『給食がない日』の子どもの栄養問題をどう解決する?
~カルシウム不足と乳摂取の関係性からその手立てを考える

全国栄養士大会(採録)一覧

女子栄養大学 栄養学部教授 上西一弘

本レポートは、2023年6月23日〜9月3日まで(公社)日本栄養士会が開催した2023年度全国栄養士大会オンラインにて、Jミルクが共催したセミナーの内容をまとめたものとなります。

学校給食はカルシウム供給量が高めに設定されており、献立には牛乳が入っています。これは成長期にある子どもたちが十分にカルシウムを摂取し、骨を育て、将来にわたって健康な生活を送ることができるようにとの考えからです。一方で、給食がない日はカルシウム摂取量が大幅に不足する子どもが多く、特に夏休みなどの長期休みに不足した状態が続くと、健康への影響も懸念されます。給食におけるカルシウム摂取の重要性と牛乳が果たしている役割、そして給食のない日にも牛乳を飲むことの意義について解説します。

学校給食には、食事の提供だけではなく、さまざまな役割がある

 現在の日本の学校給食は、主食(ご飯)、主菜、副菜に牛乳と果物がつくのが基本的なパターンです。このように、主食、おかず、牛乳からなる給食を「完全給食」といいます。

 文部科学省による学校給食実施状況等調査(令和3年度)によると、国公私立学校において学校給食を実施している学校数は全国で29,614校であり、実施率は95.6%です。また、完全給食の実施率は94.3%であり、前回調査(平成30年)に比べると、小学校、中学校及び中等教育学校(前期課程)において増加していました。このように学校給食は学校に通うほとんどの子どもに提供されていることから、子どもたちの食生活において学校給食の占めるウエイトは非常に大きいといえます。

 では、学校給食の意義とはなんでしょうか。学校給食におけるエネルギーおよび各栄養素の摂取量は、文部科学省の「学校給食摂取基準」で定められていますが、令和2年に発表された「学校給食摂取基準の策定について」の序文には次のような文言があります。
「学校給食は、成長期にある児童生徒の心身の健全な発達のため、栄養バランスのとれた豊かな食事を提供することにより、健康の増進、体位の向上を図ることはもちろんのこと、食に関する指導を効果的に進めるための重要な教材として、給食の時間はもとより各教科等において活用することができる。また、学校給食は、児童生徒が生涯にわたり健康な生活を送るのに不可欠な、栄養バランスのとれた食事のモデルとして、家庭における日常の食生活や、児童生徒の日常又は将来の食事作りの指標ともなるものである。このため、日々の学校給食については、日本における食事のモデルとしての教材となるよう、献立作成において配慮することが求められる」
 つまり、学校給食は栄養バランスのとれた食事を提供するだけではなく、食育の場でもあり、毎日の給食を食べることは、将来にわたって健康な生活を送るための食習慣を身につけることにもつながります。また、近年は新型コロナウイルス感染症流行の影響で「黙食」が実施されていますが、友人と会話をしながら食事を楽しむ場としても給食は重要です。このように、学校給食にはいろいろな役割があるのです。

学校給食では1日の1/3量より多めに設定されている栄養素もある

 学校給食はほとんどの場合、昼食として提供されています。1日3食のうちの1食なので、エネルギーや各栄養素は1日に摂取すべき基準量の1/3量を供給できれば十分だと考えられますが、実際にはどのくらいの量が供給されているのでしょうか。

 「学校給食摂取基準(令和3年4月改正)」を見ると( 表1 )、エネルギーの基準値は6〜7歳(小学生1、2年生)が530kcal、8〜9歳(小学校3、4年生)が650kcal、10〜11歳(小学校5、6年生)が780kcal、中学生が830kcalであり、いずれも1日基準量に対する33%、まさに1/3量に定められています。食塩はとりすぎないほうがよいことから、33%未満の設定です。


 栄養素によって重みづけは異なっており、マグネシウム(小学生)、ビタミンCが1日基準量の33%である以外は、マグネシウム(中学生)、鉄、ビタミンA、ビタミンB1 、B2は40%、食物繊維は40%以上と少し高めであり、カルシウムに至っては50%と、1日摂取基準量の半分を給食でとれるような設定になっています。

 なぜ、給食におけるカルシウムの摂取基準がこれほど高いのか、その必要性を裏付ける研究結果があります。

 朝倉らは、給食の「ある日」と「ない日」の栄養素摂取状況の違いを明らかにする目的で、平成26年11〜12月に全国12県の 児童生徒1190人を対象として食事状況調査を行いました。
 調査方法は、各児童生徒に連続しない3日間(うち2日間は学校給食のある日、1日は週末の学校給食のない日)の食事記録を提出してもらうというもので、その食事記録をもとに、一人一人の習慣的な1日あたりの栄養摂取量を推定しました。そして、「給食あり」と「給食なし」の日の1日の栄養摂取量が、食事摂取基準の「目標量」および「推定平均必要量」に適合しているかどうかを検討しました。

 目標量の検討から見てみましょう。目標量とは、「生活習慣病の発症予防を目的として、特定の集団において、その疾患のリスクや、その代理指標となる生体指標の値が低くなると考えられる栄養状態が達成できる量として算定し、現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量」のことで、たんぱく質、脂質、炭水化物、食物繊維、食塩、カリウムについて 表2 のように定められています。
 図1 は、「給食あり」および「給食なし」の日の栄養素の摂取量が、食事摂取基準の目標量に"適合していない" 子どもの割合を示したものです。たんぱく質、脂質、炭水化物は、目標量の範囲よりも多い、あるいは少ない場合に不適合となり、食塩は目標量より多い場合に、食物繊維、カリウムは目標量より少ない場合に不適合となります。グラフを見ると、男女とも食塩を除く栄養素において「給食なし」の日のほうが「給食あり」の日よりも、目標量に適合しない子どもが多いことがわかります。

 特に食物繊維とカリウムについては「給食なし」の日に不足する子どもが多いことが示されました。一方で食塩は「給食あり」「給食なし」ともに不適合率が90%を超えていることから、ほとんどの子どもが給食の有無に関係なくとりすぎており、家庭においても減塩に留意する必要があります。

「給食なし」で牛乳を飲まない日はカルシウムが顕著に不足している!

 次に、推定平均必要量に対する検討です。
 推定平均必要量とは、「ある対象集団において測定された必要量の分布に基づき、母集団における必要量の平均値の推定値を示すもの」と定義されており、小中学生などの集団を対象にした場合には、この推定平均必要量を充たしている人がどれくらいいるかということが重要な指標となります。推定平均必要量は14種類の栄養素について定められています( 表3 )。
 図2 は、「給食あり」および「給食なし」の日の栄養素摂取状況が、推定平均必要量に適合していない、すなわち必要量を充たしていない子どもの割合を示しています。たとえば、たんぱく質は男女とも「給食あり」「給食なし」ともに0%なので、給食の有無に関係なく必要量を充たしており、銅も給食の有無に関係なくほとんどの子どもが足りています。しかし、ほかの栄養素については、必要量に充たない子どもが「給食あり」よりも「給食なし」の日で顕著に多く、学校給食がいかに子どもたちの栄養改善に寄与しているかが見てとれるのです。先ほどの目標量の検討結果からも同じことがいえます。

そして、栄養素のなかでも給食の有無による違いが最も顕著なのがカルシウムであり、必要量に充たないのが「給食あり」の日では男子35%、女子32%であるのに対し、「給食なし」の日では男子75%、女子78%にに跳ね上がっています。給食を食べなければ1日のカルシウム必要量を充たせない子どもが約80%いるということになります。

 ここで冒頭の「なぜ給食におけるカルシウムの摂取基準はこれほど高いのか」という問いに戻りましょう。学校給食摂取基準は、以上のような学校給食の有無による小中学生の栄養摂取状況を把握した上で、給食でどれだけの量を供給すれば栄養不足を解消できるかを考慮して設定されています。特にカルシウムはふだんの(給食以外の)食事で不足しがちな栄養素であることを踏まえ、1日摂取基準量の50%を給食で摂取できるように定めているのです。ただし、給食のある日でも男女ともに約30%はカルシウム不足であり、給食を食べている日もそれだけで大丈夫というわけではないことを念頭に置く必要があります。

骨はカルシウムの貯蔵庫。
成長期にカルシウムを貯めることが大切

 学校給食のある日とない日では子どもたちの栄養摂取状態に差があり、特にカルシウムでそれが顕著であることがわかりました。ここからは、学校給食がない日のカルシウム不足について、牛乳摂取との関係性からその手立てを考えていきましょう。

 カルシウムは体内に最も多く存在するミネラルで、体重の1〜2%を占めています。骨をつくる栄養素としてよく知られていますが、カルシウムの働きはそれだけではありません。心臓をはじめとする筋肉の収縮機能、脳の指令を各器官に伝える神経細胞機能、唾液や胃液、ホルモンなどの分泌機能、細胞の増殖機能など、体のさまざまな機能を調節しているのです。それらの機能は生命維持に関わるため、滞りなく調節できるよう、血液中のカルシウム濃度は常に一定になっています。もしも血液中のカルシウムが少なくなったら、すぐに "貯蔵庫" からカルシウムが取り出されて血液中に補充され、血中濃度が保たれます。そのカルシウムの貯蔵庫が、骨です。体内のカルシウムの99%は骨や歯に蓄えられ、必要なときにいつでも取り出せるようになっています。

 骨に貯蔵されているカルシウム量は、骨量(骨密度)と同じようなパターンで一生を通して変化します( 図3 )。出生時の体重が約3kgであれば体内のカルシウム量は約30gですが、成長とともに骨が大きくなって骨量が増えると体の中のカルシウム量もどんどん増加します。骨量がピークに達する20歳ごろには、男性で約1kg、女性で約700gのカルシウムが体の中にあると考えられています。その後40歳ごろまでは最大量が維持されますが、中年期になると加齢とともに骨量は徐々に減少し、同様にカルシウム量も減少の一途をたどります。

 特に女性は閉経期に急激に骨量が減少するため、骨がもろくなり、60歳ごろから骨粗鬆症を発症しやすくなります。骨量が多く、減少が緩やかな男性においても、80歳を過ぎると骨粗鬆症のリスクが増加します。これからは「人生100年時代」といわれますが、もしも65歳で骨粗鬆症を発症したら、残りの35年間を骨折しやすい状態で生きることになり、QOL(生活の質)は著しく低下します。高齢になっても元気に生活するためには、骨粗鬆症の予防が重要なのです。

 骨量を増やすことができるのは成長期だけです。この時期に骨量を十分に増やせなかったら、一生を低い骨量で過ごさなければなりません。骨粗鬆症予防という観点からも、いかに成長期に骨量を増やしてカルシウムを貯蔵できるかは重要な課題になっています。

高校生になって学校給食がなくなるとカルシウム摂取量がガクッと減る

 成長期にあたる小中学生が骨をしっかり育てるためには、どのくらいのカルシウム摂取が必要なのでしょうか。前述の推定平均必要量は集団における量でしたが、一人一人の栄養摂取を考える場合には、「日本人の食事摂取基準」の「推奨量」を基準にします( 図4 )。カルシウムは骨が大きくなる(背が伸びる)時期に特にたくさん必要になるので、その時期の推奨量は高値となっており、女子は小学校中学年から高学年(8〜11歳)で男子よりも高い750mg、男子は中学生(12〜14歳)になると1000mgもの摂取が推奨されています。しかし、各年齢層の実際の摂取量を見ると、男子は小学生の間はそれほど問題なく摂取できているものの、中学生では1000mgの推奨量に対して702mgしか摂取できておらず、高校生、若年成人でも大幅に不足しています。女子においては、ほぼすべての年齢層で推奨量に届いていません。

 もう一つ注目したいのは、男女とも15〜17歳でそれまでに比べてガクッと摂取量が低くなっている点です。これは、高校生になり学校給食がなくなったために、中学生までは毎日飲んでいた牛乳1本分のカルシウム量が減ったことが大きな理由であると推測されます。前述のように20歳ごろまで骨の成長は続いており、高校生もカルシウムを貯蔵できる大事な時期です。給食を食べなくなっても牛乳を飲む習慣は続けることが望ましいのです。

 牛乳1本(200ml)のカルシウム量は227mgなので、1日の推奨量に対するカルシウム寄与率(男/女)は、小学校1、2年生(37.8/41.3%)、3、4年生(34.9/30.3%)、5、6年生(32.4/30.3%)、中学生(22.7/28.4%)です。中学生では推奨量が高いので寄与率も下がりますが、小学生は1日推奨量の約1/3をとることができます。また、前述の学校給食調査で不足しがちな栄養素として挙げられたカリウム、亜鉛、ビタミンA、B1、B2、B12なども、牛乳1本で中学生の推奨量の10〜25%ほどが供給できます。したがって、毎日牛乳を飲むことの意義はやはり大きいと考えられます。
 
 加えて、牛乳はカルシウム量が多いだけではなく、それが吸収されやすいことも特徴です。私たちは人を対象に、「牛乳」「小魚」「野菜」から摂取したカルシウムがどの程度体内に吸収されるかを調べました。その結果、牛乳のカルシウム吸収率は39.8%で、小魚32.9%、野菜19.2%に比べて最も高く、カルシウム吸収率に優れた食品であることが確認されました。

 なお、この研究では小松菜、モロヘイヤ、おかひじきなどカルシウム量の多い野菜を使いましたが、いずれもシュウ酸カルシウムという形で吸収されにくいことが影響しています。野菜は決してカルシウムの供給源として劣るわけではなく、ブロッコリーやケールなど、シュウ酸が少なくカルシウム吸収率が高いものもあります。毎日の食事では、牛乳・乳製品をはじめ、豆類、魚介類、穀類、野菜などいろいろな食品からカルシウムをとることが大事です。

給食がある日もない日も子どもも大人も牛乳を飲もう

 図5 は前述した朝倉らの調査結果で、1日あたりのカルシウム摂取量の推奨量からの不足分を牛乳1本分(約200ml)で換算したものです。給食なしの日は、小学生男子は牛乳1本、小中学生女子は1本半、中学生男子は2本半のカルシウムが不足しており、給食ありの日でも小学3年女子は牛乳1/2本、中学生男子は給食ありの日も牛乳1本のカルシウムが不足しています。

 給食以外に家でもこれだけの牛乳を飲めば、カルシウムの不足を補うことが可能だといえますが、給食のない日に牛乳を飲む子どもはあまり多くありません。小学生348人、中学生266人を対象とした亀ヶ谷らの検討では、給食では当たり前に牛乳を飲んでいる子どもの多くが、給食がない日の「昼食」では牛乳を飲まないことが示されています。
 では、実際のところ、小中学生時の牛乳摂取は将来の骨量にどのような影響を及ぼすのでしょうか。私たちは、全国の高校生女子を対象に、小中学生時の1日牛乳摂取量(400ml以上、200〜400ml、100〜200ml、100ml未満)と現在の骨量との関係を検討しました。その結果、高校生時の骨量は小中学生時に1日400ml以上牛乳を摂取している群で最も高くなり、小中学生時の牛乳摂取量は高校生時の骨量に大きく影響することがわかりました。また、小学校から高校まで習慣的に牛乳400ml以上を摂取している人は、群を抜いて骨量が高くなっており、成長期の牛乳摂取・カルシウム摂取は、骨量にきわめてよい影響を及ぼすことが示唆されました。

 このような検討をもとに子どもたちに牛乳を飲むように勧めても、特に女子は「太るのではないか」と心配して飲みたがらないことがあります。しかし、牛乳1本分のエネルギー量は138kcal(1日のエネルギー寄与率が5%程度)であり、ケーキやスナック菓子に比べればはるかに低値なので、太る心配は不要だといえるでしょう。高校生女子を対象に牛乳摂取と体脂肪率の関係を調べた女子栄養大学の調査でも、牛乳を200 ml以上飲んでいる人のほうが、100〜200mlや100ml未満、あるいはほとんど飲まない人よりも、牛乳摂取分のエネルギー摂取量が高いにもかかわらず、体脂肪率は低いことが示されています。1日に3本程度までなら体重にはそれほど影響しないので、安心して飲んでほしいと考えます。

 以上より、成長期にある子どもたちがカルシウムを十分に摂取する手立てとしては、学校給食のない日(土日や夏休みなど長期の休み)はもちろん、給食のある日も家庭で牛乳を飲むように習慣づけることが一番です。大人も一緒にいつでも飲めるように、冷蔵庫には牛乳を常備しておくことを勧めます。
 上西 一弘
女子栄養大学 栄養学部教授

徳島県生まれ。徳島大学大学院栄養学研究科修士課程修了後、食品企業の研究所を経て現職。専門は栄養生理学、特にヒトを対象としたカルシウムの吸収・利用に関する研究、成長期のライフスタイルと身体状況、スポーツ選手の栄養アセスメントなど。

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