第30回 フランスの離乳食事情 その1

ミルクの国の食だより

コラム、「ミルクの国の食だより」の第30回をお送りします。
赤ちゃんの「離乳食」。日本ではお粥から始めることが多いのではないでしょうか。さて、フランスでは?
今回は人の食生活の始まりである「離乳食」についてお送りします。

2016年が始まりました。
気分も一新、何か新しいことを始めたくなる新年。
そこで、我が家の場合は離乳食。
昨夏に誕生した次男坊がそろそろ離乳食を始める時期になりました。
赤ちゃんにとっては毎日が初めての連続ですが、離乳食は彼にとっては大きなステップ、新しい挑戦の幕開けです。

そもそも「離乳食」とは?

「離乳」は文字通り、「乳」(=おっぱいやミルク)から離れる過程のことを意味します。
生まれてから母乳や育児用ミルクで育ってきた赤ちゃんが、母乳、ミルク以外の食べ物に慣れ、固形食を食べられるようになるまでの移行期を離乳期といい、離乳食はその期間に適した食べ物のことをいいます。
一方、フランス語で離乳食のことを表す言葉は”La Diversification allimentaire”。
直訳すると「食事の多様化」で、「離乳食によって栄養源を多様化させていくこと」という意味で使われます。
同じことを言っているのですが、日本語で「離乳食を始めましたか?」という質問が、フランス語では「食事の多様化を始めましたか?」というふうになると、ずいぶんニュアンスが異なりますね。

離乳=食の多様化

また、「離乳」というと母乳やミルクを止めていく準備と思われがちですが、決してそうではありません。
離乳食を始めるというのは、赤ちゃんが成長するのに、母乳やミルクだけでは栄養が足りなくなってきたのを補うということで、WHOガイドライン「乳幼児の栄養法」では、「補完食(英語原文complementary feeding)」という言葉を使っています。
フランス語の表現の方が意味合いは近いようです。
そして、言葉だけではなく、日本とフランスでは離乳食のすすめ方も異なります。
例えば、日本であれば、赤ちゃんが母乳やミルク以外で最初に口にするのは、米をすりつぶしたお粥ですが、フランスであれば、ピュレにしたニンジンが初めての食べもの、という具合。 
■フランスで赤ちゃんがはじめて口にする食べもの、にんじんのピュレ

土地の食文化が反映される離乳食

住む国によって、違うのは当然といえば当然。
育った環境で当たり前に感じる食風景が大きく変わります。
どんな食材を使うか、どんな味を覚えさせるのか。
大人が食べているものを、赤ちゃんもいずれいっしょに食べれられるよう訓練していく過程なのだから、暮らす土地の食文化が大いに反映される離乳食。
そのひとさじから一生続く食生活が始まるわけです。
■離乳期であっても、赤ちゃんにとって乳が主要栄養源であることはかわらない
※このテーマは次回に続きます。お楽しみに。
管理栄養士 吉野綾美
1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。