体調がよくないときのお粥に代わる食事は?

ミルクの国の食だより 連載一覧

コラム、「ミルクの国の食だより」の第87回をお送りします。お腹の調子が悪いときの食べ物は、日本はおかゆですが、さて、フランスでは?

冬の到来

年が明けて寒さが増した1月中旬、リヨンでは今シーズン初めて積雪がありました。

就寝頃から降り始め、明け方には一面真っ白な雪景色。
子供たちは嬉しさのあまり早朝から飛び起き、雪遊びの支度をして朝早くから近くの公園に出かけていきました。
まさに「子供は風の子」とはよく言ったものです。
  • リヨンで積雪があった1月17日。日曜日のため、子供は朝早くから雪遊び。外出制限中の閉塞感を一掃してくれたひと時で公園は家族連れで賑わった

ウイルス性胃腸炎は冬に大流行

さて、昨年から猛威を振るっているコロナウィルスによって影を潜めている感じがしていますが、冬の間、フランスで大流行するのがウイルス性胃腸炎です。

ロタでもノロでも全部まとめてガストロ(Gastro-entérite)と呼ばれ、激しい嘔吐と水下痢が続きます。
同じく冬に流行するインフルエンザには罹らなくてもガストロには絶対に罹るという人も多くいるくらいです。

学校のクラスに一人感染者が居れば、クラス全員が罹ってしまうこともあります。
また、ガストロの診察に行って抵抗力が弱っている為にインフルエンザをもらってくるなども季節柄、よく起こることです。

さて、お腹をこわしたり、具合がよくない時、日本では大抵、お粥を食べますよね。白粥だったり、梅干を添えたり、卵を落としたり。
フランスではそんな時に何を食べて乗り越えるのでしょうか。

まずは「シロップ水」で脱水症状を予防

私がガストロで苦しんでいた時、医者にまずすすめられたのがシロップ水。

日本のカキ氷にかけるような甘いシロップですがフランスでは色々なフレーバーがあって、普段は水や炭酸水で薄めたり、カクテルに入れたりして、飲み物としてフランス国民に親しまれています。
激しい嘔吐と下痢が続くときは脱水症状を防ぐために、この水で割ったシロップをスプーンで一杯ずつ飲むようにいわれました。

日本ではスポーツドリンクを飲む方も多いと思いますが、こちらではそういった習慣はありません。
スポーツドリンクの代わりにコーラを飲んで撃退するという民間療法もあるようですが、身近に実践している人がいないので、私自身は試したことはありません。

お腹にやさしい「リ・オレ」は甘いミルク粥

そして、症状が治まってきたらでんぷん質の食品を摂ることがすすめられます。

最も手軽で定番なのが長時間茹でたパスタ。表記された茹で時間よりも倍以上の時間、くたくたになるまで茹でたパスタは消化がよく、日本のうどんのような感覚でしょうか。
パスタと一緒にジャンボンブランという脂肪分が少ないハムを添えることもあります。

また、裏ごししたじゃが芋にミルク、バター、クリームなどの乳製品を加えたピュレも体調の悪いときに食べられる料理のひとつです。
日本のマッシュポテトよりも口当たりがなめらかで、普段は肉や魚の付け合せとして食べられていますが、入院時の食事としてもよく出されたりします。

そして、おなかがゆるい時には米もすすめられます。
入手しやすいインディカ米は粘り気が少なくお粥にはならないため、ぐつぐつと長く茹でてできるだけやわらかくしてから食べます。

またデザートで人気の「リ・オレ」は、米とミルク、砂糖で作らているので、糖分、でんぷん質の他、ミルクに含まれるミネラル分も摂取できるので、回復中のお腹にやさしい食べ物です。
甘いミルク粥といった感じです。

ちなみに普段、日本食が中心の我が家では、頻繁に献立に米が登場するので、便秘になるのではとよく義母に心配されます。
フランスでは米もそうですが、日本では一般的に便通がよくなるとされているバナナも、便秘の時には食べてはいけない食品。

逆にいえば、これらの食品は下痢を抑える働きがあるということになります。
日本での一般的なとらえ方と違っていたので、暮らし始めた当初は少し驚いたものです。
  • 体調の悪いときは、お腹にやさしいミルクと米の甘いデザート「リ・オレ」がおすすめ

コロナ対策の効果でインフルエンザは減少

病気のときに食べる食事というのは国によってだけでなく、家庭によっても違うかもしれません。
いずれにせよ、やはり食べたいもの食べられないのは辛いものです。

コロナウィルス感染予防対策のため、フランスでマスク着用が義務化され、手洗いが習慣化されたこともあり、今シーズンはフランス全体でガストロ、インフルエンザの罹患者は例年よりはるかに少なく推移しています。
しかし、油断は禁物。
手洗い、うがい、咳エチケットを心がけ、バランスよい食事をし、寒くても適度に運動して(子供のようにはいきませんが…)、免疫力を高め、この冬を乗り切っていこうと思います。
管理栄養士 吉野綾美

1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。