第二十話 発酵の不思議(3)

元気くん一家のミラクルミルクライフ

日本初! 食育小説「元気くん一家のミラクル ミルク ライフ」の第20回です。

前回に続き、発酵食品のお話です。最近は国産チーズも充実してきて、チーズ工房が300くらいもあるそう。アルプスの少女ハイジのチーズで有名なラクレットも、国産のものが買えるようです。

チーズショップをみてみると・・・

今日は家族全員でお出かけ、帰りにデパートの食品売り場に寄りました。
「お母さん、見て。チーズがいっぱいある。」愛ちゃんがチーズショップを見つけました。

「すごい!こんなにたくさんの種類のチーズを見るのは初めてだよ。」元気くんも目を輝かせています。

「試食もありますよ。」店員さんが声をかけてくれました。

「どれどれ、今夜のおつまみにいいなー。」とお父さん。

試食をして購入

愛ちゃんとおばあちゃんが美味しいと言ったイタリアのモッツァレラと、元気くんがテレビで見て食べたいと言っていた北海道の十勝で作られたラクレットを買って帰りました。

「国産のチーズが結構あって驚いたよ。」とお父さんが言うと

「最近、チーズ工房が増えていて300くらいあるんですって。」

「早く食べようよ。」「わかったわ。準備するわね。」

料理が完成

モッツァレラはそのままトマトと一緒に「カプレーゼ」、そしてもう一品、熱々の「生ハムとソラマメのパスタ」に乗せました。
パスタに絡めていただきます。

「ラクレットはじゃがいもにかけた料理もラクレットというの。アルプスの少女ハイジのチーズで有名で、最近ブームなの。専用のヒーターがあるんだけど我が家には無いからフライパンで少し焦げ目も付けてかけましょう。じゃがいもの他、レンコン、にんじん、芽キャベツも用意したわ。今日買ったのはそのまま食べても美味しいと聞いたから、まず、カットしただけのを食べてみて。」

楽しい夕食が始まりました。
  • ■モッツァレラを乗せた「生ハムとソラマメのパスタ」
    ※ページの最後に作り方があります。

チーズの美味しさの秘密

「チーズパーティーだね。すっごく美味しい。どうしてヨーグルトは酸っぱくなるのに、チーズはならないの?」愛ちゃんが聞きました。

「ヨーグルトと同じような酸味があるものもあるのよ。チーズはものすごく種類があるでしょ。でもいい質問。」

「作り方が違うからじゃない?」元気くんが答えを予想しました。

「そうね。チーズは乳酸菌とレンネット(凝乳酵素)を乳に加えて固めてから、ホエーという水分を除くの。その時に水に溶ける乳糖がホエーの方に行ってしまうから、乳酸菌が酸味の元になる乳酸を作らないの。」

「チーズの旨味は乳酸菌が作るのか?」今度はお父さんが尋ねました。

「ええ、チーズのたんぱく質、カゼインを分解してアミノ酸にするの。乳脂肪もチーズの美味しさに関係するけど。」

「かつお節や昆布の旨味もアミノ酸と聞いてるよ。」とおばあちゃん。

「旨味が料理の美味しさをパワーアップするんだね。納得!」じゃがいもを頬張って飲み込んで元気くんが言いました。

「チーズの種類によっては発酵熟成にはカビなどの微生物の力も加わるの。」

「カマンベールチーズやブルーチーズなら愛も知ってるよ。」

チーズを加熱すると、とろけるわけ

「僕、もう一つ気になることがある。卵や肉、魚は火を通すと硬くなるのに、チーズはなぜ溶けるの?」

「チーズも魔法がかかるんだ。」愛ちゃんの言葉に皆が笑いました。

「お母さんも不思議で調べたことがあるの。溶けないチーズもあるんだけど、パスタに乗せたモッツァレラは糸を引いてよく伸びるでしょう。加熱するとアミノ酸の鎖がほぐれて網目状になるの。愛ちゃんにもわかるように説明すると、自転車のかごに付けているネットが伸びるのと同じような感じよ。

「今日のチーズはナチュラルチーズ。これを溶かして作るのがプロセスチーズ。スライスチーズや6P、ベビーチーズなどが火を通しても溶けないのは、一度溶かしたことで鎖が切れてしまったからなの。」

「ラクレット、そのまま食べたのも美味しかったけど、溶かすと別の美味しさが引き出されるね。そしてちょっと焦げてカリカリになったところがまた格別だ。」

「お父さんもチーズの魅力にはまったね。僕ももっとチーズのことを知りたくなった。」

「愛はもっともっといろいろなチーズを食べたい。」

管理栄養士のお母さんから

カビを利用して作られるチーズ

■牛乳乳製品の知識 ナチュラルチーズについて
http://www.j-milk.jp/findnew/chapter3/0302.html (Jミルク 牛乳乳製品の知識 find newへ)

カビには有害なものだけでなく、役に立つものもあります。
カマンベール、ブルーチーズはカビを利用した食品の代表です。
これらのチーズに利用されるカビは、ペニシリウム属のロックフォルティなどが純粋培養したものです。食べても害がないばかりでなく、チーズの中のたんぱく質や脂肪をよく分解し、独特の風味や組織をつくり出すのになくてはならないものです。

「生ハムとソラマメのパスタ」レシピはこちら

 <材料>4人分
生ハム ・・・・・・・100g
ソラマメ さやつき ・ 600g
にんにく ・・・・・・ 1片
とうがらし ・・・・・ 1本
パスタ・・・・・・・320g
塩・・・・・・・・・適量
オリーブ油・・・・・大さじ2
ゆで汁・・・・・・・大さじ4
コンソメ顆粒・・・・小さじ1
こしょう・・・・・・少々
ハーブ塩・・・・ ・少々
一口モッツァレラ・・100g

1.生ハムは食べやすい大きさに切る。ソラマメはさやから出して、2分ほどゆでて、粗熱が取れたら皮をむいておく。
2.にんにくはみじん切り、とうがらしは種を除き、小口切りにする。
3.たっぷりの湯を沸かし、塩を入れ、パスタをゆでる。ゆで汁を大さじ4取っておく。
4.生ハム、そらまめ、モッツァレラは飾り用に少し取っておく。
5.フライパンにオリーブ油を熱し、トウガラシを軽く炒め、ソラマメをサッと炒める。
6.ボウルに移してパスタと茹で汁を加え、コンソメ顆粒、こしょう、ハーブ塩で味付けをし、生ハム、モッツァレラも加える。
7.皿に盛りつけ、飾りに取っておいた4を散らす。

※フライパンに生ハムを入れてしまうと火が通り過ぎてしまうので、ひと手間かかりますがボウルに移して作りましょう。
管理栄養士・消費生活アドバイザー・フードコーディネーター 加藤明子
牛乳・乳製品の相談業務を平成6年より担当し、食育授業、料理講習会、勉強会等で講師を務めている。近年は小中学校における食育授業、学校栄養職員、教諭、PTA等の研修や講習会、大学での授業、フードコーディネーター養成講座の講師など、東京、埼玉、千葉、神奈川を中心に活動している。