第12回 美食の町-リヨンの郷土料理-

連載コラム ミルクの国の食だより

コラム、「ミルクの国の食だより」の第12回をお送りします。
フランス革命などを経て花開いたリヨンの食文化(
※前回参照)。さて、リヨンの名物郷土料理とは?

食材の宝庫

南北の岐路に位置するリヨン。その料理は、北部と南部、両方の性質の異なる料理の影響を受けて発展しました。
北部のロレーヌ、アルザス料理からはバターとクリーム、南部のプロバンス、地中海料理からは色とりどりの旬野菜とオリーブ油が。
そしてルネサンス時代、スパイス貿易の中心地だったことから、リヨン料理には香辛料もよく使われます。
また、リヨン近郊はフランスを代表する食材の宝庫。
地元の特産品として知られるハムやソーセージ等の豚肉加工品、ローヌ川・ソーヌ川で採れる川かます、鱒等の淡水魚。
ワインの産地、ボジョレーやブルゴーニュも近く、野菜や果物はローヌ川流域でたくさん採れるし、ブランド肉で知られるブレスの鶏、シャロレーズ牛は近隣の平野から、そして沢山のチーズがアルプスから直接山を下ってきます。
東西南北の土地から良質な食材がすべて集まってくる町…リヨンが美食の町になった大きな所以がここにあります。
■旬の野菜が並ぶマルシェ
■中世の時代、庶民には高級品だったスパイスの代わりに種々のハーブが料理に使われた
■リヨン名物のソーセージたち

リヨンの郷土料理の数々

●川カマスのクネル Quenelle de Brochet
魚のすり身と卵、牛乳などで作った濃厚なはんぺんのようなもので、ラグビーボールのような楕円形が特徴。
ナンチュアソース(Sauce Nantuaザリガニや海老のだしとバターを合わせ、ベシャメルソースに加えたもの)をかけたり、クリームをかけてグラタンのようにして食べる。
■クネルは小麦粉、卵、牛乳、バターがベースでそれに魚や肉のすりみが加わる。ソースをかけて焼くと膨れてボリューム満点に
●グラドゥーブル・ア・ラ・リヨネーズ Gras-double à la Lyonnaise
ゆでた牛の第一胃の細切りとバターで甘く炒めた玉ねぎをワインビネガーで味付けしたソテー。
リヨン周辺では玉葱がたくさんとれるため、このような玉葱を使った料理にはよく”リヨン風”の名がついている。
●タブリエ・ド・サプール Tablier de Sapeur
意味は「工兵の前掛け」。
両掌より大きく形が工兵の前掛けに似てることに由来。牛の第二胃をボイルしてマスタード、白ワイン、レモン汁でマリネしてパン粉をつけてバターやラードで揚げ焼きしたカツレツ。
●セルヴェル・ド・カニュ  Cervelle de Canut
意味は「絹織工の脳みそ」。
絹職工たちにとって高価だった子羊の脳みその代わりにフレッシュチーズを用い、クリーム、エシャロット、にんにくなどを混ぜたチーズ料理。パンやじゃがいもにつけて朝食に好んで食べられた。
■セルヴェル・ド・カニュ。名前を見るとぎょっとするが、食べたらやみつきになりそうな美味しさ
また、リヨンの郷土料理には内臓料理が多くあり、肉体労働で貧しい絹織工に安価な料理として提供されていたといわれています。
ブションではもちろん、ボジョレーやコート・ドゥ・ローヌといった地元のワインといっしょに。

「食」の魅力を伝える町

美食の町リヨン。
食がその地域の観光的な魅力になるのは、食材の生産やその活用方法(調理・加工方法、提供方法)が地域の自然条件や歴史・文化的背景に依拠して独自の表情を見せるためといわれます。
フランスの食は地産地消が貫かれていて、その土地で採れるもので、その土地の食文化が築かれていることをリヨンの町は教えてくれます。日本人がフランスに魅了される理由のひとつといえそうです。
管理栄養士 吉野綾美
1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。