第44回 牛乳・乳製品摂取と周産期うつ症状との関連

メディアミルクセミナー

2016年9月30日開催

2001年に開始した「大阪母子保健研究」では、妊娠中にαリノレン酸やドコサヘキサエン酸、乳製品、カルシウム、ビタミンEの摂取が多いほど、子供(1歳半)の喘鳴(気道が狭くなり、呼吸の際にゼイゼイ、ヒューヒューと音が鳴ること)のリスクが低下し、チーズの摂取が多いほど、子供(3歳半)の齲蝕(虫歯)のリスクが低下していることがわかりました。
また、2007年に開始し現在も継続している「九州・沖縄母子保健研究」では、魚介類、エイコサペンタエン酸、ヨーグルト、カルシウム、ビタミンD、海藻の摂取が多いほど、母親の妊娠中うつ症状の有症率が低いという結果が得られました。
特に、産後4カ月時点では、妊娠中の牛乳摂取が多いと、産後うつ症状のリスクが低下していました。これらは、疫学研究として行われたものですが、確立したエビデンスとなるためには、多くの疫学研究で支持されることが必要です。 今後は、さまざまな健康問題に対する栄養の影響について、日本人を対象とした疫学研究のエビデンスを蓄積していくことが重要となります。

(2016年9月30日開催) 

講師:三宅 吉博 先生(みやけよしひろ)先生
愛媛大学大学院医学系研究科 教授
略歴:1993年 防衛医科大学校医学科卒業、1993年 京都大学医学部附属病院老年科医員(研修医)、1994年 静岡市立静岡病院内科研修医、1996年 京都大学大学院医学研究科内科系専攻博士課程入学、1997年 九州大学大学院医学系研究科社会医学系専攻博士課程転入学、2000年 九州大学大学院医学系研究科社会医学系専攻博士課程修了、2000年 近畿大学医学部公衆衛生学助手、2002年 福岡大学医学部公衆衛生学講師、2004年 福岡大学医学部公衆衛生学助教授、2007年 福岡大学医学部公衆衛生学准教授、2011年 福岡大学医学部衛生・公衆衛生学准教授、2014年 愛媛大学大学院医学系研究科公衆衛生・健康医学講座教授。
主要研究テーマ:観察的疫学研究(生態学的研究、横断研究、症例対照研究、コーホート研究)に携わり、アレルギー疾患やうつ、出生時体格、口腔疾患といった母子の健康問題、特発性肺線維症や特発性パーキンソン病といった難病の疫学研究に従事。近年は、遺伝要因(遺伝子多型)と疾患リスクとの関連、遺伝要因と環境要因の交互作用を調査。特に、出生前コーホート研究(大阪母子保健研究、九州・沖縄母子保健研究)を運営しており、妊娠中にベースライン調査に参加した母親と、生まれた子の栄養情報の追跡調査を行っている。
所属学会:日本疫学会、日本公衆衛生学会、日本産業衛生学会、日本衛生学会、日本口腔衛生学会

メディアミルクセミナーとは

メディアミルクセミナーは、主に、医学・栄養学・食品科学の専門家による栄養と健康をテーマにしたメディア向け勉強会で、年に3回程度開催されています。
セミナーでは、毎回、牛乳乳製品の持つ栄養健康機能についての最新の研究成果や知見も報告されています。
毎回のセミナーの内容は、下記のニュースレターとして取りまとめられています。
牛乳乳製品の栄養健康に関する最新の情報がご覧いただけますので、どうぞご活用ください。
2017年3月7日
このセミナーの内容をまとめたニュースレターです。
■疾患発症のリスク要因および予防要因の解明が疫学の任務
■妊娠中の乳製品等の摂取で喘鳴のリスクが低下
■ヨーグルトとカルシウムは摂取量の増加にともない妊娠中うつを低減
■妊娠中の牛乳摂取が多いと、産後うつ症状のリスクが低下
■疫学研究では日本人のエビデンスの蓄積が重要
  • 第44回 牛乳・乳製品摂取と周産期うつ症状との関連 - 疫学研究によるエビデンス蓄積の重要性 -

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