第五話 お父さんの健康診断結果から、コレステロールの働きを知ろうの巻

元気くん一家のミラクルミルクライフ

日本初! 食育小説「元気くん一家のミラクル ミルク ライフ」の第5回です。

健康診断のときに気になる数値の一つ「コレステロール」。元気くんのお父さんの結果はどうだったでしょう?

お父さんの健康診断結果から、コレステロールの働きを知ろうの巻

春休みで、日中体をいっぱい動かした元気くんと愛ちゃんは、すっかり夢の中、「早寝早起き朝ごはん」を実践しています。

お休みの間は毎日お仕事に出かけるお父さんとお母さんのために、おばあちゃんと3人で朝ごはんを作ることにしたので、いつもより早く6時に起きるのです。

おばあちゃんも自分の部屋に行って、静かになったリビングで、封筒から何かを取り出すお父さん。

「今日、健康診断の結果が出たんだ。お母さん、一緒に見てくれるかな?」

「どれ? あらー、コレステロールが少し高いわね。そろそろ気をつけなきゃいけない年になったのね。」

コレステロールは悪者ではない

「コレステロールって体に良くないんだろ?」

「それは誤解なの。体にとても大切なものなのよ。」

「え、食べちゃいけないものだと思っていたよ。」

「コレステロールは脂質の一種で、細胞膜の材料なの。生きるために必要なものだから、毎日、腸や肝臓で1000-1500mgも作られているのよ。」

「血液検査の結果、LDLコレステロール165mg/dl書いてあるぞ。それよりもたくさん体で作っているということか。」

「他にも神経細胞の鞘(さや)とか、脂質を消化に必要な胆汁酸、それからホルモンや、カルシウムの吸収を助けるビタミンDの材料にもなるの。」

「そんな大事なものなのに、どうして血液検査で高いと引っかかるんだ?」

「高脂血症って聞いたことある?今は脂質異常症と言うんだけど、中性脂肪やLDLコレステロールの値が高いと、血液の動脈硬化が進んで、心筋梗塞や脳梗塞の原因となる可能性があるの。」

「それは大変だ。子供たちのためにもまだまだ元気で働かなきゃ。もうひとつ、HDLコレステロールというのも書いてあるね。これは正常値の範囲だな。でもどうして2つの数値があるのかな。基準値もずいぶん違いがあるね。」

善玉コレステロールと悪玉コレステロール

「正常な値が40mg/dl以上と高いほうが良いHDLコレステロールは善玉コレステロール、140mg/dl未満と低いほうがよいLDLコレステロールは悪玉コレステロールと呼ばれているの。」

「HとLの違いはなんだい?」

「コレステロールは脂質だから、血液の中に溶けないの。血液を通って必要なところに運ぶために、たんぱく質と結びついているのよ。ちょっと難しいかな?」

「わかったぞ。運べる形に変身しているわけだ。」

「そうなの。HはHigh=高い、LはLow=低いよ。HDLコレステロールは高比重リポタンパク質、LDLコレステロールは低比重リポタンパク質。血液の中にあるときだけ、善玉、悪玉があるということなの。」

「細胞膜のコレステロールには善玉、悪玉はないんだね。」

「どちらのコレステロールもトラックの役目をしているのだけど、LDLコレステロールがたくさん血液中にたまってしまうと、渋滞して動かなくなってしまうのね。HDLコレステロールがたくさんあれば、一緒にLDLトラックを走らせてくれるのよ。」

「渋滞を解消しなければいけないんだね。それには食事や運動が大事なのかな?」「今日は夜も更けたから、次の機会にしましょうか!」

「そうだね。おばあちゃんも聞きたいかもしれないね。」

「牛乳・乳製品のコレステロールを気にしている人が結構いるのよ。」

管理栄養士のお母さんから

よく聞く「コレステロール」について、改めて確認してみましょう。

脂質異常症の診断基準(血清脂質値:空腹時採血)

 
LDLコレステロール 140mg/dL(以上)
HDLコレステロール 40mg/dL(未満)
中性脂肪(トリグリセリド) 150mg/dL(以上)

 (日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」2012年版より)
■参考:動脈硬化の病気を防ぐガイドブック(日本動脈硬化学会HP)
■Jミルク  ミルク解体新書 第4回 コレステロール学
※ このテーマは次回に続きます。お楽しみに。
管理栄養士・消費生活アドバイザー・フードコーディネーター 加藤明子
牛乳・乳製品の相談業務を平成6年より担当し、食育授業、料理講習会、勉強会等で講師を務めている。近年は小中学校における食育授業、学校栄養職員、教諭、PTA等の研修や講習会、大学での授業、フードコーディネーター養成講座の講師など、東京、埼玉、千葉、神奈川を中心に活動している。