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紀元前2000年ごろからつくられていたバター

バターは、ヨーグルトとともに、乳利用の加工食品としては最も古い歴史のある食品ですが、その起源については定かではありません。
インドの古い経典には紀元前2000年ごろ、すでにバターらしきものがつくられていたという記述が見られます。
旧約聖書の中にも「かくてアブラハムはバターを取り、乳を取り……」という一節があり、古くからバターがつくられていたことが分かります。
古代ギリシャやローマ時代には、バターは食糧としてよりも医薬品や化粧品として用いられたようです。食用としての利用は、紀元前60年ごろ、ポルトガルが最初といわれています。その後、フランスやべルギー、ノルウェーとヨーロッパ各地に広がっていきました。

古代のバター製造と機械化

紀元前500年ごろ、ギリシャのへロドトスという歴史家は「馬や牛の乳を木の桶に入れ、激しく振動させ、表面に浮かび上がった部分をすくい取ってバターをつくった」と書き残しています。古代アラビアでも革袋に乳を入れ、それを振動させてバターを製造していました。
バターの製造方法は、革、木、陶器製の容器をゆり動かす方法から、石や陶器製の鉢に入れへラ状の棒で攪拌する方法へと変わり、その後、容器と攪拌棒が改良され、17世紀末になると動力が利用されるようになりました。
牛乳から分離したクリームを強く攪拌(チャーニング)することによって乳脂肪の塊を集めるという方法は今でもほとんど変わりません。

日本におけるバターの歴史

6世紀ごろ、仏教とともに乳を利用する文化が渡来しました。日本最古の乳製品といわれる「酥」は牛乳を凝縮したもので、現在のチーズともバターともいわれています。
乳製品がふたたび日本にやってくるのは18世紀以降のことです。長崎の出島にあったオランダ商館では牛や山羊を飼い、バターを食べていたということですが、一般には利用されることはありませんでした。
日本でバターの製造が始まったのは明治時代からです。明治政府は、西洋にならって広く国民に牛乳の飲用を勧め、畜産を奨励しました。バターが最初に製造されたのは1872年、東京麻布の北海道開拓第3官園実習農場で試験的につくられました。本格的な製造は1885年、東京麹町の北辰舎がクリーム分離機と回転チャーンを導入して製造してからです。
太平洋戦争が終わった1945年以降、バターの消費は増えましたが、1950年ごろからは品質が改善されたマーガリンの消費が増え、バターの消費は横ばいとなりました。現在では、塗りやすいホイップバターや発酵バターなど、ニーズに合わせたさまざまな製品がつくられています。