第20回 食の無形文化遺産-3

連載コラム ミルクの国の食だより

コラム、「ミルクの国の食だより」の第20回をお送りします。
前回に続き、その国の食文化が育まれる背景について掘り下げていきます。

和食は”日本のガストロノミー”

フランスのガストロノミーが食文化として初めてユネスコ無形文化遺産に決まったことを受け、同じく登録を目指し始めた日本の和食。
そして2013年、登録されたのは「日本人の伝統的な食文化」としての和食。
つまり、個別の料理のことではなく、和食文化のことをさしています。
和食と呼ばれる食文化には、会席料理のような伝統的・格式的な文化、郷土料理のような地域・風土の文化、正月や節句などの信仰を込める文化があり、マナーやおもてなしの心など、様々な側面があります。
これらを総合して料理としている和食は、「自然の尊重という日本人の精神を体現した食に関する社会的慣習*1」であり、私たち日本人のアイデンティティーの基盤を成すものといえます。
和食は”日本のガストロノミー”ともいえるかもしれません。

風土と切り離せない食文化

食文化は、とりまく自然環境とその国や地域ならではの文化を背景にして育まれるものです。
フランスのガストロノミーであっても、日本の和食であっても、今日まで伝承されてきたその背後にはそれを支える農業が厳として在ったからにほかなりません。
日本であれば、南北に長く海と山に囲まれている地形により、新鮮な山海の食材を豊富に保ち、温暖多湿な気候によって稲作が盛んに行われ、発酵食品等が発達しました。
六角形の国とも呼ばれるフランスは、北には大平野が広がり小麦を中心とした畑作地帯、北東部はシャンパーニュの産地であり、大西洋に面する北西部は雨や霧が多く酪農が盛んで、カマンベール発祥の地として知られています。
また、ボルドーなど南西部はワイン、リヨンなど東部はアルプス山脈麓で、ワイン、酪農牧畜が、晴天の日が多い南仏はワイン、野菜、果物の生産が行われてきました。
■住んでいる地区で週に2回は立つフランスのマルシェ。利便性の高いスーパーより生産者や住民同士の交流ができるマルシェで食材を求める消費者がこの国にはまだ多い

日本の食生活のヒントに

これら食の生産を土台に技術や知識が加わり、消費に至り形成されていく食文化。
近年のグローバル化や後継者不足等の問題で食の生産現場が危機的状況にあるのはどちらの国にも当てはまります。
しかしながら、EU一の農業国で食料自給率120%を今だ誇るフランスの農業から日本が学ぶこと、次世代へ継承していくために参考にするべきことが種々あるのだと思います。
和食が異文化の食を融合し、私たちの食生活に合うように柔軟に発展させてきた面をもつように。
今後も、フランスから発信する食の情報が、日本の食生活にとって何かのヒントになれば幸いです。 
新しい年が皆様にとって実り多き1年になりますように。
*1   ユネスコ無形文化遺産に登録された和食の定義
■農業国フランスは大きい都市でもすぐ近くに田園風景が広がる。都市が田舎に近いというより、田舎の一部に都市があるという印象をもつ
管理栄養士 吉野綾美
1999年より乳業団体に所属し、食育授業や料理講習会での講師、消費者相談業務、牛乳・乳製品に関する記事執筆等に従事。中でも学校での食育授業の先駆けとして初期より立ち上げ、長年講師として活躍。2011年退職後渡仏、現在フランス第二の都市リヨン市に夫、息子と暮らす。