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レンネット(凝乳酵素)の種類

レンネットとは、乳を固める作用のある酵素(凝乳酵素)の1つです。レンネットはたんぱく質のκ-カゼインのみに働いて乳を凝固させ、熟成中はたんぱく質を分解し、組織や風味をつくる重要な働きをしています。
哺乳動物の離乳前の仔の胃の中で乳が固まることは何千年も前から知られていました。屠畜した子羊や子山羊、子牛など反芻動物の胃袋から乳を固める成分を抽出したのが「動物性レンネット」で、その主成分の化学名は「キモシン(Chymosin)」です。一方、チョウセンアザミやイチジクなどにも乳を固める成分があり、特にチョウセンアザミのおしべから抽出されたエキスは「植物性レンネット」と呼ばれます。また、チーズの生産が大幅に増えた20世紀中ごろには、リゾムコールというカビから凝乳酵素を大量生産する日本発信の技術が確立し、「微生物性レンネット」として広く使われるようになりました。20世紀の終わりごろには、遺伝子組み換え技術を用いて微生物菌体内にキモシンを生成させる方法が実用化され、「発酵生産キモシン(FPC)」としてチーズづくりに使われ始めました。
現在、世界では発酵生産キモシンが約60%、微生物性および植物性レンネットが約30%用いられています。日本では動物性レンネットと微生物性レンネットが多く使われています。

発酵生産キモシン(FPC)

子牛の第4胃で生産・分泌されるキモシンの遣伝子を、微生物(大腸菌、酵母、カビなど)に組み込んで酵素をつくります。できた酵素はキモシン100%のため、チーズの品質改良や収量増加が期待できます。別名バイオキモシン、遺伝子組み換えキモシン、リコンビナントキモシンとも呼ばれます。

微生物性レンネット

1960年代、原料の子牛の胃が不足したことから代替物として使われ始め、カビ属のリゾムコール・ミィハイ、リゾムコール・プシルスが主に使われています。微生物性レンネットは、タンク培養で大量生産が可能なため安価ですが、たんぱく分解活性が強く、子牛のレンネットより強い苦味が出やすいのが欠点です。

植物性レンネット

イチジクのフィシン、パパイヤのパパイン、パイナップルのブロメラィンなどのたんぱく質分解酵素には凝乳作用があります。ヒンズー教などの宗教上の理由で牛の胃由来のキモシンを使えないインドなどでは、古くから研究が行われています。一般に風味は淡白ですが強い苦味が出ます。

動物性レンネット(カーフ〈子牛〉レンネット)

生後10~30日の子牛の第4胃から得られるレンネットで、キモシン88~94%、ペプシン6~12%が含まれます。子牛が母乳以外の飼料を食べるようになると、キモシンは減り、ペプシン、ペプチターゼなどの消化酵素を多く分泌するようになり、普通の哺乳動物の胃に変化します。