均値は同じぐらいであるにも関わらず、身長の増加は有意に大きいことが見い出されたのであった。

はじめに

現代のような飽食と身体活動を減じるような便利な都市型生活の時代にあって、かつて栄養不足の時代から成長期における栄養源として理想的とされてきた、牛乳摂取の持つ意義について成長期の児童生徒を対象に再考するための研究を我々は行ってきた。
我々は以前牛乳が健常学童の血清脂質および体格に与える影響について横断的な検討を行った。そのとき小学4年生を対象に行った調査では、牛乳摂取量が多いほど総コレステロール値が高値を示したが、HDLコレステロールも高く、動脈硬化指数、LDLコレステロールには差が認められず、必ずしも動脈硬化性を高めているとはいえなかった。今回は、3年後の中学1年生時にも同様の調査に参加できた同一対象児について、牛乳が体格の経年変化に与える影響を縦断的に検討した。

牛乳摂取が学童の体格に与える影響について

図に示したように牛乳摂取の比較的多いと考えられるB群は21.3±1.1cm、これに対してより牛乳摂取の少ないA群は18.8±0.5cmと有意に前者は身長の伸びは大きいことが示された。しかしながら、体重のこの3年間における比較では、両群間に有意差は見られなかった。また肥満度に関しても両群間に有意差は認められなかったのである。このような報告について文献的に調べたが、意外なことに我々の知る限り国内において身長と牛乳摂取との関係を詳細に検討されたものは見い出せなかった。牛乳摂取の成長に対する影響については、Bakerらは7~8歳の学童を対象として学校で牛乳190mlを摂取させる群と摂取させない群とでコントロールスタディを行ったところ、21.5ケ月後の身長の伸びは牛乳摂取群の方が2.8cm有意に大きかったと報告している。 
  • 牛乳摂取が学童の体格に与える影響
    牛乳摂取の期間:小学4年生から中学1年生の3年間
    A群(調査対象=82人…男40人、女42人):1日当たりの牛乳摂取量500ml未満
    B群(調査対象=10人…男7人、女3人):1日当たりの牛乳摂取量500ml以上

今回の我々の検討でも、牛乳摂取量が多いB群で少ないA群に比べて有意に3年間の身長の伸びが大きく(2.5cm)、肥満度については有意差は認められないがB群でより減少する傾向があることが分かった(-3%)。しかし、身長の伸びに大きな影響を及ぼす性成熟度や、両親の身長など今回は調査が行われておらず、牛乳の影響のみかどうかは今後の検討を待たねばならない。ただし、肥満度の上昇と牛乳摂取量との関連性はなく、肥満の憎悪因子とはなっていないと考えられた。

牛乳摂取以外の学童期身長増進貢献因子

・親の体格・身長-遺伝的要因
・本人における性成熟度
・成長ホルモン分泌刺激(身体活動、運動、睡眠など)
・他の食品やエネルギー、栄養素との共存
・牛乳中に成長促進因子への量的依存
・種々の内分泌物質
・体脂肪量・体脂肪分布
・その他

成長期の身長増加と牛乳摂取の意義

牛乳摂取と学童期の身長増加のメカニズムについては、表にまとめた諸因子について今後明らかにする必要がある。牛乳の成分の中のカルシウムやたんぱく質以外に、直接的な成長促進因子が含まれるとすれば、これは極めて興味深い。最近においてはこの意味で加工された牛乳にも含まれ種々の生物活性作用を発揮するといわれるTGF-βも注目されよう。
ところで、小児でも問題となっている高コレステロール血症と牛乳摂取との関係については、一般的な食生活において、適度に乳製品を摂取することで冠動脈疾患のリスクが高まったという研究報告はないとされる。乳製品を摂取したからといって、総脂肪やコレステロール量が大きく増えることはなく、さらに、乳脂肪は脂肪酸としては特殊である。つまり、その脂肪酸の約59%は血中コレステロール値を上げる作用を持たない。また、乳製品の脂肪含有量だけからでは血中脂肪酸値の反応は予測されないとする報告がみられる。牛乳にはカルシウムのような栄養素が血中脂肪酸値を低下させる可能性もある。
ここで成長期に子供の身長とコレステロール値との関係について調べた成績では、男女ともに10~12歳において血清総コレステロール値は10から15mg/dlぐらい低下する現象が全国的に観察されるが、興味あることには身長に伸び率がピークになった後、しばらくして血清総コレステロール値の減少が最も大きいことが知られている。これはすなわち、コレステロールが細胞合成として成長期には盛んに使われることの間接的な証明ではないかと考えられる。また、運動をよくするこの時期の学童においても血清総コレステロールは低く、反対に運動をしない学童においては高コレステロール血症の傾向も見られるのである。コレステロールは成人では動脈硬化の危険因子としての評価に重きが置かれるのであるが、成長期の子供にとっては、重要な体づくりの役割を担ってもいるのである。
身長を伸ばすこと、体づくりのうえで、牛乳や乳製品は栄養豊富な食品として摂取すべきであり、かつまた十分な身体活動を行うことが鍵になると考えられるのである。

まとめ

同一受診者の変化の検討から、牛乳摂取の多い学童では、身長の伸びは促進され、肥満度はより低下する傾向が認められた。牛乳摂取は動脈硬化促進の因子とはなりにくく、むしろ学童期の成長にとって重要な栄養源であると考えられた。
(参考文献)
1. 岩田富士彦、岡田知雄、他、牛乳摂取が児童、生徒の動脈硬化危険因子に及ぼす影響に関する検討。小児保健研究 1997;56:655-659.
2. Baker lA,Elwood PC, et al.Arandomised controlled trial of the effect of the provision of free school milk on the growth of children. J Epidemiol Community Health 1980;34:31-34.
3. 松崎俊久:牛乳栄養学術研究会第8回 学術フォーラム報告書、1994

MILK通信II ほわいと(2000年夏号より)