第29回 冬の定番料理、ラクレット その2

ミルクの連載コラム ミルクの国の食だより

コラム、「ミルクの国の食だより」の第29回をお送りします。
前回に続き、フランスのチーズ料理「ラクレット」の紹介です。みんなで囲む「ラクレットグリル」でカラダはポカポカ。会話が弾めば心まで温まります。

チーズ料理の中でもラクレットは別格

冬、自宅や友人宅で必ず一度は食べるラクレット。
「今週末はラクレット!」「私もこの前食べた!」と、日常会話もラクレットで盛り上がる冬のフランス。
いろいろなチーズ料理がある中、フランス人にとってラクレットは別格のようです。

ラクレットの準備

さて、ラクレットに必要なものはこちら。
・ラクレット専用のグリル
ラクレットを溶かす専用電熱器。これが、フランスならどこの家庭にもあるんです。
・チーズ
漬物のような独特の香りで、”牧場の臭い”とも例えられる強い臭いが特徴で、加熱するとたまらなく美味しいラクレットチーズ。
専用の鉄板に乗るよう、厚さ5ミリ程度にスライスしておきます。
フランスのスーパーでは、この時期になるとスライスしてあるものが売られています。
・ジャガイモ
あらかじめ茹でるか、ふかしておきます。
・ハムやサラミ
シャルキュトリーと呼ばれる生ハム類を用意。
以上、たったの4品!
ラクレット用のグリルを中央に置いて、ジャガイモ、チーズ、ハムを用意するだけ。なんとも手間がかかりません。
しかし、材料はすべてフランスのおいしいものばかり。
だからこそ、シンプルな形で味わえるのです。
■ラクレットの材料-じゃがいも、チーズ、ハム類。右上にあるスコップのような一人用鉄板にチーズやハムをのせてグリルで炙る

おしゃべりを楽しみながら待ちましょう

あとは各自、一人用の専用小型鉄板にチーズを置き、ラクレット用のグリルに差し込み溶けるのを待ちます。
この待ち時間にも会話が弾みます。
チーズがほどよく溶けたら、じゃがいもにのせて食べたり、生ハムと一緒に食べたり。
「まだかな~」「あっ、もうチーズいいんじゃない?」と教えてもらったり、「あと、もう1回」「いや、これが本当に最後!」なんていい合いながら、何回もフライパンを入れます。
ずっと同じものを食べているのに、なぜか止まりません。
■ラクレット専用のグリル。丸い天板の裏に電熱器がついていて、下でチーズをあぶり、上にじゃがいもをのせて保温

ラクレット=日本のお鍋?

フランスでは、例えば中華レストランへ行っても、各々一皿料理を頼んで、シェアする食文化ではないのですが、このラクレットは、皆で同じものをつつきあってワイワイと食べるのでとても楽しいです。
それは、まるで日本のお鍋のような存在。
美味しいものを食べながら家族や友人と楽しい時間を共有するのは、万国共通です。
寒い冬の日、ふうふう、はふはふしながらみんなで食べれば、からだがあったまるだけでなく、こころまであったまります。
■ラクレットチーズもナチュラル、スモーク、こしょう入りなどいろいろ。飲み物は白ワインが合う
■熱々に溶けたチーズをじゃがいもにかけて
管理栄養士 吉野綾美
1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。