年末年始の生乳需給に関するQ&A

年末年始の生乳需給に関するQ&A

年末年始に想定される生乳需給について、一般消費者の皆様が疑問に感じる点について、Q&A形式でまとめております。

Q1. 年末年始に生乳が廃棄される恐れがあるのはなぜですか?

A.
全国の生乳生産量は2018年までの15年間漸減傾向にありましたが、酪農乳業関係者が一丸となって増頭や生産性の向上など生産基盤強化に取り組んだ結果、今年度は北海道・都府県ともに増産の見通しとなり、今年の12月は北海道で前年比104%台、都府県で同101%台の生乳生産が見込まれております。

その一方で、コロナの影響で外食やお土産用等の業務用需要の低迷が続いていることや、昨年のようにご家庭での巣籠需要は見られず牛乳の消費が低調に推移しているため、例年以上に国内の生乳生産量が需要を上回る傾向にあります。

こうした中、年末年始については、飲用不需要期(季節的に牛乳の消費が落ちる時期)にある上、一部量販店における正月三が日の休業や学校給食の休止が重なり、1年のうちで一番牛乳の消費量が少なくなる時期になることから、生乳供給量が一時的に全国の乳製品工場の処理能力をオーバーする恐れがあります。


Q2. 余った生乳はバターなどの乳製品にすれば廃棄する必要はないと思いますが、そうではないのですか?

A.
生乳(牛から搾ったままの乳)は、他の農産物と異なり、貯蔵性が低いことから、すぐに加工処理する必要があります。さらに、生乳は多様な用途(牛乳乳製品)に加工処理されますが、賞味期限の短い飲用等向け(牛乳やはっ酵乳等)、生クリームやチーズといった順に処理され、残った生乳は最も保存の利く「バター」や「脱脂粉乳」として処理しています。バターと脱脂粉乳は、生乳需給の調整弁の役割を果しており、飲用牛乳の需要が多い場合には製造量が減少し、需要が少なくなると増加します。

年末年始のように飲用等向けの需要が特に少ない時期には、バターや脱脂粉乳を多く製造して調整しますが、今年は生乳供給量が需要を大幅に上回ることが想定され、全国の乳製品工場をフル稼働しても、その製造能力を超える量となり、処理し切れない生乳(処理不可能乳)が発生する可能性があります。

Q3. 生乳が余るのであれば、生産量を減らすことはできないのですか?

A.
生乳生産量を減らすこと(減産)≒乳牛を減らすことですが、生産者の家族同然である乳牛を単純に処分すれば良いという話にはなりません。また、仮に需要が回復して、再び生乳生産量を増やすとなった場合には、種付け~搾乳開始まで約3年の期間を要することとなります。

過去に生乳需給が緩和し、減産した際には、その後生産が回復せずに生乳不足が継続した経験から、業界としては減産しないことを前提として、この難局を乗り越えるべく取り組んでいます。そのため、生産者が実施する出荷抑制もあくまで“酪農経営に悪影響を与えない”範囲で取り組むこととしています。

Q4. 廃棄を回避するために、酪農家や乳業メーカーはどのような取り組みを行っていますか?

A.
Jミルクでは、「#1日1L」運動と題して、全ての酪農乳業関係者に年末年始の牛乳消費を呼びかけることをはじめ、関連企業や団体においても消費を拡大する取り組みが進められています。

また、生産者においては、酪農経営に悪影響を与えないことを前提として、12月下旬~1月上旬に早期(適正)に出産準備のための搾乳の停止(乾乳)・治療や出荷予定牛の早期(繰上)出荷等を行うことで一時的な生乳出荷抑制に取り組んでおります。乳業者においては、乳製品工場を年末年始に集中してフル稼働することをはじめ、乳飲料やはっ酵乳などの生乳使用率の引き上げや、量販店への積極的な販促活動に努めているところです。その他、生産者団体と乳業者が連携して、各乳業工場やクーラーステーション(貯乳タンク)における貯乳能力のフル活用を図ることとしております。

処理不可能乳の発生を回避するべく、全国の業界関係者が一丸となってこうした様々な取り組みを進めています。
※Q&Aは、必要に応じて更新してまいります。

 《参考資料》

▽Jミルク「日本のミルクサプライチェーン2021」
https://www.j-milk.jp/news/m_supplychain2021.html

▽農林水産省 牛乳・乳製品に関する新型コロナウイルス感染症関連情報
https://www.maff.go.jp/j/chikusan/gyunyu/lin/dairyinfo_corona.html

▽農畜産業振興機構 バター、脱脂粉乳およびチーズの流通実態調査の結果
https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001637.html