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乳糖の特徴

炭水化物はエネルギー源として最も重要な栄養素です。エネルギーとして使用されなかった分は、グリコーゲンとして体内に蓄積されます。
牛乳の炭水化物は乳固形分中最も多い物質で、牛乳100g中に4.8g含まれています。その99.8%が乳糖(ラクトース)であり、砂糖の約16%の甘さです。
乳糖は、小腸にある乳糖分解酵素(ラクターゼ)によってぶどう糖(グルコース)とガラクトースに分解され、吸収されます。しかし、その一部は大腸に移行し、腸内の有用な乳酸菌やビフィズス菌のエサとなって、乳酸や酢酸を分泌します。これらの酸はヨーグルトと同様に腸内の有害な細菌の繁殖を抑える働きが認められています。また、乳糖はカルシウムと鉄分の腸管での吸収率を高める働きもあります。

乳糖不耐症

牛乳を飲むとおなかにガスがたまる、ゴロゴロする、下痢をするなどの不快症状が現れるのを「乳糖不耐症」と呼んでいます。乳糖不耐症は、牛乳中の糖質である乳糖を消化する酵素(乳糖分解酵素=ラクターゼ=β-ガラクトシダーゼ)が少ないか、働きが弱いため、乳糖が消化・吸収されずに大腸に送り込まれることから起こりますが病気ではありません。エネルギー源として役立つ乳糖が分解されずに大腸に運ばれると、腸内細菌が乳糖を分解してガスを出し、腸を圧迫したり、多量の水分が一気に大腸に送られ下痢をします。下痢をしてもカルシウムなどの栄養素は、その前に小腸できちんと吸収されています。
乳幼児期は乳糖分解酵素の働きが活発なのですが、大人になるにつれて弱くなる人がいます。この傾向は特に有色人種に多く見られ、日本人の70%以上にこの症状があるといわれています。大人になってこの酵素の働きが弱まるのは決して病気ではなく、哺乳動物としてはごく自然な状態なので心配はいりません。

乳糖不耐症の人が牛乳を飲むには

牛乳を飲むとおなかの調子が悪くなる人は、温めて飲む、コーヒーやココアと混ぜて飲むなどの工夫をしていることが多いようです[図2-18]。
人肌くらいに温めてゆっくり飲むと、胃腸に冷たい刺激を与えずにすみ、乳糖の分解酵素の働きも盛んになります。
乳糖不耐症を改善するには、摂取量を少量ずつから始めて徐々に量を増やす、1日何回かに分けて飲む、コーヒーや紅茶などに混ぜて飲むなどの工夫が勧められます。
乳糖をあらかじめぶどう糖とガラクトースに分解してある乳飲料(乳糖分解乳、ラクターゼミルク)も市販されています。また、ヨーグルト製造に使用されている乳酸菌は菌体内にラクターゼを産生しますので、生菌タイプのヨーグルト中にはラクターゼ活性が残っており、乳糖の分解が進みます。その結果、ヨーグルトは乳酸菌による発酵によって乳糖の20~40%が分解されて減少しています。チーズは製造過程で乳糖の大部分がホエイ(乳清)に移行して取り除かれているので、牛乳で下痢をする人に特に勧められます。
図2-18 | 牛乳飲用でおなかの調子が悪くなる人への対策
牛乳飲用でおなかの調子が悪くなる人への対策
出典:社団法人日本酪農乳業協会「牛乳・乳製品の消費動向に関する調査」(2004年)