ミルクとお米のデザート「リ・オレ」- 1

ミルクの国の食だより 連載一覧

コラム、「ミルクの国の食だより」の第95回をお送りします。今回はフランスのデザート「リ・オレ」のおはなしです。日本人の大好きな「お米」がなんとデザートに!

秋の味覚がおいしい季節

街路樹のマロニエが山吹色に色づく10月のリヨン。

高く澄んだ青空の下、日本と同じようにきのこやくるみ、ブドウなど秋の味覚がおいしい季節です。

日本では特に新米がおいしい時季ですね。ツヤツヤでピカピカの炊きたての新米は、日本人であれば想像しただけでおなかが鳴ってしまいそうです。

フランス人も米を食べますが、和食のように「炊く」のではなく、パスタのようにゆでて食べるのが一般的です。

主食ではなく、メインディッシュの付け合わせとして添えられることが多いですが、前菜としてライスサラダにしたり、主菜・副菜を兼ねたパエリアやリゾットにしたり。さらにはデザートとしても米料理は人気があります。

 

  • ミルクとお米のデザート「リ・オレ」はフランスのママンの味。コトコトとゆっくり時間をかけて煮るので、ミルクのクリーミー感と米のつぶつぶ感が相まって美味、そのうえ腹もちが良い。作る時間がない人のために、スーパーのデザートコーナーでも手軽に買えるのがうれしい

「リ・オレ」って癖になる味?

フランスでお米のデザートといえば、米(riz)をミルクで(au lait)煮た「リ・オレ(riz au lait)」。

レストランのメニューでも見かけますが、どちらかというとお母さんやおばあちゃんが作る家庭料理で、フランス人にとって子ども時代を思い出させる味。

米とミルク、砂糖を混ぜて鍋で煮るシンプルなデザートで、日本人的感覚からいうと、抵抗感がある人もいるかもしれません。

実際、私もしばらく食べず嫌いでした。

ある日、ミルク好きな子どもたちと、ミルク嫌いなフランスの夫がスーパーで買ったリ・オレをおいしそうに食べているのを見て、試しにもらって何口か食べてみると、これが甘くてクリーミー、ミルク臭さもなく米のつぶつぶ感が心地よく、予想外の癖になりそうなおいしさだったのです。

世界にある「ミルク」と「お米」のデザート

ミルクとお米の組み合わせは日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、リ・オレのようなデザートはここ酪農大国フランスだけでなく、ヨーロッパ各国、アフリカ、アジア、アメリカ、おおむねどこの国でもあります。

それも1ヶ所から世界に広がったのではなく、異なる地域でそれぞれ発生した料理だとか。

食料が豊富にない時代でも、火を使えて鍋がある家庭なら誰でも、この腹もちが良く栄養たっぷりな食事を作ることができました。

その土地土地に育つ米や他の穀物と、貴重なたんぱく源だった牛、ヤク、山羊など、土地土地の家畜のミルクを利用した料理は、生きていくための最低限の栄養がとれる理にかなった利用法といえます。

イギリスでは「ライス・プディング」、スペインでは「アロス・コン・レチェ」、インドでは「キール」、トルコでは「ストゥラチ」…

世界中で手に入り、必要とされていた食料だからこそ、ミルクとお米のデザート「リ・オレ」は、ここまで世界中の国々で食べられているのだと思います。


※このテーマは次号に続きます。
管理栄養士 吉野綾美

1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。