「あたらしいミルクの研究」2018年度
筑波大学:氏家清和
研究報告「飲用乳関連メディア情報による消費者便益への影響とその変化要因に関する定量的研究─スキャナーパネルデータによるアプローチ─」(氏家清和)をもとに作成。
研究報告「飲用乳関連メディア情報による消費者便益への影響とその変化要因に関する定量的研究─スキャナーパネルデータによるアプローチ─」(氏家清和)をもとに作成。
スキャナーパネルデータとは、商品についているバーコードをスキャナーで読み取り、その情報をオンラインで収集した消費者購買履歴データのこと。
ここでは消費者1万人以上の数年間におよぶスキャナーパネルデータを用いて、どんな人が、どんなヨーグルトを購入しているのかという購買状況をリサーチ。
成長著しいヨーグルト市場の実態を探りました。
ここでは消費者1万人以上の数年間におよぶスキャナーパネルデータを用いて、どんな人が、どんなヨーグルトを購入しているのかという購買状況をリサーチ。
成長著しいヨーグルト市場の実態を探りました。
ヨーグルト購入に関する膨大なデータを分析
近年、消費者の健康志向に訴求する食品が市場規模を拡大しています。なかでも腸内環境を整える食品として人気が高いヨーグルトの市場構造や需要の傾向に関して、スキャナーパネルデータを用いて分析しました。その結果、市場の特徴として導き出されたのが以下の3つになります。
・ 100〜200gの小容量商品での競争が激しい。
・ 一部のメーカーはブランドロイヤルティの強化に成功している。
・ 特定保健用食品(トクホ)としての表示も差別化要因として機能している可能性がある。
今回使用したスキャナーパネルデータは、株式会社マクロミルが提供する「Quick PurchaseReport:QPR」というデータです。QPRでは登録モニターにスキャナーが貸与され、購入した商品のバーコードを各自がスキャンします。モニターの年齢、性別、未既婚、家族構成、世帯収入なども登録されるため、「どのような人が、何を、どれだけ、いくらで」購入したかという記録が蓄積されるというわけです。
対象は、2012年1月〜2016年12月にモニター登録を継続していた11855名で、ヨーグルトのみに関する購買データを分析しました。
・ 100〜200gの小容量商品での競争が激しい。
・ 一部のメーカーはブランドロイヤルティの強化に成功している。
・ 特定保健用食品(トクホ)としての表示も差別化要因として機能している可能性がある。
今回使用したスキャナーパネルデータは、株式会社マクロミルが提供する「Quick PurchaseReport:QPR」というデータです。QPRでは登録モニターにスキャナーが貸与され、購入した商品のバーコードを各自がスキャンします。モニターの年齢、性別、未既婚、家族構成、世帯収入なども登録されるため、「どのような人が、何を、どれだけ、いくらで」購入したかという記録が蓄積されるというわけです。
対象は、2012年1月〜2016年12月にモニター登録を継続していた11855名で、ヨーグルトのみに関する購買データを分析しました。
競争が最も激しいのは小容量型のヨーグルト
ヨーグルト市場には様々な商品が存在しています。そこで市場の構造を把握するために、各商品について購入者の重複度合いに基づいた分類を行ないました。たとえば、同じ購入者に購入されやすい商品は、商品の特徴が似ていると考えられ、逆に購入者がほとんど重複していない商品は特徴があまり似ていないものであると判断できます。購入者の重複度合いを分析した結果*、商品は9つの集団に分類されました。
同じ集団内の商品は購入者が重複するので、互いに競合関係にあると考えられます。最も商品数が多かったのは、一度で食べきれるような100〜200gの「小容量型集団」で、スプーンで食べる半固形タイプ、ドリンクタイプとも様々なメーカーの商品が多数含まれました。このことから、ヨーグルト市場においては小容量型商品での競争が激しいことが示唆されました。
一方、小容量商品でありながら「小容量型集団」に属さないブランド商品も見られることから、一部のメーカーは比較的ロイヤルティの高い顧客を獲得し、競合関係からやや距離をとることに成功しているものと考えられました。また、トクホとしての表示も小容量商品における差別化要因として機能しているようでした。
*Jaccard係数により重複を評価した。
同じ集団内の商品は購入者が重複するので、互いに競合関係にあると考えられます。最も商品数が多かったのは、一度で食べきれるような100〜200gの「小容量型集団」で、スプーンで食べる半固形タイプ、ドリンクタイプとも様々なメーカーの商品が多数含まれました。このことから、ヨーグルト市場においては小容量型商品での競争が激しいことが示唆されました。
一方、小容量商品でありながら「小容量型集団」に属さないブランド商品も見られることから、一部のメーカーは比較的ロイヤルティの高い顧客を獲得し、競合関係からやや距離をとることに成功しているものと考えられました。また、トクホとしての表示も小容量商品における差別化要因として機能しているようでした。
*Jaccard係数により重複を評価した。
メディア情報による需要の増加は確認できず
次いで、ヨーグルトに関する全国的なメディア情報や消費者の家族構成、世帯年収などがヨーグルトの需要にどのような影響を及ぼすかについて分析しました**。
対象における調査期間中のヨーグルトの消費量は、1年ごとに増加していることが確認されました。しかし、同期間中のメディア情報(全国紙に掲載されたヨーグルトに関する記事の件数)***による需要への統計的に有意な影響は認められませんでした。
世帯属性の検討では、乳幼児がいる家庭は消費量が多く、年収400円万未満の世帯では少なく、1200万円以上の場合には多いことなどが推定されました。さらに、世帯属性だけでなく個人に注目して需要に影響する事柄の分析を試みましたが、十分な解明はできませんでした。
日本におけるヨーグルト生産量および家計の食料支出におけるヨーグルトの割合は、2012年以降いずれも増加が続いています。こうした市場動向を踏まえ、今回解明できなかったメディア情報による需要への影響、個人間の需要傾向の違いなどを今後の課題として、さらなる検討を続けます。
対象における調査期間中のヨーグルトの消費量は、1年ごとに増加していることが確認されました。しかし、同期間中のメディア情報(全国紙に掲載されたヨーグルトに関する記事の件数)***による需要への統計的に有意な影響は認められませんでした。
世帯属性の検討では、乳幼児がいる家庭は消費量が多く、年収400円万未満の世帯では少なく、1200万円以上の場合には多いことなどが推定されました。さらに、世帯属性だけでなく個人に注目して需要に影響する事柄の分析を試みましたが、十分な解明はできませんでした。
日本におけるヨーグルト生産量および家計の食料支出におけるヨーグルトの割合は、2012年以降いずれも増加が続いています。こうした市場動向を踏まえ、今回解明できなかったメディア情報による需要への影響、個人間の需要傾向の違いなどを今後の課題として、さらなる検討を続けます。
**階層ベイズモデルという手法を用いて解析。
***朝日新聞社『聞蔵Ⅱビジュアル(朝日新聞社オンライン記事データベース)』より検索。
-「あたらしいミルクの研究」2018 年度 -
一般社団法人Jミルクと「乳の学術連合」(牛乳乳製品健康科学会議/乳の社会文化ネットワーク/牛乳食育研究会の三つの研究会で構成される学術組織)は、「乳の学術連合」で毎年度実施している乳に関する学術研究の中から、特に優れていると評価されたものを、「あたらしいミルクの研究リポート」として作成しています。
本研究リポートは、対象となる学術研究を領域の異なる研究者や専門家含め、牛乳乳製品や酪農乳業に関心のある全ての皆様に、わかりやすく要約したものになります。
なお、研究リポートに掲載されている研究内容詳細を確認する場合は、乳の学術連合公式webサイト内「学術連合の研究データベース」より研究報告書のPDFをダウンロードして閲覧可能です。あわせてご利用ください。
本研究リポートは、対象となる学術研究を領域の異なる研究者や専門家含め、牛乳乳製品や酪農乳業に関心のある全ての皆様に、わかりやすく要約したものになります。
なお、研究リポートに掲載されている研究内容詳細を確認する場合は、乳の学術連合公式webサイト内「学術連合の研究データベース」より研究報告書のPDFをダウンロードして閲覧可能です。あわせてご利用ください。
研究報告書は乳の学術連合のサイトに掲載しています
乳の学術連合のサイトはこちら
我が国における牛乳乳製品の消費の維持・拡大及び酪農乳業と生活者との信頼関係の強化を図っていく観点から、牛乳乳製品の価値向上に繋がる多種多様な情報を「伝わり易く解かり易い表現」として開発し、業界関係者及び生活者に提供することを目的とした健康科学分野・社会文化分野・食育分野の専門家で構成する組織の連合体です。