第六話 お父さんの健康診断結果から、牛乳・乳製品とコレステロールの巻

元気くん一家のミラクルミルクライフ

日本初! 食育小説「元気くん一家のミラクル ミルク ライフ」の第6回です。

健康診断のときに気になる数値の一つ「コレステロール」。今回は食事から摂るコレステロールの身体への影響のお話です。

お父さんの健康診断結果から、牛乳・乳製品とコレステロールの巻

新学期が始まりました。元気くんは中学1年生になり、野球部に入部しました。

愛ちゃんは小学校4年生になりました。春休みに始めた、おばあちゃんとの朝食作りは、学校が始まってからも土曜日と日曜日に続いています。

美味しい、楽しい朝ごはん

今日は日曜日、メニューは前日に3人で話し合って決めます。

*くるみ入りヨーグルトパンケーキ (レシピはページの最後にあります)
*目玉焼き、ハム、スライスチーズ、レタス、トマト
*飲み物は各自好みのミルクドリンク

パンケーキの生地作りは愛ちゃんが担当。

最初のうちは混ぜ過ぎて練ってしまいふくらみが悪かったけど、切るようにサクっと混ぜて上手にできるようになりました。

ホットプレートなら一度に焼けます。焼くのは元気くんが担当。目玉焼きもホットプレートで一緒に作ります。

バターのいい香りがお部屋いっぱいに広がります。おばあちゃんは監督、笑顔で優しく見守っています。続いて愛ちゃんはお皿にハムと野菜を盛り付けて完成。

「くるみの食感がおいしいよ」とお父さん。

「牛乳の代わりにプレーンヨーグルトで焼くと不思議とサクッとするのよね。私はチーズとくるみの組み合わせが好き」とお母さん。

おばあちゃんは、パンケーキは甘いのが好きとイチゴジャムをつけています。

元気くんは全部乗っけて、マヨネーズで豪快に。

愛ちゃんはケチャップでデコレーション。

楽しい朝ごはんになりました。後片付けも二人で手分けして頑張っています。

食事とコレステロール

大人はカフェオレを飲みながら、食後にゆったり。

「ちょっと食べ過ぎちゃったかな」とお父さん。

「私もお腹いっぱい」とおばあちゃん。

「今までは食事のコレステロールを気にしたことはなかったけど、気をつけないといけないかな。」

「食事から摂るコレステロールは1日約300mgと言われているの。肝臓などで1000~1500mg作られているのはこの前話したでしょ、覚えてる?」 →「第五話 お父さんの健康診断結果から、コレステロールの働きを知ろうの巻」参照

「ああ、お母さん。細胞膜を作ったりする大事な栄養素だったよね。」

「ええ、そう。たくさん食べたら、体内で作るのを減らす調節機能が備わっているの。でも人によっては調節がうまくいかなくて、食べたコレステロールに敏感に反応して上がってしまうタイプの人もいるの。」

「ということは、食事とは関係なく高くなってしまう人もいるということか。」

「ええ、特に女性は閉経を迎えると、高くなる人が多いわね。」

「私もそうだった。今は病院で薬をもらって飲んでいるよ。」とおばあちゃん。

「でも気をつけてね。極端にコレステロールを摂らないようにすると、体は飢餓状態になって、必要以上に作ってしまって、かえってコレステロール値が上がった例もあるそうなの。」

「卵は多いんだよね。いくらなどの魚卵やうなぎ、レバーなんかも多いと聞いたけどしょっちゅうは食べないもんね。ちょっとは勉強したんだよ。」とお父さん。

牛乳・乳製品でコレステロールは上がる?

「前から気になっていたんだよ。バターやチーズは食べないほうがいいって聞いたんだけど、どうなの?」とおばあちゃん。

「よく聞かれるわ。平成25年の国民健康・栄養調査の結果では牛乳・乳製品から摂っているコレステロール1日15mg。1日の摂取量306mgの約1/20しかないの。今日、パンケーキや卵を焼くのに使ったバターは20gよ。5人で割ったら1人4gだからコレステロールは8mg。」

「スライスチーズも1枚食べたな。」

「1枚20gとして16mgよ。食品の栄養価は100g当たりで表示してあることも多いけど、チーズやバターを1度に100gはまず食べないでしょ。1回で食べる量では多くないの。牛乳も乳脂肪3.8%、成分無調整のもので、大きめのコップ1杯200ml飲んで25mg(*1)。低脂肪や無脂肪のものにすれば乳脂肪の量に比例して少なくなるわ。」

「僕たちの食べる量では、心配いらないね。」

「最近の研究報告では、女性は牛乳やヨーグルト、チーズを食べている人の方が善玉のHDLコレステロールが高いというデータがあるのよ(*2)。 また、HDLは適度な運動をしたり、禁煙によって高くなることがわかっているから、生活習慣も大切ね。」

「今日は天気もいいから、早速、子供たちと出かけて体を動かそう。元気、久しぶりにキャッチボールをやらないか?」

「やるやる。」

「愛も、おばあちゃんとお散歩行こう。公園のハナミズキがキレイだって。」

「じゃあ、みんなでお弁当作って出かけましょう!」

管理栄養士のお母さんから

食事摂取基準から、コレステロールの基準値がなくなりました

5年おきに改定されている日本人の食事摂取基準2015年版では、コレステロールの基準値がなくなりました。
2010年版では18歳以上の男性は750mg未満、女性は600mg未満の基準値が設定されていましたが、科学的根拠が得られなかったそうです。
また、2015年5月1日に日本動脈硬化学会が「高値となった血中LDLコレステロールを減らすためには、生活習慣、運動、食事など包括的に修正することが大切であり、コレステロール摂取のみを制限しても改善はほとんど期待できない。」と声明を発表しています。

コレステロール摂取量に関する声明 2015年5月1日 日本動脈硬化学会のサイトへ

(*1) 食品1食あたりのコレステロールの量

牛乳とコレステロール  日本乳業協会のサイトへ
食品1食あたりのコレステロールの量がわかります。

(*2) 牛乳・乳製品とHDLコレステロールについて

女性では、牛乳・乳製品の摂取量が多いほど、「中性脂肪」は低く、善玉コレステロールである「HDL」は高まる結果となりました。

コレステロールについての基礎知識はこちら

愛ちゃん特製「くるみ入りヨーグルトパンケーキ」

直径20cmくらい2枚分

<材料> 
・ホットケーキミックス 150g
・卵  1個
・プレーンヨーグルト 1/2カップ
・スキムミルク 大さじ3
・くるみ 40g
・バター 10g 
・お好みで 
 スライスチーズ、ハム、ウィンナー、
 卵(目玉焼きやスクランブルエッグ)
 レタス、トマト、ジャム など
 あんこや生クリームでも
<作り方>
1.ホットケーキミックスにスキムミルクを加え、よく混ぜる。溶きほぐした卵、プレーンヨーグルトも加えて、木べらなどで縦に切るように混ぜる。
2.くるみは5mm角に刻んで、①に混ぜる。
3.生地は2回に分けて焼く。
フライパンにバターの半量をいれ、焦がさないように溶かす。②の半量を流し入れ、表面の中心に気泡ができるまで弱火でゆっくり焼いたら、裏返して色よく焼く。ぬれぶきんにフライパンの底をつけて冷ましてから、バターを溶かし、残りの生地を流し入れ、同様にもう1枚焼く。
*くるみは包丁を使わなくても、手でちぎれます。 
※ このテーマは前回からの続きです。下のリンク先からご覧ください。
管理栄養士・消費生活アドバイザー・フードコーディネーター 加藤明子
牛乳・乳製品の相談業務を平成6年より担当し、食育授業、料理講習会、勉強会等で講師を務めている。近年は小中学校における食育授業、学校栄養職員、教諭、PTA等の研修や講習会、大学での授業、フードコーディネーター養成講座の講師など、東京、埼玉、千葉、神奈川を中心に活動している。