第2回 たんぱく質学

ミルク解体新書

第2回 たんぱく質学

筋肉や血液、皮膚など、人のカラダの主要な部位をつくる栄養素、たんぱく質。
不足するとカラダにはさまざまな悪い影響が…。

たんぱく質は、体内でつくられるものとつくれないものを含め、20種類のアミノ酸から形成されています。
そこで、その仕組みについてひもといていきます。

たんぱく質はカラダを構成する主要な成分、酵素やホルモンなどの原料にも。

たんぱく質=プロテインの語源「いちばん大切な」(ギリシャ語)が示すように、たんぱく質は私たちのカラダの筋肉や臓器をつくる主成分であるほか、酵素、ホルモン、免疫細胞の原料となるとても重要な栄養素です。
たんぱく質はカラダを構成する成分のうち、水分についで多く、男性でカラダの成分の約17%、女性で約14%を占めています。

たんぱく質はおもに、魚、肉、大豆や大豆製品、牛乳・乳製品に含まれます。アンチエイジングに効果を発揮するコラーゲンもたんぱく質の一種で、私たちの骨や皮膚など細胞同士をつなぎ合わせる働きがあります。
皮膚の弾力性をアップし、保水効果があるので、化粧品にもよく使われています。 

私たちのカラダで絶えず繰り返される、たんぱく質の合成と分解。

食品から摂取したたんぱく質は、消化によってアミノ酸に分解され、小腸から吸収されたアミノ酸の大部分は肝臓やカラダの各組織でたんぱく質に合成されます。
その一方で、小腸から吸収されたけれど使用されなかったアミノ酸や、新陳代謝で不要になったたんぱく質はアミノ酸に分解され、尿素につくりかえられカラダの外に排出されます。 

このように、私たちの体内ではたんぱく質の合成と分解、排出が絶えず行われているので、毎日これに見合ったたんぱく質を摂る必要があります。
特に成長期のこどもは、成長に必要な分もプラスして十分なたんぱく質を摂取しなければなりません。 

日本人のたんぱく質の摂取状況は、平成23年国民栄養調査結果によると、1人1日当たり67.0gです。このうち動物性たんぱく質の摂取量は、戦後間もない昭和25年に17.6gであったものが、平成23年には36.4gと、2倍以上に増えているのが特徴です。(グラフ1参照)
  • 【グラフ1】たんぱく質摂取量の推移
    (厚生労働省 「平成23年 国民健康・栄養調査」より)

たんぱく質が効率よく摂取できる牛乳や乳製品。

大豆などの植物性たんぱく質に比べ、肉、魚、牛乳・乳製品は効率よく消化吸収されます。特に牛乳・乳製品は調理しなくてもそのまま飲んだり食べたりできるので、手軽にたんぱく質を摂ることができる食品です。

牛乳のたんぱく質は、その約80%を占めるカゼインと、残り約20%のホエーたんぱく質と呼ばれるものに分けられます。

カゼインは水にとけないたんぱく質で、ふつうは牛乳中に微粒子状で分散しており、酢などの酸を加えると固まります。ヨーグルトは、乳酸菌がつくった乳酸によってカゼインが固まったものになります。また分離してできる半透明の液体をホエーといい、そのなかにホエーたんぱく質がとけています。

ちなみに、牛乳が白く見えるのは、カゼインなど牛乳中に浮遊する微粒子に光があたって乱反射するからなのです。

また、カゼインが消化されるときにできるカゼインホスホペプチドには、小腸からカルシウムの吸収を促進する働きがあります。

最近よく耳にするラクトフェリンは、乳たんぱく質のひとつで、大腸菌など有害菌の繁殖を抑え、免疫力を高める働きがあるといわれています。
  • (「文部科学省:資源調査会資料」、「栄養と食糧」等の資料より)

8種類の必須アミノ酸は食品から摂取する必要が。

私たちのカラダはたくさんのたんぱく質からつくられています。しかし、そのたんぱく質を構成するのはわずか20種類のアミノ酸。アミノ酸の種類や量、配列のしかたによってさまざまな種類のたんぱく質がつくられているのです。

この20種類のアミノ酸のうちの8種類、ロイシン、イソロイシン、バリン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファンは体内で合成することができないので、食品から摂取する必要があります。これらのアミノ酸を必須アミノ酸といい、さらに、幼児の場合はこれにヒスチジンを加えた9種類になります。

たんぱく質の栄養価を表すアミノ酸スコア。

たんぱく質の栄養価は、アミノ酸スコアを使って表します。消化の過程で分解され体内にとり込まれたアミノ酸が、効率よくたんぱく質に合成される割合が高いほど、質の良いたんぱく質と考えられます。

アミノ酸スコアは、食品に含まれる必須アミノ酸の量が、カラダをつくるたんぱく質に合成されるときの理想のアミノ酸組成(アミノ酸評点パターン)をどれくらい満たしているかで算出します。

牛乳やヨーグルト・チーズはアミノ酸スコア100の良質なたんぱく質。

アミノ酸スコアが100に近いほど、たんぱく質の栄養価は高く、良質のたんぱく質であるといえます。牛乳やヨーグルト・チーズなどの乳製品は、鶏卵と同様にアミノ酸スコアが100の質の良いたんぱく質です。ヨーグルトは牛乳に乳酸菌を加えてつくった発酵食品のため、たんぱく質の一部がすでにペプチドやアミノ酸まで分解されているので消化が良いのも見逃せません。

また、アミノ酸スコアが低い食品であっても、不足しているアミノ酸を補えるようなたんぱく質といっしょに摂ると、不足分が補われます。

たとえば、精白米はリジンが不足していますが、牛乳などリジンの豊富な動物性食品などといっしょに摂ることで、必須アミノ酸のバランスが改善され、補完することができます。

ほかにも、食後にコップ一杯の牛乳を飲んだり、デザートにヨーグルトなどの乳製品を食べたりするだけで、アミノ酸のバランスがぐっと良くなります。
毎日の食事に牛乳や乳製品を積極的に取り入れ、たんぱく質を上手に摂りたいですね。

知っトク!コーナー

うま味の正体は?

 食べ物の味には塩味、甘味、酸味、苦味、うま味、辛味などがあり、そのうち、うま味の素になっている物質がアミノ酸のひとつであるグルタミン酸です。

グルタミン酸を豊富に含む食品としてはコンブが有名ですが、実はチーズにもグルタミン酸が多く含まれており、その量はコンブに次ぐものとなっています。

イタリアチーズの王様と呼ばれるパルミジャーノ・レッジャーノ(パルメザンチーズ)。切り口に見られる白い斑点は長期熟成するうちにできたアミノ酸の結晶で、うま味成分そのものです。
イタリア料理ではチーズをすりおろしてパスタにかけたり、サラダのトッピングにしたりと、調味料がわりにたくさん使います。
チーズをプラスすることで、料理にうま味と深みのある味が生まれるのですね。

日本でいえば、さながら豆腐やお浸しにパラパラとふりかけたり、おにぎりの具に使ったりと台所に欠かせないかつお節のような存在といえるのではないでしょうか?

みんなのMILK DATA

たんぱく質供給源の移りかわり
「植物性たんぱく質」にかわり増えてきた「動物性たんぱく質」

たんぱく質の供給源は、昭和40年頃には穀類や豆類など「植物性たんぱく質」の割合が65.5%と大きく占めていました。ところが年を追うごとに「動物性たんぱく質」の割合が増え、昭和60年頃には立場が逆転。最近では「動物性たんぱく質」が55.1%と、たんぱく質の供給源として大切な役割を担ってきています。
これは、穀物の割合がぐんと減ったこと。そして、肉類のメニューが以前よりずっと多く食卓にのぼるようになったことにもよりますが、牛乳・乳製品が身近な存在となって、広く浸透したことも理由のひとつのようです。牛乳・乳製品の割合は、昭和40年に比べて、平成15年では約2.4倍に増えています。

調理しても、そのままでも、気軽に摂れる牛乳・乳製品。

 牛乳や乳製品は、コンビニなど近くのお店ですぐに手に入り、そのままでも食べたり飲んだりできる食品。「簡単」「すぐ」を求める現代のライフスタイルニーズにも適っているのでしょう。

 
j-milk magazine ほわいと2005秋「ミルク解体新書 第2回 たんぱく質学」より
(HP掲載にあたり、参照する統計データなどを更新)