ウワサ31 たんぱく質を摂りすぎると骨粗しょう症になる?

牛乳の気になるウワサをスッキリ解決!

ウワサ31 たんぱく質を摂りすぎると骨粗しょう症になる?

カルシウムをしっかり摂っていれば、たんぱく質摂取はむしろ骨の健康につながります。

牛乳の飲みすぎはたんぱく質の過剰摂取を招き、骨粗しょう症になるというウワサがあるようです。
専門家の中にも「たんぱく質の過剰摂取が骨粗しょう症のリスクを高める」と唱える人がいます。その説によると…。
骨は、新しい骨をつくる「骨形成」と古い骨を壊す「骨吸収」を絶えず繰り返しています。しかし、たんぱく質(特に含硫アミノ酸を多く含む動物性たんぱく質)を大量に摂ると、軽度の代謝性アシドーシス(血液が酸性に傾いた状態)を招き、骨形成が阻害されます。その一方で、骨吸収が促進し、骨粗しょう症や骨折リスクが高くなるというのです。

● たんぱく質摂取と骨粗しょう症に因果関係は認められない
専門家の間でも議論があることから、近年、たんぱく質摂取と骨の健康の関連性について、複数の大規模なシステマティック・レビューやメタ解析によって検討が行われました。その結果、食事のバランスがとれていれば、たんぱく質摂取と骨粗しょう症に因果関係は認められませんでした。むしろ、たんぱく質の摂取は骨の健康に寄与することが示されました。動物性たんぱく質、植物性たんぱく質のリスクの差も認められませんでした。
「骨粗鬆症、変形性関節症、筋骨格疾患の臨床的および経済的側面に関する欧州学会」と「国際骨粗鬆症財団」は、この結果をさらに分析。2018 年9月、たんぱく質摂取の骨の健康に対する有益性と安全性についての合意文書を発表しました*1。合意文書に示された結論は次頁のとおりです。
  • 高たんぱく質食は、摂取源の種類(動物性か植物性か)にかかわらず、骨に有害な影響を与える原因にはならない。
  • カルシウム摂取量が適切なら、たんぱく質を推奨量を超えて摂取しても、加齢に伴う骨量減少、大腿骨近位部骨折のリスク低減にむしろ有益である。
  • 高齢者のたんぱく質摂取については、不十分な摂取のほうが、過剰摂取よりも深刻な問題を招く。

これまでに、「たんぱく質とカルシウムの両方を含む牛乳・乳製品の摂取が、骨形成と骨吸収のバランスを整え、カルシウム代謝調節ホルモンや骨代謝マーカー、骨密度によい影響を与える」という結果が、信頼のおける数々の研究から報告されてきました。今回の合意文書では、これら研究結果に着目。カルシウムをしっかり摂っている場合、たんぱく質の摂取が骨の健康にも結びつくとする結論の大きな根拠となりました。

*1 「骨の健康に対する食事性たんぱく質の有益性と安全性──骨粗鬆症、変形性関節症、筋骨格疾患の臨床的および経済的側面に関する欧州学会および国際骨粗鬆症財団により承認された、専門家による合意文書」
Rizzoli R, et al. Benefits and safety of dietary protein for bone health̶an expert consensus paper endorsed by the European Society for Clinical and Economical Aspects of Osteopororosis, Osteoarthritis, and Musculoskeletal Diseases and by the International Osteoporosis Foundation. Osteoporos Int. 2018;29(9):1933‒1948.

●疫学研究とメタ解析については、「ちょっと気になる基礎知識 疫学研究って?」にて詳しく掲載しています。疫学とはどのような研究であり、メタ解析はどのように行われるのか、メタ解析図の見方などいついて分かりやすく解説しています。ニセ科学にだまされないために、基礎知識を学んで情報を読み解く力をつけよう!